どうしても主役になれない
陸鳳。
山神。
三大霊峰の一つ。
雪山の秘境を中心に代々、継承されたきた神獣。
六芒星の守護 創宇でさえ、一目置く存在。
奴は、計画の邪魔になる。
取り入る事ができれば、良かった。
が、
結局、陸鳳は、事実上、創宇と手を組んだようだ。
時間がない。
災厄の時が訪れる。
自分の故郷を守るには、六芒星を持ち帰らなくては、ならない。
「六芒星の陣は、すでに、壊れかけている?」
陽葵から、話を聞き出した菱王は、愕然とした。
「噂は、聞いていたが、本当なのか」
「古城の中心には、秘密があって、それぞれの役目を持った、獣神がいるのですが、
生命の源を、司る獣神が逃げ出してしまったのです」
陽葵は、つい、話し出していた。
悲しい気持ちで、その場から、逃げ出した彼女を、
菱王が、優しく助けてくれた。
つい、気を許したのだ。
誰も、自分の味方はいない。
記憶を無くした陸鳳を、自分は、献身的に尽くした。
だが、結局、
みんな、咲夜姫の生まれ変わりのあの女性に、魅かれていく。
「みんな、本当に、事の重大性に気づいていないんだよ」
菱王は、言う。
「1箇所だけ、守ったとしても、救われない。この国全部を守りきれなければ、本当に、滅びてしまう。神の生まれた地。鉾の刺さった九州を守らなくて、どうする?」
「六芒星を、九州に持っていくのですか?」
菱王は、慌てた。
「そうじゃない。北の国だけを守るのではない。九州の鉾g、この国全体を守れる。鉾の力を重複させるには、六芒星が必要なのだ」
「そしたら、杜の都は?」
「両方、守れる」
「でも・・・」
陽葵は、迷った。
「教えてくれないか?逃げ出した獣神を。それが見つかれば、六芒星が、完成するんだね」
「えぇ・・・」
「大丈夫だよ。六芒星が仙台から、なくなれば、きっと、彼は、解放される。また、昔の様な、生活ができるんだ」
「陸鳳が、解放される?」
「そうだよ。彼だって、本当は、故郷に帰りたいはず。古城の件に巻き込まれたんだ」
「でも・・・あの女がいたら」
「あの女も、六芒星が移れば、居なくなる間違いないよ」
「居なくなった・・・獣神は・・・」
陽葵は、陸鳳と静かに過ごしたいだけだった。
穏やかな日々。
きっと、彼もそう願っているはず。
そう、思いたかった。