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自分の罪

自分に罪があるとしたら、あの日の事。

全てが、そこから始まった。

陸羽に負い目があるのも、自分が罠に落ちたのも、あの日の事が原因だった。

「人間なんて、死んでしまえ」

自分の中の暗い感情に、震えた。

父の不在をいい事に、親子を獰猛な妖獣のいる森に置いてきた。

「気をつけて、山を降りるのよ」

陸鳳の、罠に気付いているのに、あの継母は、送り出した。

「このまま、置いていけばいい」

そう思っていた。

けど。

自分は、これでいいのか。

実母との確執なんて、関係ない。

父親が、あの人間の女性に心惹かれた理由がわかった。

実母には、ない。

弱くて、儚い存在。

周りの意見に押されて、親子を山に置いてきた。

そんな自分が、山神の長なのか。

陸鳳は、駆け出した。

いつしか、体は、本来の姿になっていた。

「助けなきゃ」

妖獣には、まだ、陸鳳は、敵わない。

まだまだ、若く、力不足だった過去。

自分だって、叶わないのに。

人間が、敵う訳ない。

「頼む、間に合ってくれ」

山を降りてくるより、登る方が、時間がかかる。

「誰か、助けてくれ!」

陸鳳は、叫んだ。

「陸羽。母を連れて逃げるんだ。そこにいたら、危ない」

必死に駆け上がる陸鳳が、見た物は、神木の前に、立ちはだかる親子だった。

「間に合った!」

と思うのも束の間。

横から、大きな黒い影が飛び出してきたのだ。

「まずい!」

陸鳳は、追いかけた。

力の限り、地面を蹴り、黒い影に飛びついた。

「止めろ!」

幼い陸羽が、母親を守ろうと立ちはだかった。

「陸羽!」

どの母親達が、そうであった様に、その母親も、その身で、我が子を庇っていた。

「ダメダ!」

陸鳳は、満身の力で、妖獣を抑え込んだ。

だが、幼い陸鳳の力が、敵う事は、なく、両者2人共、親子の上に、落ちていった。

「!」

自分の体が、思う様ではない。

妖獣を、仕留めるので、精一杯だった。

まさか、その体が、親子の上に落ち、それが、致命傷になるとは。

「母さん?」

陸鳳は、思わず叫んだ。

自分と妖獣の下に、親子の体がある。

「嘘だろう?」

慌てて、妖獣の体を退けると、母親の体が見えた。

「後・・・ごめん。俺」

「だ・・大丈夫よ」

母親は、自分の体の下から、小さなくるみにつつまった、陸羽を差し出した。

「お兄ちゃん・・・この子を守ってね」

「守るのは、僕ではなくて・・・」

「いいの・・・やっぱり、この子の為にも、弱い母親は、いない方が」

「そんなんじゃないんだ・・・僕の為にも」

「ごめんね。私は、そんなに、強くない」

「母さん?」

少しずつ、白くなっていく母親。

人間て、こんなに、弱いんだ。

陸鳳の腕の中では、おくるみに包まった、陸羽が、無邪気に笑うだけだった。


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