魔法の階位と森の異変
無事魔獣の素材を換金する事が出来たミノル達。
その夜はクローシェが気になっていた店で美味しい食事を堪能する。
そんな穏やかな時間を過ごしていると森の魔獣たちに異変が起きて・・・
「乾杯!」
小気味いいグラスの当たる音と笑い声が響く。
俺たちは買取所で素材の買取が終わった後、町の東区にある宿を取った。
今は南区のクローシェちゃんが気になっていた飯屋に来ている。
「しかし、あの魔獣って高く売れるんだな。」
「本当に。 まさか全部で金貨60枚になるなんて驚きました。」
「ワシのお陰じゃな! 感謝せよ!」
「いや、お前は何もしてないだろ」
美味しい食事に舌鼓を打ちながら仲間との時間を過ごしていると、隣のテーブルに冒険者風の男達が座ってきた。
テーブル間の距離は割と広いのだが、衝立のようなものは無い上に、今は人が少ないので必然的に会話が聞こえてきた。
「おい、聞いたか? どこかの旅の人間が魔獣を討伐したらしいぜ。」
「ああ・・・なんかそんな噂が流れていたな。 あれは本当の話なのか?」
「どうやらマジらしいぜ。 なんでも若い男と少女の2人組で、魔獣を十数体倒したんだとか。」
「はあ? それは流石に嘘だろう。 そんな人間が居たら是非会ってみたいもんだ。」
「だよな。 しかも武器も使わず素手で倒したっていうんだからな。」
「いや、もうそれ人間じゃないだろ、化け物だろう。」
「はっはっは、違いねえ!」
恐らくその男達の話に出ていたのは俺たちの事だろう。
噂は出回るのが早く、もう街中の人間が知っている可能性が高い。
これ以上目立たないように気を付けなくては。
「はあ・・・」
「・・・? どうしました、ミノル様?」
「いや何、来て早々悪目立ちした気がしてな。 気を付けなくちゃって思ってさ。」
「まあ。 でも、魔獣を倒したお陰でこんなに美味しいご馳走を頂けるんですから良かったじゃないですか。」
「うん・・・まあ、そうなんだけどね。」
「うむうむ、もっと感謝しても良いのだぞ!」
「あ~はいはい、ありがとうございましたー。」
「なんじゃ、その反応は!?」
そんな感じでのんびりと食事をしていると唐突にイナが話始めた。
「あ、そうじゃった。 ミノルよ、お主新しいスキルを得たぞ。」
「ん、え?」
「じゃから、新しいスキルを得たのじゃ。 スキル名は”千里眼”。 まあ、色々と便利なスキルじゃ。」
「千里眼・・・」
千里眼という単語なら聞いた事がある。
遠く先まで見通せる目の事だ。
「ふむ、間違ってはおらぬが、正解ではないの。 お主の千里眼は遠視も出来るが、森羅万象を見通す目じゃ。 相手のステータスやパラメータ、スキル等も確認できるのじゃ。」
なんじゃそりゃ。
それって結構便利なのでは?
相手がどれくらいの強さでどんな切り札を持っているのか、それを予め知れるのと知れないのでは雲泥の差が生じる。
少なくとも初見殺しみたいな事は避けれルだろう。
「どうすれば使える?」
「これは常時発動型のスキルじゃからな、特に発動条件など無いのじゃ。 思うままに見てみるが良い。 そうすればお主の望むものが見えてくるじゃろう。」
なるほど。
俺はちょっと試して見る事にした。
俺は目の前のクローシェちゃんの情報を見るべくステータス画面をイメージしながら見てみた。
「おお!」
俺がイメージするとクローシェちゃんの情報が頭の中に流れ込んできた。
どのステータスも桁違いに高い。
そしてスキルは「異次元倉庫」と・・・「獄炎」?
まだ知らないスキルだ。
俺は「獄炎」の詳細情報を確認してみる。
なになに・・・”如何なるものも灰となる死に至る炎。この炎に焼かれたものは灰すら残さず消滅する。”って・・・何この怖い魔法。
分類は・・・第25位魔法で、究極魔法。
第25位魔法って何だ?
「それは、魔法のクラスじゃ。」
「魔法のクラス?」
「そうじゃ。 魔法は大きく分けて5つのカテゴリになっておるのじゃ。 下から順に”下位魔法”。 これは第1~8階までの魔法を示すのじゃ。 次が”中位魔法”。 これは第9~14階の魔法じゃ。 その上が”上位魔法”。 ここからは中々使える者が少なくての。 賢者と呼ばれる者や、精霊、悪魔等しか扱えないと言われておる。 ”上位魔法”は第15~20階の魔法じゃ。 そしてその上の”超位魔法”。 階位は21~24じゃ。これを扱える物は精霊の中にもほとんど居らん。 それこそ高位の存在でないとの。 そして最後に"究極魔法"じゃが・・・これはワシとクローシェともう一人しか使う事ができぬ領域の魔法じゃ。 階位は25~27じゃな。」
「そのもう一人って・・・」
「・・・」
クローシェちゃんがビクっとなる。
「そうじゃ。 もう一人とはクローシェを追い出した反逆者じゃ。」
イナのその言葉にクローシェちゃんは悲しそうな顔をする。
「あ奴はその力を得る為に配下の魔族を一人残らず生贄にしたのじゃ。 じゃが、それにより得た力は凄まじく、今のクローシェでは敵うべくもなく逃げる事しかできんかったのじゃ。」
「申し訳ありません、私にもっと力があればこんな事には。」
「誰もお主を責めてはおらぬよ。 ワシももう少し気を付けるべきじゃったのじゃ。 ワシが気づいた時にはもう事が起きた後じゃったしのう。」
俺はその時の二人の気持ちを思うと心が痛んだ。
「じゃが、こうしてミノルが来てくれたのじゃ! これからはワシらの反撃の番じゃ!」
「はい! ミノルさん、頼りにしています。」
先程とは打って変わって明るい笑顔を浮かべる二人。
俺は力強く頷いた。
「うん。 俺に何が出来るか分からないけど、二人の為にも精一杯頑張るよ!」
俺がそう答えると二人は本当に嬉しそうに頷き返した。
こうして決意も新たに俺たちは食事を楽しみ、夜は更けていった。
ちょうどその頃、森の中で一つの異変が起こっていた。
本来、魔獣は魔素が多いところに留まる習性がある。
それは魔獣は活動するだけで魔素を消費している。
高位の魔獣になれば大気中の魔素を収集して変換する事が出来るが、ベアファングのような下位の魔獣は大地から溢れ出る魔素を直接取り込むしか補充方法は無い。
故に、魔獣は森や山に多く生息しているのだ。
しかしその夜、一体の魔獣が森を出て町の方へ向かっていた。
雄たけびを上げ、息も荒く、一心不乱に町へと走っていた。
そしてそれに釣られる様に一体、また一体と町へ駆け出す。
そしてその数は少しづつ増えていき、最後には30近い魔獣が町へと走り出していた。
そして魔獣が居た森の中にはマントを被った一人の影が佇んでいた。
そして月の光が雲で遮られれると同時にその影は森の闇の中へ消えていった。
仕事が忙しくて中々書けておりませんが、少しづつ投稿していこうと思います。
暇つぶしになれば幸いです。