転生した2人の姫
菱王は、この地に来る前から、六芒星の陣にまつわる伝説を調べていた。
方位を守る獣神と古城の中心に眠る獣神の関係がわからなかった。
まず、知り得る為に、六芒星の獣神に近づいた。
方位、それぞれに意味があり、
古城の中心を守る干支の獣神にも、それぞれ、意味があった。
その中で、いなくなった獣神、鼠が示すのは、誕生。生まれ変わり、生を指すものだと気づいた。
「生まれ変わりを指すものが、いない」
鼠の獣神が揃ってこそ、六芒星の陣が起動する。
だが、
現在、六芒星の要となる獣神が、いない。
再生。生まれ変わりを指すものが、いなくなり、突然、咲夜姫の生まれ変わりと言われる女性が2人現れた。
「創宇の様子から・・・」
桂華が、そうなのか。
そうと見せていて、希空なのか。
鼠の獣神を探し出し、
咲夜姫の生まれ変わりを九州に連れていくか。
そう思いあぐねいていた時に、
陽葵を見つけた。
目に涙を溜めて、
何かがあったらしい。
山神の兄 陸鳳にピッタリとくっついていた兎の妖だ。
災厄から、
故郷を守るのは、
正しい方法ばかりとは、限らない。
あの2人の女性を手に入れる為、陽葵を騙すのは、簡単だった。
「巻き込まれた獣神は、命を落とす」
菱王は、陽葵を、助けるふりをした。
彼女が、陸鳳を、何よりも大事にしているのは、聞いていた。
故郷での出来事がトラウマとなり、一時的に記憶を失った彼を
守っていたのは、陽葵だった。
献身的に尽くしたと聞いている。
彼女の一方的な思いを、利用しない手はない。
「古城に開いたカラクリ箱は、代わりの獣神を探している」
「代わりの?同じ獣神でないとと、聞いています」
「古城の中心は、高エネルギーの場になっていて。全部が集まってこそ、バランスが取れているが、1つでも、欠けていると、そこは、極端にマイナスになる」
「マイナスになると、どうなんです」
「そこに囚われると、出て来れなくなる」
「だから、鼠の獣神が必要なんでしょう?」
「そうだ。それ以外だと、吸収されてしまうから。たあ、時間がない」
「どうすればいいんでしょう?」
「咲夜姫の生まれ変わりを教えてくれないか?」
「教えたら、どうなんですか?」
「彼を助けてあげよう。そして、邪魔な彼女を遠くに連れ去ってあげよう」
「彼女?」
「あなたは、咲夜姫の生まれ変わりを誰と考える?」
「それは・・・」
陸羽も陸鳳も、彼女に魅かれている。
冥婚の招待状も、彼女に来ている。
何もかもが、彼女を指している。
「桂華。母親も、神女だったと聞いています」
やっぱり。
希空は、ダミーだ。
「わかった」
菱王は、ゆっくりと口元を緩めた。