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冥婚の招待状は、南風に乗って。

雪山での出来事を忘れ去ったまま、数年が過ぎていた。桂華も、20歳になり、友人と旅行したT国で、拾ってはいけない赤い飾り袋を手にしたせいで、怪奇現象に巻き込まれていく

雪が、降っている。見上げると際限なく、降り積もる。まるで、自分が、雪の花の中央にいるかの様な錯覚に陥ってしまう。四方に、開いていく花びら。闇は、何処までも、広がっている訳ではない。重なる紺の色。雪灯だろうか。闇の中で、紺色と白く光る雪のコントラストが美しい。雪の華は、無限に開いては、閉じて行く。星の輝きもなく、花だけが、広がる世界。

「・・・か」

誰かが、呼んでいる。何か、大事な事を忘れている気がする。遠い昔。雪山で、失踪した叔父の葬儀で向かった田舎で、何かあった気がする。とても、大事な事があった気がしたが、日々の繁忙に紛れ、いつの間にか、20歳を超えていた。雪解けの季節になると、何とも言えない気持ちに陥るが、今年は、親友と国外に脱出し、大好きなスイーツの国に来ていた。

「桂華!」

肩を揺すられて、ハッとして目覚めた。雪景色の夢を見ていたが、現在、訪れているのは、雪景色とは、全く縁のない南国の片田舎だった。世界遺産を見たいという希空の希望もあり、パックツアーに申し込んで、後は、最後の1箇所で、帰りの飛行機に乗るだけの行程だった。

「ごめん」

桂華は、慌てて、口元の涎を拭った。

「ここで、最後だから、格安ツアーだったから、行程が厳しかったかな」

バスでうたた寝してた桂華を気遣って、希空は、笑った。

「ガイドさんが、いろいろ注意していたの、聞いた?」

熟睡していて、降車後の注意なんて、桂華の耳には、届いていなかった。

「また、雪の中の夢みてて・・・」

夢現で、桂華は、答えた。

「南国で見る夢が、雪なんて、そんなに、暑いのかね」

バスの中は、日本ほどではないが、十分に、エアコンが効いていた。季節に、関係なく、最近、雪山の夢を見る。毎年、この時期になると、決まって見る夢。

「場所は、関係ないみたい」

「そうみたいね」

バスが止まり、前の乗客が降り、自分達の順番が回ってきたので、慌てて、桂華は、立ち上がった。

「最後の観光地だから、しっかりお土産買うわよ」

希空がやけに張り切っていた。夕方の便で、帰国すると明日からは、すぐ、バイトである。旅行で、お金も大分、使ってしまった。大学のお金を出してもらっている以上、それ以外は、自分で、働かなくてはいけない。あまり、余計な物は、買いたくないが、家族へのお土産は、現地の物で、すませばいい。高額な物より、現地の物を、家族は喜ぶのだ

「変わり者が、多いのは、家の血筋かな?」

等、桂華は、考え、希空と一緒に、屋台の立ち並ぶ路地裏へと入っていった。慣れない観光地の路地裏だが、他のバスの乗客もガイドも付いていたので、安心してた。値段の交渉をするガイドの様子を参考にし、希空が大袈裟なジェスチャーで買い物する姿が、可笑しかった。

「値切るのは、任せなさい!」

次第に、希空が現地の言葉と日本語が、半々になっているのが、おかしかった。店員と希空の様子に見惚れていると、通り過ぎる他の観光客と、すれ違いざまにぶつかってしまい、棚に並んだ飾り袋を落としてしまった。

「あ!」

希空が、ポカンとしているので、桂華が慌てて拾い上げた。

「すみません!」

桂華は、慌てて、棚に飾り袋を戻していく。

「それ違うって!」

希空が、桂華の呈している赤い袋を見て、声を上げる。店員が、何か、希空に言っている。

「どうしたの?」

店員と話ししている希空の顔色が次第に変わっている。

「桂華!それを早く捨てて!」

「え?」

桂華は、手の中の赤い飾り袋を見つめた。細長い赤い布袋には、金色で何か、文字を刺繍している。じっと、見つめる桂華の所に、店員の様子から、異常を察したガイドが駆け寄り、手の中の赤い袋を叩き落とした。

「だめ!拾わないで」

周りの空気が凍りつくのを桂華は、感じ取った。

「これって?」

桂華は、恐る恐るガイドの顔と希空の顔を見比べている。2人の顔色は、悪く、周りの観光客も、遠巻きで、桂華を見つめていた。

「桂華。それって」

希空の声が震えていた。

「冥婚の招待状よ・・・ね」

地面に、落ちた赤い飾り袋は、そこだけ、異様な空気が漂っていた。。

T国を離れても、海域現象は収まらず、桂華は、命の危険を感じる様になる

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