二人の古き姫
桂華は、そのまま、少女の姿を見ていた。
光の中に立っている。
眩しいくらいの輝きの中、シルエットが浮かび上がる。
「何が起きているのか、俺には、わからない」
陸羽が呟く。
様々な関わる者達の記憶の中に紛れてしまったのだろうか?
宙に浮かぶ、様々な記憶。
浮かんでは消える映像が、誰のものか、少しずつ、わかってきた。
「長い時間が経ったのね」
光に浮かぶ少女の輪郭が、少しずつ、はっきりしてきた。
「私は、もう、消えてしまったの?」
少女は、寂しそうに笑う。
「あなたは・・・ここの主?」
「そうと言う人もいるけど、そう言わない人もいる」
「わかりやすく、説明してくれないか?」
痺れを切らした陸羽が言う。
「俺達は、突然、ここに連れて来られて困っている。六芒星が歪んでいるとかで、関係ない獣神達が、呼び起こされている。何が起きたんだ?」
「創宇よ。彼が、あなた達を閉じ込めたのね」
「閉じ込めた?」
「本当に困った人」
少女は、ため息をついた。
「創宇を知っているという事は、あなたは」
陸羽は、少女の顔を見下ろした。
桂華と似ているこの少女は、創宇と関係があると言う。
・・・・という事は。
「咲夜姫」
桂華の口から、自然にその名が溢れた。
「どうして?今」
「今だから」
咲夜姫の背後に、数多くの流れ星が横切っていく。
「六芒星が歪んでいるのではない。」
「そうだろう」
陸羽が、咲夜姫の言葉に反応する。
「広がっていっているんだ。少しずつ、だから、歪んでいるように見える」
「広がる?何の為に?」
陸羽は、少し前から、違和感を感じていた。
逃げ出し入れ替わる獣神達。結界は、歪みながら、広がっていく。
創宇の力が弱まったのが原因と考え、創宇の座を狙う菱王みたいな獣神もいるが、真実は、違っていた。
「私達の前に現れたのは、どうして?」
桂華は、同じ顔の咲夜姫を見下ろした。
「あなたが、必要だからよ」
「私?」
桂華は、陸羽の顔を見た。
「そうなんだな。きっと」
声を絞り出す陸羽。
「山神の血をひく子ね。だけど、王は、あなたではないわ」
咲夜姫は、陸羽の頬に触れた。
「いい子ね。よく、この子を連れて来てくれたわ」
咲夜姫は、桂華を見上げる。
「あなたは、私のカケラよ。よく、ここまで、来てくれたわ」
伸ばした咲夜姫の手が、桂華の手に触れる。
その瞬間、まぶたの中にたくさんの火花が散るのを感じる。
「あ・・」
思わず屈み込む桂華。
「桂華!」
咲夜姫が、薄く笑った瞬間、現れたのは、陸鳳。
山神の主だった。