災厄の時
目の前で、光が弾けた。
リファルは、何も、思い出せない。
「当てにならない」
そう思っていた。
何が起きたのか。
どうして、咲夜姫を思い出せないのか。
連れてきて、良かったのか。
エルタカーゼは、判断を誤ったと思っていた。
「過去をなくしただけでなく、力まで、なくしたのか」
そう、諦めていた。
その火球が弾ける瞬間まで。
「!!」
陸鳳ですら、動けなかった。
過去のトラウマが、動きを封じた。
「まずい」
誰もが、そう思った。
その時、動いたのは、リファルだった。
彼らが目にしたのは、火球を宙に止めるリファルの姿だった。
「リファル?様?」
エルタカーゼは、血が引くのを感じた。
リファルの顔は、禍々しく、今までの顔とは、全く、異なっていたのだ。
「エルタカーゼ!」
そう叫ぶと、宙に止まっていた火球は、勢いを失い黒い塊となって、地表に落ちていった。
「はい!」
その声は、歓喜に満ちていた。
リファルが目覚めた。
長い間、眠りについて、全てを忘れていた彼は、ようやく、目の前に戻ってきたのだ。
「なんでしょう」
「待たせた」
「はい」
この時を、どんなに待った事か。
咲夜姫を探して、どんなに長い時間が流れたか。
「今すぐにでも、帰ろう」
「えぇ」
勿論、それは、咲夜姫である彼女を連れてと言う事だった。
「時間がない」
火球が降り注ぐ、その後、起きる事は・・・。
やっと、それらしき人を見つけたのだ。
他の地を守っている場合ではない。
「やっと、見つけました。咲夜姫!」
リファルが手を取ったのは、桂かでもなく、異空間を一緒に過ごした希空だった。
「探していました」
「はい?」
自分の手をとるリファルが口にした名前に、きょとんとしている。
「咲夜姫?私が?」
「はい・・・そうです」
その場にいる誰もが、信じられないという顔をしたその時、空間を揺らし大きな揺れが、地上のあらゆる者達を襲っていた。