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閉じ込められた冥府の皇子

創宇が、咲夜姫の眠る墓所に行っている間、キャリーバックの中で、動くモノがあった。気を失っていた掌に乗る程度の小さな栗鼠だったが、ようやく息を吹き返し、自分の置かれた状況に気がつき始めていた。

「ここは、どこだ?」

体を動かすが、思うように行かない。従者の言いつけを破るのではなかった。今頃、自分の事を血眼で、探しているだろうが、異国では、思うように探せまい。

「年頃になったら、伴侶を探すがいい」

父と母に決められるのは、嫌だった。自分で、探すと決めたものの、誰を選んだらいいのか、わからなかった。

「こんな方法があります」

T国で、伝わる方法だった。拾った者を伴侶として連れ去る方法。拾った者は、生まれつき、自分の縁者となっていると聞く。

「冥府に縁者のある人間などいますか?」

兄弟が笑う。

「あるとしたら、人間ではない」

むしろ、その方が興味がある。古くから地獄の入り口のあるT国。活火山の観光地を目指して、世界各国から、様々な観光客が押しかけている。

「その中から、縁者を探すのも、面白い」

「だが、縁者となった者を拒む事はできない。必ずしも、伴侶に相応しい者とは、限らない。それでも、いいのか?」

祭司は、問う。

「はい。それなら、独り身を貫くまで」

皇子リファルは、縁者を探して、誘縁魂を入れた紅い袋を、観光地に置いた。自分と縁を持つ伴侶を求めて。

「必ず、連れて帰る」

従者とエルカターゼと張り込んでいた中、現れたのが、桂華だった。不思議な女性だった。縁があるかと思ったが、誘縁魂は、反応しなかった。彼女自身も、触れようとしたが、何かに邪魔され、持ち帰る事はしなかった。

「エルタカーゼ。僕は、何か気になる」

リファルは言った。

「人間だけど、何か、匂う」

「縁者では、なかったようですが」

「ではあるが、ただの人ではない」

「どうしますか?」

どこにでもいる平凡な若い女性。だが、覆っている空気が異なっていた。古代からの空気が、彼女を守っている。

「少し、興味がある」

「縁者ではないです」

リファルは、少々、冒険心が強い所がある。従者のエルタカーゼが、一番、手を焼く皇子だ。

「縁がなければ、作ればいい」

言い出したら、聞かない。向こうみずで、何でも飛び込む。エルタカーゼがどうしようかと思案している間もなく、リファルは、彼女の手荷物の中に潜り込んでしまった。

「リファル様!」

慌てて、エルタカーゼもリファルに同行したが、海を渡莉、この地に着いた瞬間、リファルが突然、姿を消した。

「地から空に、抜ける空気が違う」

エルタカーゼは、空を見上げた。予想もつかない地に、自分達は、迷い込んだようだ。リファルの気は、消失し、どこに消えたのか、当てもない。わかるのは、あの女性と関わってから、現れる異変だった。

「リファル様の勘は当たる」

何かしら、あの女性が、隠しているに、違いない。エルタカーゼは、決心した。フィファルが戻ってきなければ、地をひっくり返してでも、探さなくてはならない。意を決して、桂華の前に立っていた。

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