始まりの地の終焉
「これは、終わりなの?」
信じられない思いがあった。
たくさんの火球が、どの地にも、降り注ぎ、終わりの時間が迫っている。
地鳴りが止まらない。
地上の桂華達を守ろうと陸鳳が、戦っているが、もう、限界だろう。
「陸鳳は、炎が怖い」
頭の中に、その文字が浮かんで消える。
「どうして・・私」
「炎を怖がるのは、幼い日の思い出があるから、お母さんのね」
ちょっと待って!
知っている。
自分は、陸鳳を。
山神。
今と同じ白銀の毛並みの狼。
獣神だ。
私は、知っている。
どうして?
確か、少女の頃、母親の故郷に行った。
雪山で、起きた事。
「桂華・・・」
気を失いかけた希空が、桂華の手を握り返した。
「お願い」
「希空?」
「あなたしかいない・・・」
もう、顔色がない。
血の気が無く、鼓動を打つ、心臓の動きも弱くなっている。
本当に咲夜姫なの?
そう言いたかった。
取り乱す創宇を見ていると、確かにそうなのだろう。
「咲夜姫・・・」
このまま、希空は、前世を思い出す事なく、、この世を離れてしまうのか。
「せっかく、戻ってきたのに。あなたとの約束を守る為、私は、どんなに、長い時間、一人でいた事か・・・」
創宇は、長い間、古城を守り、咲夜姫が戻って来るのを待っていたのか。
「しっかりして」
救急車。そう思ったが、その考えを打ち消した。
地上は、火の海だ。
疲れ果てた様に、陸鳳が、地上に降り立った。
「南の方角に、オーロラが見える」
「オーロラ?」
かすか遠く、南の空に、赤や紫に、光を織りなすカーテンが、見えた。
「あの方角は・・・」
菱王が、生唾を飲み込んだ。
「九州・・・神々の始まりの地だ」
陸鳳は、言った。
「早く、戻るがいい。咲夜姫は、もう、戻らない」
力尽きる寸前だ。
「どちらにしろ、もう、両方の地も、同じだ。遅すぎた」
「そんな事ない。陸鳳。咲夜姫は、本当に、もう、ダメなのか?」
希空は、最後の瞬間を迎えようとしていた。
「リファル様」
言葉がなかった。
また、咲夜姫は、自分達と一緒に帰る事なく、一人で、去ろうとしている。
何処かで、出会う事は、あるのだろうか。
「災厄か・・・こんなに、星が降って来るんだな」
リファルは、天を仰いだ。
闇が迫り、その中で、輝く火球。
美しくも、恐ろしい光景。
「後は、頼んだから」
そう桂華に呟いて、
希空は、旅立った。