数多の星降る夜の事
陸鳳は、考えていた。
数多の星が降る。
時空の狭間に、迷い込んでいたのは、わかっていた。
恐らく創宇の策略であろう。
彼が、何者であるのか、わからなかった。
自分達と同じ獣神の類ではない。
それは、確かだ。
この地は、自分が守護している山々とは、違い、陣を敷いて街全体を守っている。
それは、戦国武将が敷いた訳でもなく、太古だった。
太古に陣を敷いた咲夜姫。
六芒星の陳内の妖達は、何故か、桂華を狙っている。
咲夜姫の敵なのか。それとも、関係者なのか。
あの幻影は、何なのか。
傷は、とうに乾いていた。
周りにたくさんの銀狼達の遺体が、転がっていたが、何事もなかったように、桂華は、眠っていた。
そっと、巻いていたカーディガンを外し、桂華に、羽織らせてみる。
「出口は、どこなんだ?聞こえているだろう?創宇」
陸鳳は、唸った。
「何を見せようとしている?」
巻き込まれた。
記憶を失ったまま、六芒星の守る杜の都に辿りいついていた。
山神が、守護する事も忘れ、遠い六芒星の陣まで、来るとは。
思えば、あの時の噴火も、炎龍は、関係していないかもしれない。
「創宇・・・そこに、いるんだろう?」
重なる銀狼達の遺体の山に、向かって、叫ぶ。
「私に、何をさせるつもりだ?」
陸羽への罪悪感を利用し、記憶奪い、古城にまで、来させた。
数多に、降り注ぐ星達が、陸鳳の記憶を呼び覚ましていく。
「創宇」
不思議と桂華は、目覚める事なく、眠り続けている。
「そうよ・・・陸鳳」
誰の声だ?
振り向くと陽兎が立っていた。
「やっぱり、記憶が、呼び戻ってしまったの?」
人懐こい笑顔を浮かべる。
あぁ。自分は、陽蒼に救われ、杜の都に来たのだ。
「たくさんの星が降るわね」
よう蒼は、天を仰ぐ。
「でも、あの時、たくさん降り注いで、いたのは、星なんかじゃなかったわね」
陸鳳の頭の中で、数多に降る星の映像が変わった。
「星じゃない・・・」
たくさん、降り注ぐのは、火の玉。
「覚えているの?あなたは、炎龍に居る山に、陸羽を置き去りにしたのよ。だけど、あいにく・・・」
そうだ。
思い出した。
炎龍の居る山で、はぐれた母子を助けたかった。
だけど。
山は、何故か、大噴火を起こしてしまい・・・。
助けようとした陸鳳は、火焔に巻き込まれ、意識を失ってしまった。
助けたのは、目の前に居る陽葵だった。
「あぁ・・・そうだね。降り注いだのは、炎や岩石だった。どうして、君は、ここに?」
「何も、思い起こさないと良かったのに」
「陽葵。君は、創宇と関わっているの?」
「先生と、何も知らずに、杜の都で、生活したかったのに」
「何があった?」
「一緒に、暮らせれば良かったのに」
陽葵は、突然、陸峰おの刃を向けてきた。
「ここからは、出さない」
「どうして」
「ここに居れば、安心なの。出てはいけない」
自分に襲いかかってきたと思った、陽葵の刃は、突然、桂華に向けられた。
「陽葵!バカな真似は、するな!」
現れたのは、創宇だった。