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懐かしい目をした人

どこかで、逢った覚えがある。桂華は、思い出そうとしたが、封をされたかの様に、思い出す事は出来なかった。その部分だけ、真っ白くなり、どこで会って、何があったのかは、思い出せなかった。田舎に帰った時に、そこで、拾った子犬を連れて帰ろうとしたが、両親が猛烈に反対していた。そんな記憶しかなかった。子犬を飼う事はできず、結局、子犬は、親戚に貰われていった。そんな記憶ぐらい。

「誰か、知っている人?」

木陰まで、付き合ってくれた男性は、近くの自販機から、飲み物を買ってきて、希空に差し出していた。

「ありがとう」

希空は、少し警戒していた。

「あなたは、さー。無意識で、災難に巻き込まれるから、気をつけないと」

希空は、嗜める。桂華は、無防備すぎて、割とトラブルに巻き込まれる。一緒に行った京都巡りでは、夜中過ぎのホテルで、怪奇現象に悩まされた。神社の鳥居で、転んだ事を誰かの手に引っ張られたと言い張ったり、桂華と一緒にいると、いろんな目にあう。

「旅行すると、いろんな事にあうわね」

ため息混じりに呟いた言葉に、男性は、笑う

「出てはいけないから」

「出てはいけない?」

希空は、男性の顔をまじっと見た。

「何を言っているか。わかりますか?」

「言葉の通りだよ。外に出ると、余計な物を拾ってくる」

男性は、桂華の右手を取ると、掌に何かを書き込んでいった。

「余計な物が、次から次へと、付いてきているよ」

書き終わると、男性は、立ち上がり、周りの様子を伺った。

「今なら、閉じている。いいかい?振り返らず、真っ直ぐ、出口まで、走れるかい?」

桂華と希空を立たせ、出口を指差す。

「今なら、帰れるって事?」

希空は、絡んだ。

「また、逢うことがあれば、今日の事は、話そう」

男性は、希空の背を押し、桂華を連れて立ち去るように促す。

「また、逢うことがある?」

「たぶん・・・」

出口を指だし、背中を押されたので、桂華と希空は、約束を守って走り出した。

「振り返るなよ」

男性は、背中に声を掛ける。姿は、次第に、形を変え、芝生に潜む獣の形となっていった。

「面倒な事になった。兄者」

陸羽は、少しだけ、低く唸った。

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