咲夜姫を離さない
創宇にとって。
咲夜姫は、忘れられない人になる。
「未来永劫、守って」
その言葉が呪縛になった。
咲夜姫が創宇の時間を止めてしまった。
自分の生きた証でもある咲夜姫。
「連れては、行けない」
創宇は、訴える。
「咲夜姫は、この陣の一つでもある。連れていく事は、この陣を破壊する事になる」
「だが、もう、壊れている。時間がない」
「時間がないとは?」
「仙台も九州の陣も、災厄には、敵わない。一緒に滅びる訳には、いかないんだ。長年、探した彼女を連れていく事を許してほしい」
エルタカーゼは、創宇に言った。
「咲夜姫は・・・」
創宇は、迷った。
「一体、どちらなのか?」
顔を合わせる創宇、陸鳳。
誰もが、
桂華だと思っていた。
「私は」
桂華は、否定した。
中学生の頃、山神のいる田舎に行った事がある。
間違いなく、父と母の娘だ。
生まれ変わりなど、信じない。
であれば、
もう一人、
冥婚状を受け取った女性は・・。
「希空?」
桂華は、隣にいる彼女の横顔を見つめた。
「そうなの?希空?」
「まさか・・・」
希空は、笑った。
「私が、そんな筈はないでしょう?」
笑う希空を見て陸鳳は、戸惑った。
どちらかが、咲夜姫だ。
桂華だと、思っていた。
が、霊峰で出会った時には、そんな感じはなかった。
彼女は、神女。
咲夜姫が、この星の者でないとして、
桂華が、咲夜姫とは、あり得ない。
イコールではない。
きっと。
咲夜姫がいるとしても、彼女は、なるべく、目立たないようにするだろう。
誰かの陰で、目立たない様に。
それは、きっと。
「わかっているの」
陸鳳の考えが読めるのか、エルタカーゼが、呟く。
「あの時に、気付いたの」
古城の異性界に、放り込まれた時。
「私達と同じでありながら、それを超える能力のある者が誰なのか」
その時だった。
「止めろ!止めてくれ!」
創宇は、叫んだ。
「そっとしておいてくれ。咲夜姫が、やり通したい事が、残っているんだ。災厄から陣を守る。その目的を果たせてくれ!」
悲痛な声が、響く中、和多くの火球が降り注いで行く。