満点の星と悠久の時
そこは、満天の星が輝いていた。
人工的な光もなく、灯りは、降り注ぐ天の星だけ。
桂華は、頬に当たる風で、次第に意識をとり戻した。
「ここは・・・」
辺りを見回しても、広がる草原と満天の星だけで、何も、音のない世界が広がっていた。
「桂華、大丈夫か?」
手が届きそうな星の下で、陸羽の声が響く。
「ここは、私と陸羽だけ?」
他には、誰もいない。
今まで居たリファルやエルタカーゼ。陽葵の姿は、どこにもなかった。
天も地も、どこが上で、下なのか、わからない、広がる闇と星の中に、二人は居た。
「どこか、わかる?」
人工的な光もなく、星の灯りだけで、互いの顔を確認する。
「ここは・・・」
陸羽は、風上の香を確認する。
「人の気配が、全くしないな」
「一体、どこに来たのかしら」
「どこに来たのかっては、時間の事か?場所の事か?」
「どういう事?」
「この時代が、遠く、昔だって事」
「昔って?」
「六芒星の中で、時間を遡るって事は・・」
「どこか、因縁のあったポイントって事ね」
「かなり過去に飛ばされたか・・」
誰が、何の為に、過去に遡ったのかは、わからない。
「リファル達は、どこかしら?」
「わからんな。君の相棒を連れたまま、どこに行ったのかな」
「わからない。けど、希望を連れたまま、自分の意思で、隠れるなんて、考えられない」
「自分の意志でないとすると、どこかに飛ばされたのか・・」
「何の為、誰の意志で?」
星は、美しく風は、優しい。
二人は、満点の星の元、その草むらに、腰を下ろした。
「一体、いつの時代に飛んだんだ・・・」
陸羽が、呟くと、一筋の星が、宙を横切っていった。
降り立つ地面が、一際、輝くと、一つの人影が浮かび上がった。
「陸羽。何かが、降り立った。」
「あぁ・・見えた」
「その場に、行かなきゃ。そんな気がする」
「俺と君に用があるって事なのか?」
「多分・・・」
ちらっと横目で、陸羽の顔を見る。
陸鳳と異なり、まだ、幼なさが抜けない横顔。
陸鳳は、正当な山神として、皆の尊敬を集めていたが、人間との半神だった、莉羽は、かなり歪んで、育ったと聞いている。
一緒にいる莉羽は、純真で、感情的な行動は、取るが、至って、真っ直ぐな性格だった。
「何が起きたのか、わからないけど、確認しないと先に進めない」
桂華は、莉羽の腕をとった。
「あの場所まで、飛んで」
陸羽の背中の毛が逆だった。