あの日に雪山で、起こった事。埋もれる事実
あの日に起こった事。
シマエナガの魂魄をもつ苔玉。いや・・・山神、陸鳳の侍従は、まだ、癒えない傷を持つ主を案じていた。
山を降りる事はできない。
陸鳳の留守の間、神が住む山、神出三山の山麓は、苔玉が守らなくてはならない
古い山岳信仰の山々。
太古の大昔は、火山爆発を繰り返す恐ろしい山だった。
羽白山、月の山、湯姫山は、神出の国を東西に分ける大きな山々で、遠く杜の都を見下ろす山々であった。
そのお山は、数々の修験者が訪れ、霊場としての地位を築き、参拝者の絶えない山となっていた。そのお山では、羽白山では、現生を月の山で、死後の体験をして、湯姫山で、命を頂いて生まれ変わるという、類まれな神山であった。
その山神である陸鳳が、8年前、消滅しかかった事件があった。叔父の葬儀の為に訪れた桂華と逢ったその日の事だった。
侍従のシマエナガ。苔玉(陸鳳は、そう、読んでいる)は、何が起きたか、知らない。
「あの時は、酷い怪我をしてな・・・」
大獅子の父親は、苔玉の祠を訪れていた。
「人間の女に、関わるからだ」
苔玉は、面白くない。
勝手に、主人が山を捨てた事が腹ただしい。
「弟が、おるだろう」
「弟?」
そう言われて、頭が、カーッと来た。
「人間との半神に、正当な権利がある訳がない」
ぷんぷんと、ますます、まんまるになって怒り狂う苔玉に、大獅子は、引いてた。
「狐達は、それで、いいかもしれんが、我々、狼の一族は」
「お前は、狼でなかろう」
「代理とはいえ、代々、続いてきた山を守る義務がある」
狐の大獅子は、吹き出しそうになる。
「とはいえ、杜の都に行く事は、許したんだろう?」
「あぁ・・・。杜の都には、行かなくてはならないと、譫言のように繰り返していて」
「あの人間の女の子を助けに行ったと聞いたが、その女の子は、どうしているんだい?」
「何があったんだか・・・その女の子も、記憶がなくなっていてな」
「お山の中で、何が起きたのかは、誰も知らないのか・・」
大獅子の父親は、眉間に皺を寄せていた。
「何かが、起きている。あの六芒星を取り巻く環境が変わっていってるんだろうな」
苔玉は、心配なのか、落ち着きなく、うろうろし始めていた。
「そんなに、心配なら、行ってみたら、いいだろう」
大獅子g、そう言うと、苔玉の表情は、一気に明るくなった。
「いいのか?本当に?」
「いいだろう。」
大獅子は、苔玉に化けて見せる事にした。
「だが・・・」
苔玉は、小さいので、サイズ的には、無理がある、偽の苔玉が出来上がった。