嫉妬は、裏切りの始まり
リファルの前に現れた女性をエルタカーゼは、不思議な思いで、見ていた。
彼女は、息を弾ませながら、リファルに、ひざまづいていた。
「お願いがあります」
「お願いって?」
リファルは、当惑して、エルタカーゼを顔を見合わせた。
「あの・・・桂華を連れて帰ってください」
「桂華って?」
陽葵は、言葉を選びながら
「山神の兄と、一緒にいた。人間の・・・」
「あぁ・・・あの、冥婚符の」
言い掛けるエルタカーゼの手をリファルは、引いた。
「変だと思わないか?冥婚を断る人が多い中で、連れて帰れとは?」
「少なくとも、あの人間の女とは、仲が悪そうです」
「連れて帰るつもりだが、何かあるのかな」
「深入りしない方がいいと思います。この古城も、何度も、同じ所を回らされています。さっさと、ここから、逃げていきましょう」
「このまま、帰るのか?」
「そうです。嫌な予感がします」
「嫌な予感て?」
「とんでも、ない事に巻き込まれる気がします」
「何を言う?ここに来た時から、巻き込まれている」
そう言うと、リファルは、陽葵に向き直った。
「君は、どうして、冥婚符を彼女が拾った事を知ったの?」
「それは・・・」
陽葵は、陸羽が、陸鳳との会話を盗み聞きした事を言えなかった。
「知り合いから聞いていて」
「だから、彼女を連れて帰れと?勿論、最初から、その気だけど」
リファルは笑った。
「でも、少し、気になる事があってね。この城からは、抜け出せないでいるんだ。一体、ここは、誰を守った城なんだい?」
「それは・・・」
この城自体が、六芒星の中心にあり、また、獣神達の中心である事は、知っていた。それを、外部の2人に話していいものか、悩んだ。
「この城は、誰かを守る為に、獣神達に守らせている。六芒星自体の陣をまもる為だけではないね」
壁絵を、丹念に見続け、解読してきたリファルが言った。
「どうして、君は、ここの獣神でもないのに、簡単に、中に入れて、その上、桂華を連れて帰れなんて、言うの?」
エルタカーゼは、陽葵の顔色が、次第に変わっていくのが、わかった。
「君は、一体誰なんだい?」
「え・・私は・・」
陽葵は、リファルが、自分の前に顔を近づけるのを、極端に嫌がった。
「最初、君が来た時は、同じ小動物の魂魄を持つ仲間だと思った。けど、ちょっと、違うようだ」
エルタカーゼは、リファルが何に気付いたのか、わからなかった。
「ここに、来た理由が、もう一つ、あるよね」
リファルの、目が鋭く光った。
睨まれた陽葵が、観念したかの様に、薄く笑い出した。