あなたを守り抜く筈でしたが、何処へ消えたのでしょうか。
この古城の中に、何人の獣神達が閉じ込められたのか。
罠を仕掛けた筈だった。
誰もが、古城を目指す。
そこで、怪しい元達は、抹殺する予定だった。
そう、予定だった。
創宇は、古城の中の異変を感じていた。
古城の中心。咲夜姫の眠る深い地下で、異変が起きていた。
「何が、起きている?」
そこまでは、誰も辿り着けない。
幾重にも、重い石戸に囲まれ、何重にも、術がかけられていた。
外からが、入れない。
かとしたら、中から、咲夜姫を誰かが、連れ出したのか。
創宇は、焦った。
長い間の咲夜姫の眠りを守る。
それが、咲夜姫への、自分の気持ちを証しだった。
「お前を先に置いていくのが、心配でたまらない」
「待っています。無事に、眠りから覚める日を」
「誰かが、要にならなければ、この陣は完成しない。それは、私が背負う事にする」
「どうして・・・あなた様が」
「長く待つ事は、私は、耐えられない。創宇。待っててくれるか」
「はい・・・」
そう言って、最後に石戸を閉めた。
術師。
「最後に、封印します。創宇様は、先に行きなさい」
促し、創宇は、先に離れた。
その時、何が起きていたのか。
咲夜姫は、無事に眠りに着いた筈。
からくり箱の獣神達も、守護していた。
それが、逃げ出し、何かが、起きていた。
陣の力も、弱まっている。
これから、最悪の災厄が訪れようとしているのに、陣が役に立たないとは。
「陣の秘密を教えてほしい」
災厄から、街を守る為、訪れる客が後をたたなかった。
「陣を創り上げるには・・・」
現在、咲夜姫のような能力のある者は、居るのだろうか。
創宇は、古城の下に向かっていった。
「なんだ・・・この気は」
予測していたのと、違う。
閉じ込められた獣神達だけではない。
何かが、居る。
石戸を開けようとした時、
そこは、別の世界が存在する事を知った。
「ここは・・」
薄い卵膜の様な、そう羊膜のような中に、見慣れた顔が遭った。
「お前は?」
その向こうに見たのは、山神の陸鳳と陸羽だった。
剣先を、向け、こちらを見ている。
「ここは・・・咲夜姫の?」
「とんだ、姫様だよ」
そう言うと、体を翻し、その羊膜の中に沈んでいった。
「何が・・・あった?」
その中央に、渦巻くのは、細長い幾つもの手を重ねた化け物だった。
黒く雲丹の様に、うねり、触手となった人間の手がうねる。
そして、その先には、桂華が、しっかりと抱えられていた。
「創宇!そこを破るんだ」
中から、陸鳳が叫ぶ。
創宇は、腰の腱を脱いで、その羊膜に刃先を突き立てた。