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あの日、君と出逢った。咲夜姫と見る夢

創宇は、じっと、古城の中で、空を見上げていた。

「随分と、遠くまで、来てしまいました」

空だけは、変わらない。

「もはや、私は、自分が何者か、わからなくなってしまいました」

最初は、人間だった筈。

自分の記憶も定かではない。

この地にやってきた咲夜姫。

神々の末娘と聞いていた。

心眼を備え、古い人々は、彼女を信仰していたが、度重なる災難が、この地を襲っていた。

山ほどの津波や、地震がこの地を襲い、人々は、安住の地を求めて、恐怖に慄いていた。

最初、一目会った時は、まだ、子供だった。

人間離れした美しい咲夜姫に、心を奪われてしまった。

彼女が、行く所は、どこまでも、ついていった。

そして、見てしまった。

彼女の本当の姿を。

「何も、見ていない」

創宇は、とんでもない事を知ってしまった。

知らないふりをしておこう。

創宇は、自分に言い聞かせた。

「この秘密を守るなら、お前の望みを聞こう」

咲夜姫は、言った。

「僕は、あなたの側にいたいです」

「私の側に?」

「はい。置いてください」

「でも、私は、お前の知っている通り・・・」

咲夜姫は、言いかけたが、途中で、口を閉じた。

目の前の、痩せ細った貧しい少年が、体を震わせ、頭を下げていた。

天変地異が、人々の心を貧しくさせていた。

「私は、いつか、この世を去る時が、来る。それでも、お前は、私がいなくなった後も、守ってくれるのか?」

創宇は、咲夜姫が、亡くなった後も、その地を守ってくれるのかと、尋ねていると思った。

「もちろんです」

この春の日差しの様な人の側に居たい。

自分の答えに頷く、咲夜姫を見た時、永遠に側に居たいと思った。

あの日から、永い時間が、流れた。

咲夜姫は、この世をさり、創宇自身、何者か、わからなくなってきた。

自分を取り残して、時間が流れて行く。

この古城も、度重なる天災で、形を変えてきた。

この地を、街を守る為、咲夜姫が敷いた六芒星。

「創宇。私が居なくなって、長い時間が流れるでしょう。その時に、とんでもない災厄が、この地に訪れるでしょう」

「災厄とは?」

「あっては、ならない事ですが、それがあったから、この地に、私が訪れる事ができたのです。」

「あなたは、やはり?」

「それが来れば、私が何者だったのか、わかるでしょう。その時まで、準備をしておかねばならない」

咲夜姫は、そう言って、あらゆる要所、要所を守る獣神達を集め始めた。

だが、その中に、意に沿わない獣神がいた。

山神の長だった。

陸鳳と陸羽の、父親だった。

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