今、君は、消えて無くなる
立ち尽くすしか、なかった。
目の前で、桂華が、変わっていく姿を。
思ば、初めて逢った廃校。
絵の中に閉じ込められていた時に、神女の娘と逢った。
弟 陸羽の許嫁と聞いた。
側に居ながら、遠い存在だった。
「桂華・・・」
彼女が、咲夜姫なら。
もう、自分の事は、覚えていないだろう。
蛹から、蝶になるように、
君は、変わってしまう。
なぜか、自分の体から、力が抜けてしまった。
「あぁ・・・そうだ、咲夜姫」
小さく呟く、創宇の声を聞いた。
彼は、嬉しそうだ。
自分を守る為、陣を敷いたと聞いた。
長い間、待っていた彼は、どんなに嬉しいだろうか。
ふと、自分の身体のあちこちが、焦げ臭い事に気がついた。
我が身顧みず、空を駆け、闘った。
「はは・・」
陸鳳は、埃くさい身体を払った。
「あなただったの?やっぱり」
陽葵は、桂華を睨んだ。
「やっぱり、真っ先にあなたを殺すべきだったわね」
「何を言うんだ?」
陸羽に、身体を押さえつけられて、陽葵h、短い悲鳴をあげた。
「だって・・・。結局は、自分達の事しか、考えていない。仙台も九州も、互いに自分達だけが、残ろうとしているだけでしょう?」
「そんな事はない」
桂華は、言った。
否・・・。この場合、咲夜姫だろうか。
姿は、すでに、桂華のそれでは、なかった。
「ここに来た時、自分の残す時間が、あと僅かだと気づいた。ここでは、時間が早く流れる。創宇を死なせたくなかった。」
「咲夜姫」
長い間、待ち続けた咲夜姫が、戻ってきた事は、溢れる涙を止める事ができなかった。
「私が、どんなに、待っていたか」
「お前は、私とは、違う。長い時間の流れで、体が、朽ち果てぬか、心配だった」
「咲夜姫」
創宇は、彼女の手を取った。
「信じていました。こうして、災厄の時がやってきても、あなたが、守ってくれるって」
「これで、六芒星があるから、安心。めでたし、めでたしで、終わるのかい?」
九州に飛んだ筈の菱王だった。
「菱王?」
創宇は、慌てて、咲夜姫の手を握り締めた。
「九州に飛んだんじゃ・・・なかったのか?」
「お前達だけ、助かる?そんな訳いくか!」
菱王は、創宇の腕から、咲夜姫を奪い取った。