未曾有の災害、六芒星が守るもの
創宇は、ふと、ただならぬ気配を感じていた。
自分を葬りたい勢力があるのは、知っていた。
いつだって、そうだ。
ここの所、未曾有の災害の予言が横行してから、六芒星に縋ろうとしている者が増えているのは、わかっていた。
未曾有の災害。
天からなのか、海からなのか。
咲夜姫は、知ってた。
海からであれ、天からであれ、この地を守るのは、六芒星の陣である事。
戦国の武将は、その能力を借りただけ。
そのベースは、太古にできていた。
永く守護神としてみていたのは、創宇とその配下。伊織のみ。
「もはや、歳を重ねすぎました」
ポツンと創宇は、呟いた。
この体も、心も老いて、ボロボロである。
後、少しで、災害が訪れよう。
その時は、咲夜姫と約束した通り、この街を、守るのだ。
何代も変わるこの世を見てきた。
幾つもの、獣神で、方位を固め、柱に心中を宿した。
その一つの鼠が逃げ出したのは、想定外だった。
何処を探しても、見当たらない。
「同じ能力を持つ者を探せ」
今までだって、そんな変わりは、いなかったのだ。
自分で、言っていて、無理はわかっていた。
六芒星の破壊は、災害から、誰も、逃げ出せない事になってしまう。
咲夜姫が、守りたかった事が叶わなくなる。
菱王を始め、災害の予言を否定し、自分と取って変わりたい、若い獣神達が、増えている。
何があっても、失敗は、許されない。
古城を守る。
陣を維持する事が、創宇の勤めだったが、歳を重ねすぎた体は、悲鳴をあげていた。
お役目を果たすのは、災害が過ぎてから。
自分も、この地の塵となろう。
何がなんでも、鼠を探し出し、古城を守る。
創宇が、屋根裏の気配に気付いた、その少し後だった。
「バスッ!」
渡り廊下の柱を射抜く音と、
「キューッ!!」
小動物の悲鳴が聞こえてきた。
まさか。
創宇は、廊下へと飛び出して行った。
「お願いがあります」
目の前に現れた女性は、リファルに丁寧に頭を下げた。
物腰は、柔らかいが、意志は堅そうである。
堅実な女性である事が伺えた。
「初めて、逢うのに、お願いとは、また、不思議な」
エルタカーゼは、眉を顰めた。
「こんな危険な場所に、難なく入り込めて、怪しさ、この上ない」
リファルに親しげな女性に、嫌悪感があった。
「山神の陸鳳は、ご存じで?」
「あぁ・・」
二人は、顔を見合わせた。
「供の者です。陽蒼と言います」
「君も?」
リファルには、彼女が同じ小動物の顔を持っている事に気が付いた。
「えぇ・・兎の魂魄を持っています」
興味を示したリファルに、エルタカーゼは、ますます、嫌悪感を示すのだった。