星から来たのは、あなた
辛い記憶は、消えてしまう。
自分は、何処から来て、何処に行くのか。
初めて、彼女を見た時の事は忘れない。
光り輝く中に居た小さな少女。
「助けなくては」
奉公先から、大金を盗み、逃げ出した下男だった。
逃げ惑う山奥で、長い箒星を見つけた。
長い尾を引きながら、落ちた星。
当たりが焼け野原になる中で、
少女は立って居た。
初めて見る美しい少女。
怪我をしていた少女を助け出した下男は、
近くに住む老夫婦に、少女を預けて、身を隠した。
少女は、日増しに成長し、下男が、再び、目にした時には、
まばやむばかりの女性と成長していた。
「僕は、追われる身だから、名前だけをあげよう」
下男は、
「咲夜姫」
とだけ、名前をつけていた。
あれから、1ヶ月も経たず、少女は、美しく成長していた。
噂を聞き、逢いにきた下男は、咲夜姫が、自分を覚えている事に気がつき、
恋に落ちた。
「他より来た」
咲夜姫は、そう言った。
「事故で、帰れなくなった」
聞くと咲夜姫は、他の星から来たと言う。
「助けられた恩に報いたい」
女性とも、男性とも、わからない美しさ。
誰もが、咲夜姫を一目見ようと集まってきたが、
史書にあるように、誰にも、心惹かれない。
何故なら、彼女・・・いや、彼・・・。どちらでもない。
性別を持っていなかったから。
だが、咲夜姫は、下男を創宇と名づけ、
側においておく事にした。
「いつかは、迎えが来るだろう。だが、その前に・・・」
咲夜姫は、言った。
「この星に、最悪な出来事が来る。たくさんの星が落ちてくるだろう。創宇。助け絵もらった恩を返したい。ほんの一握りの生き物達になるが、方舟の様な地を造ろうと考えている」
「方舟とは?」
「船に、こだわらん。そこに住んでいる生き物達が守られればいいのだ」
「陣のような物ですか?」
「陣とな?」
創宇は、陣の定義を、咲夜姫に説明した。
守護神達の結界で、地を守り、そこに住む者達を守る方法が、この地上にはあると言う事を。
「幸いに、この神に適した場所があります」
どうして、天から降ってきた彼女に、咲夜姫と名付けたのか、その理由も話した。
「コノハナサクヤヒメ」
「はい」
咲夜姫は、笑った。
「奇遇だな」
咲夜姫は、創宇を見下ろしながら言った。
「お前は、ただの下男では、ないな」
創宇は、黙った。
「事情があるのか。まあ良い。助けてもらった、礼はせねばな」
咲夜姫は、創宇の出自を追求しなかった。
「お前の力を貸してくれないか」
咲夜姫の言葉に、創宇は頷いていた。