六芒星を求める者
創宇は、様子を見ていた。
あの六芒星が、簡単に侵入者を見逃す訳がない。
幾ら、六芒星の歪みが出ているとしてもだ。
この六芒星を求めるものは、多かった。
目に見えない要塞。
張り巡らせた古城を中心とした結界は、敗れる事などなかった。
何世紀も前に、一人の姫神が張り巡らせた結界。
その威力を求める者は、後をたたなかった。
要所要所を守る獣神達。
創宇への叛逆心のある者もいたが、それぞれが、結界を守る事の責は、守っていた。
「いつしか、この六芒星を、欲しがる輩が出るでしょう」
咲夜姫が言っていた。
「国を守る為に、それぞれが、欲するでしょう。でも、それでは、ここを守る事はできません」
「どう言う事でしょう?」
「この都自体が、一つの舟となるでしょう。新しい時代への。だから、守らねばなりません」
その時には、まだ、わからなかった。
咲夜姫が、来る時代に何を備えているのか。
「簡単に、六芒星の中心に入れる事を、不思議に思わないかの」
創宇は、鏡に浮かぶ六芒星の中心、古城を見下ろしていた。
「しっかりと、古城の地下へと向かっている様です」
「わざわざ、こちらから、向かわなくても、足を運んでくれるとは、ありがたい」
「その為に、結界を緩めたのですね」
「わざわざ、出かけて、余計な事に首を挟むこともない。しっかり、捕まえて見せよう」
「えぇ・・・逃げ出した、獣神の代わりを必ず、捕まえて見せます」
伊織は、少し、顔を伺いながら、頭を下げた。
六芒星を欲しがる者。
それは、多い。
者?だけではない。国を束ねる者達が、創宇にそのカラクリを訪ねて、現れていた。
それは、来る災難から、時刻を守る為だった。
誰もが、生き残る為、六芒星の陣を欲しがる。
終わる事のない階段の途中で、出会ったのは、意外な人物だった。
「君は?」
身構えるエルタカーゼを制して、出会ったのは、陽葵だった。
「初めまして」
凛と微笑む女性は、明らかに人間ではなかった。
「人間でもない者が、どうしてここへ?」
「お互いに損は、ない話を持ってきました。急にお会いする無礼をお許しください」
故郷の山で、山神に仕えてきた時の様に、頭を下げる。
「獣神では内容だけど・・・似た様な者かな?」
陽葵が、同じ小動物の魂魄をもつ者だと、わかる。
「はい。以前は、山神に仕えていました」
それが、誰なのかは、すぐ、分かった。
「その君が、どうして、ここへ、わざわざ?」
「お願いがあって、ここまで来ました」
陽葵の願いは、リファルの思いと同じだった。