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睨めっこしましょう。見つめると、負けよ。

空間に亀裂が入った。希空は、そう思った。桂華は、不思議な子だった。北国のどこか、田舎から、出てきたと笑う友人がいた。田舎臭いとか、陰口を言う者もいたけど、希空が見る限り、そうではなかった。何とも言えない、他の子とは、一線引く雰囲気があり、神々しく、立ち入れない雰囲気があった。桂華と一緒にいると、説明のつかない不思議な事に、見舞われる事がよくあった。海外での赤い飾り袋の事件もそうだったが、以前から、不思議な事に巻き込まれ、紙一重で、助かる事もあった。だが、空間に亀裂が入るなど、そんな大きな事は、初めてだった。

「まじ?」

希空は、叫び声を上げた、空高く、天井から、床下まで、縦に亀裂が入り、粉々に崩れていく。足元も、崩れ去り、真っ逆さまに地下に落ちていく、落下するスピード感が、あるはずなのだが、そうではなかった。空間が、粉々になり、地上に落下し、また、現れては、砕ける。その中で、桂華は、身の回りの物を片付けると、その場を離れようとしている。

「桂華!」

希空は、桂華に、縋りつきたいが、体が動かない。

「希空!」

叫ぶが、桂華は、動じない。

「おかしいのよ。助けて」

桂華は、ノートやパソコンをバックに、押し込むと、落ち着いた声で言い放った。

「動じないで」

希空の手を取り、ゆっくりと歩き出す。体が、思うように動かない希空だが、桂華に触れると、どうにか、動けそうだ。

「何が、起きてるの?」

希空が、振り向こうとすると、桂華が、強く引っ張る。

「振り向かないで」

空間が、何層も、砕け、落ちていく感覚。落下しそうな錯覚に陥るが、桂華の手が、乃亜を支える。

「何が、起きているの?」

「わからない。けど、大きな声を立てるな!静かに、逃げろ!って、誰かに言われてる気がするの」

桂華は、希空と、目まぐるしく変わる空間から、やっと、図書館の玄関まで、たどり着いた。

「やっと・・・」

希空は、ため息をついた瞬間、気が抜けた。思わず、後ろを振り向いた瞬間、希空の姿が、先ほど、居た場所に、弾け飛んだ。

「希空!」

振り向こうとして、思いとどまる。気配が、小さくなるのを、背中で、感じる。

「やっぱり駄目!」

桂華が、思い切り振り向くと、その眼前に、闇の塊が迫っていた。闇は、桂華の双眸を確認すると、四方に散り、中から、希空の姿が現れた。

「希空?」

闇に包まれ、希空は、立っている。

「希空?どうしたの?」

下を見つめる希空は、桂華の問いかけに、答えようとしない。口元に、笑みを浮かべ、当惑する桂華の反応を楽しんでいるようだ。

「希空?じゃないわね」

希空と呼ばれたそれは、笑った。

「振り向いては、ならなかった。そう言われなかったか?」

そう言った瞬間、玄関の向こうで、桂華の姿を探し回る希空の姿が見えた。幻想だったのだ。本物は、図書館の玄関の外にいる。

「よく、お前の顔を見てみたいと思っていた」

闇の中の、希空の顔が次第に、代わり、見慣れない一人の男性の顔へと変わっていった。

「誰なの?」

もう、目を離す事はできない。

「血の匂いがする。よくも、この場所を汚してくれたな」

桂華は、蘇の男の目に吸い込まれるように、気を失ってしまうのだった。


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