表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/119

暁月の大獅子

「月が、紅いなぁ・・・」

大獅子は、創宇が過ごす寺社の屋根に居た。

夜空一杯に、輝く暁が不気味に、輝いている。

冷たい夜の空気を肺一杯に吸い込むと、陸鳳を見上げた。

「お手柔らかに」

「加減は、できないかもな」

陸鳳は、笑った。

この屋根の下に創宇は、いる筈。

古城に、リファルやエルタカーゼが、侵入している事を二人は、知らない。

創宇が探す獣神の鼠を、捕まえたと言い、逢うつもりだった。

勿論、逃げ出した獣神の鼠ではなく、大獅子の化身した獣神である。

古城の箱細工に侵入するつもりだった。

誰しもが、六芒星の陣の効力を欲しがっている。

その中心、箱細工の柱には、誰もが、簡単に侵入できる訳がない。

もし、侵入できたとしたら、創宇が、敷いた罠であり、地下へと降りる階段は、永遠に、目的地に届かない事になっている。

何度も、同じ道を行き来する事になっている。

「うまく、やれよ」

そう言うと、陸鳳は、背にしていた弓を下ろした。

「ど・・どうするつもりだよ」

大獅子は、びくついた。

引いた弓矢は、自分に照準を合わせている。

「ビビるなよ・・・なるべく、小さくだ。小さく」

「やだな・・」

大獅子は、それらしく、小さな鼠に姿を変えた。

「ちゃんと、助けてくれよ」

「微妙な立場だよね。創宇と菱王の、どちらかには、睨まれる」

「お前に、睨まれるよりは、いい」

「そうか?後悔するなよ」

そう言うと、陸鳳は、大獅子目掛けて、弓矢を引いた。

「ビュッ!」

音を立てて、弓矢の刃先は、大獅子の首輪を抜けて、寺社の屋根を越えて、庭先へと飛んでいった。

「バァーン」

音を立てて、庭先の渡り廊下の柱に、大獅子の首を引っ掛けたまま、突き刺さった。

「へ」

陸鳳は、鼻を掻くと、重なった屋根の間に、身を潜めるのだった。

「いてぇよ」

大獅子は、小さく、呟いた。

陸鳳の放った弓矢は、自分の首輪を抜け、ちょうど、ひっかけた形になって、柱に打ち込まれている。

「下手なんだか・・上手なんだか」

首輪毎、柱にぶら下がっている。

準備は、万端だ。

あとは、この気配に、誰かが、気付くのを待つだけ。

案の上、一人の僧侶が気配に、気づき、慌てて、渡り廊下を走り抜けていった。

「おぉ・・・予想からいくと・・」

おそらく伊織。

あの体格と、禿げ上がった頭に、彫られた刺青が、それを物語っている。

左耳の後ろに咲く、桜の刺青。

「それを見る度に、創宇は、憂鬱になるんだよ」

陸鳳は、じっと、下を見下ろす。

ぐったりと意識を失ったふりをする大獅子。

そこに銀髪の創宇が姿を現した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ