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その血で、償え！

闇から現れたのは、美しい女の面をした、恐ろしい怪物だった。

「償え！穢れた血を持ち込んだのだ」

深く被った黒いフードは、走り寄る勢いで、外れかけ、中から、長い髪がもつれあいながら、溢れていた。顔は、青白く目は、細い。鼻筋は、細く、薄い唇が、情の薄さを物語っていた。開く目は、薄い二重で、どこか、青い炎を灯している。

「己の血で、償え！」

男は、細い腕を、黒いマントの中から、覗かせた。冷たく光る刃先が、覗き、男が本気で、自分を襲おうとしている事に気づいた。

「希空！」

外にいる希空に助けを求めるが、声は届き雄にない。

「止めて！」

桂華は、夢中で、持っていたバックを振り回す。右へ左へ。中に入っていたiPadが、壊れるんじゃないかと気になったが、当って、慌てて相手が逃げてくれたらいいと思っていた。最近、理由もなく、人に襲われる。この男は、どこから来たのか？マントのなkは、薄い灰色の着物を着ている。

「いやぁ！来ないで」

男が、腕を振り上げると同時に負けずに、バックを振り上げる。思い切り降ろしたら、怪我をさせるかもしれない。と。

「え？」

手首を誰かが、押さえていた。希空でさえ、気付かない異空間と化した、化け物の男と2人きりの世界に、飛び込んできた誰かがいた。

「誰？」

手首は、優しく掴まれ、その飛び込んできた者の背中で、遮られ、よく見えなかったが、化け物の男も、同時に手首を掴まれたらしく、ジタバタ動いているのが、見えた。

「大丈夫？」

その者は、振り向いた。

「あなたは？」

「また、逢ったわね」

飛行機の中で、暴れていた青年を抑え込んだ女性だった。髪は、短く、金色に輝き、おそらく、行動的であろう彼女によく似合う、大きな瞳の女性だった。

「よく、襲われるのね」

女性は、桂かの手首を優しく離すと、化け物の右手を、後ろ手に押さえ込み、力任せに、ねじ上げると、男は、細い悲鳴をあげた。

「こいつが、悪いんだ。穢れを持ち込んだから」

「もう、ややこしくしないでくれる。この子じゃないでしょ」

女は、化け物の腕を離すと、地面に突き飛ばした。

「あなたの役目は、これじゃないでしょ。陸羽に任せきりで、ダメじゃない」

化け物は、余程、締め上げられた手が痛かったのか、何度も、手を撫でていた。

「弱い者だと、思って、手にかけると痛い目に遭うわよ」

化け物は、陸羽と聞いて、少し、顔色が悪くなった。

「陸羽が、どうして、ここに？」

「穢れから、守りたかったんでしょう？」

「そうだけど・・・」

化け物は、女が怖いのか、次第に小さくなっていった。

「陸羽が戻る前に、ささっと、お役目はたしな！！」

女が、そういうと、化け物は、慌てて、姿を消した。同時に、宙に浮かんでいた空間は、静かに、地に落ち、玄関にいた希空と同じ空間になった。

「友達が、待っているわね」

女は、笑った。

「あなたが、桂華ね。逢えて良かった」

女っが、右手を差し出したが、

「桂華！なんか、眩暈がして！」

希空が、バタバタと駆け寄ってきたので、振り向いている間に、姿を消してしまった。

「誰かいたの？」

希空は、気配を感じる事もなく、桂華に尋ねる。

「うん・・・なんでもない」

あの女性の言った陸羽。遠い記憶が蘇っていく。