かぐやと月の伝説
「なかなか、やるな」
リファルは、希空の行動に感心していた。
妖術を使えないリファルもエルタカーゼも、この世界では、ただの足手纏いになっていた。
どこまでも、続く緑に世界。所々には、深い穴がある。幾つもある、深い穴の中には、色とりどりの鳥達が舞い、別の世界に来た実感が湧いてくる。
「空を飛べないから、確認できないけど、このクレーターは、あまりにも、多すぎると思わないか?」
あちこちと、動き回っていたリファルが言う。
何も、役に立てない皇子では、あるが、彼なりに探索していた。
「クレーターは、だいたい、隕石が落ちてできたと聞いています」
上から、垂れてくる蔓科の植物が気になり、エルタカーゼは、どこから、垂れて来るのか、引っ張る事に、夢中だ。
「隕石が衝突したのか・・」
リファルは、地質が気になっている。
「何か、気になりますか?」
「僕らが、どうして、地上ではなく、冥国にいるのか、知っているのか?」
「はて・・・どうして、そんな事を?」
「ずっと、気になっていたんだ。この世界」
「会話になっていませんが」
「見ろよ。夜が来る」
瞬く間に、陽が落ち、星空が広がっていく。
「別の世界に落とされたと、思っていたが・・・思い出したんだ。この景色」
「思い出したって?」
「この時空は、太古。我々が、地上を捨てた時間だ」
「時空が違うって?」
「古城は、幾つかの、時空を持っている。それを司るのが、あの自量師 創宇だ。」
「どうして?我々を、この時空へ?」
「簡単だよ。この時空に飛ばすしか、なかったんだ。桂華が、来てはいけない時空だ」
「どうしてですか?」
「降ってきたのは、隕石だけでなかった筈だ」
「何が、降ってきた?」
「六芒星がどうしてできたのか?それを考えていたのさ」
「獣神達と咲夜姫ではないのですか?」
「咲夜姫は、どこからきたんだろうな?」
「神女と聞きました」
「隕石が、どうして、降ってくると、予知できたのか・・」
「リファル様は、どう考えるのですか?」
「六芒星を作った咲夜姫は、この地上の人間ではなかったんだ」
「どこから、来たのですか?」
「あれだよ・・・」
リファルは、真っ直ぐに指差す。
その先には、深く落ちた闇の中で、輝く大きな月があった。
「月ですか?」
「あぁ・・・全く、僕らとは、違う世界の生き物さ」
その時、どこからか、創宇の笑い声が聞こえた気がした。