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魔の都市

桂華の遠い日の記憶が、ぼんやりと脳裏に浮き上がってきたが、今一つ、確信に思える事はなかった。何かを思い出そうとする桂華の隣で、希空が機関銃の様に話し出す。

「ここってさー。戦国武将が、街を守る為に敷いた6角の一点って知っている?」

歴史お宅の希空が続ける。

「呪術物の舞台は、京都が多いんだけど、この地も同じで、戦国武将が街を守るために、六芒星をモチーフに守護陣を敷いたのね」

「そう言うのは、普通、神社仏閣で、結ぶんじゃないの?」

桂華が、反論すると、希空は、笑顔で、図書館の裏にある蔵を指差した。

「戦時中に、空襲で、ここにあった神社が全焼したのよ。何回も、建て直したんだけど、何回たっても、焼け落ちてしまう。それで、立てるのは、諦めて、新物だけ、あの蔵に収めてあるらしいよ」

桂華が、目をやると蔵の所だけ、ぼうっと、青白く浮いて見える様だった。

「更に、陣の中心から四方には、獣神を置いたって、話があるのよ」

「この街に?」

「陣が今も起動しているかは、わからないけど、大空襲の時も、多くの被害も出なかったし、あの震災の時も、不思議な事に、被災の大きさの割には、死者が出なかったのよ」

「そうなんだ・・・」

科学では、説明のつかない事がある。桂華は、誰よりも、わかっている筈だったが、自分の生活している足元に、そんな陣が敷かれていたとは、知らなかった。

「その戦国武将は、どんな人だったのかしらね」

「そうね」

もはや、希空の声は、上の空だった。ここが陣の一点だとしたら、あの現れた男は、誰だったのか?あの女性は、飛行機の中でも、逢っている。忘れていた記憶が、桂華の中で、形を取りそうになるが、何かが、引っ掛かり、蘇ってこない。

「どうしたの?」

頭が痛くなり疼くまる桂華。希空は、驚いて覗き込む。

「ちょっと、目眩が・・・」

「え?」

思い出したいが、思い出そうとすると、記憶の箱の蓋が、何か、鍵が引っ掛かるのか、開こうとしない。思い出しては、行けない事があるのか?

「大丈夫?ですか?」

覗き声を掛けてきたのは、1人の男性だった。

「日差しが強い様ですね。あちらの木陰に行きますか?」

「あ!すみません」

お調子者の希空が差し出された手を握る。

「あ・・あなたではなくて、こちらの方」

向き直る男性が、桂華を覗き込む。その左目は、髪に隠れてよく見えないが、どこかで、見た記憶があった。

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