異国に散った恋人
リファルとエルタカーゼは、六芒星の中心、古城に辿り着いていた。
やはり、陣の効力が堕ちているとはいえ、中心に入るまでの、防御は、硬く、侵入を拒んだが、異国の地の冥府の皇子だけあって、負傷する事なく、侵入できた。
「不思議なんだが・・・」
リファルは、古城の長い通路を降りながら、呟く。
「初めて、来たとは、思えない。不思議な感覚があるんだ」
「我々の地とは、全く、異なりますが・・」
「この陣の能力を、奪う事ができたらと考えたが、どうも、逆なのかもしれない」
「逆ですか?」
「まだ、確認は持てないが」
リファルは、蝋燭を手に、長い階段を降りていく。
壁に、2人の長い影が、映り込んでいく。
「桂華を冥婚の相手と選んだ訳だが・・・。同じ事が、ここでも、行われていた可能性がある」
「この地を守る為の、陣ですぞ。冥婚とどんな関係が?」
「ただの、冥婚ではない。亡くなった者を慰める為の冥婚だが、その亡くなった者と言うのが、問題があるのだ」
「ここの古城がですか?」
「どちらも・・だ」
リファルは、エルタカーゼの顔を見下ろした。見た目は、幼く見えるが、もう、年齢を重ねる事もなく、その時のまま、時間を止めていた。
「桂華は、知っていたのですか?」
エルタカーゼは、不思議に思っていた。何故、海外に来た物が、冥府と縁を保つのか。
「我々が、この陣に来たのも、意図があるのかもしれない」
「誰の・・・ですか?」
エルタカーゼは、リファルが何を言おうとしているのか、わからなかった。
「古城から逃げ出した鼠。冥婚。陣。どれも、我々の国と同じなんだよ。」
「意図して、我らを連れてきたって事ですか?」
「桂華が、意図していたのか、どうかは、わからない」
リファルは、古城の壁に触れている。
蝋燭の炎が、揺れて、今にも、崩れてしまいそうな壁が、目に入る。
「エルタカーゼ。僕は、この古城に、誰が眠るのか、わかった気がする」
「戦国時代の武将と聞いていますが」
「その前だよ」
監禁されている時に、創宇が守っていると聞いた女性。
「その人は、僕が一番知っている人なんだ・・・」
古城の壁には、幾つもの壁画が描かれていた。
文字ではなく、古い時代の人達が、伝えたかった歴史。
リファルのふれた指先には、人々の前に立つ女性の姿があった。
「誰なんです?」
リファルの両目からは、大粒の涙が、溢れていた。