表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生は神様として!?  作者: あるとせるく
14/23

魔獣と精霊

「よし! ミノルよ、早速精霊を1体召喚してみようではないか!」

突然のイナの発案に驚くミノル。

しかし、それは思いつきで言った訳ではなかった・・・

「よし! ミノルよ、早速精霊を1体召喚してみようではないか!」



イナの突拍子も無い発言に呆気に取られるミノル。


「え?・・・いや、なんで?」


当然疑問の声を上げるが、イナは先程までの明るい口調から真剣な口調へと変わりミノルの質問に答えた。


「ミノルよ。 魔獣は決して自然には発生する事のない生物なのじゃ。」

「え?!」


ミノルはイナの発言に驚く。

するとクローシェも説明を始める。


「魔獣と呼ばれる者の多くの場合は、元々は普通の生物なのです。 その者達が邪気にあてられ魂が完全に変貌しきった時、魔獣として生まれ変わるのです。」


クローシェは悲しそうに目を伏せる。


「今日、討伐した魔獣達も元々は・・・」

「クローシェよ、お主の優しさは素晴らしい事じゃがアレはどうにもならん。気にするでない。」


イナがクローシェを励ます。

クローシェはそれでも悲しそうに顔を俯かせていた。


「ミノルよ。 今ワシらが話した通り魔獣は後天的に生まれるものが多数じゃ。 稀に怨念そのものから魔獣が生まれる事もあるが、今日の魔獣たちは魂が変貌したものじゃ。」

「・・・。」

「そして、普通はあんなに一度に多く発生する事はないのじゃ。 あれほどの数が生まれるのであれば戦争や虐殺等が起きていなければならん。 じゃが、この町自体にそういった雰囲気はなく、建物の様子を見てもそういった痕跡はない。 だとすると考えられるのは1つ・・・」

「それは?」


ミノルの問いにクローシェが顔を上げ、強い眼差しでミノルに答えた。


「あれは人為的に作られた魔獣。 つまりこの町を滅ぼそうとしている者が居るという事です。」


その予想もしない答えにミノルは声が出せなかった。

魔獣は自然発生しない。それ自体は納得できた。

でも町を滅ぼそうとする?なぜ?

まだ他の町を見たわけではないが、この町には人々の笑顔がある。

苦しい時もあるだろうが、皆の顔は生気に溢れていた。

決して恨みや妬みといった感情は無かった。


そんなミノルの心情を見透かしてか、イナが話を続ける。


「今、クローシェが言うた通り、あの魔獣達は人為的に作られたものじゃ。 じゃが、恐らくこの町の者ではなかろう。」

「そうですね、この町にあれ程の怨念を持つ禍々しい存在は居ないと思います。」

「うむ。 そのような者が居ればワシかクローシェが感じ取れるからの。 残る可能性は1つ。」

「・・・町の外の者の仕業、という事ですね。」


クローシェの声にイナは強く頷く。


「うむ、そうに違いない。 そしてあれ程の魔獣を生み出せるほどの怨念を持っているという事は・・・」

「魔族、ですね。」

「そうじゃ。 魔族であれば魔獣を大量に生み出す事も出来よう。」


ミノルの脳裏にこの世界へ来る前の残酷な描写が蘇る。


「・・・許せません。 罪もない平和に暮らしている人達の生活を壊そうとするなんて。」


クローシェは悲しさと怒りで身を震わせている。

きっと魔王として何もできない不甲斐なさと、魔王として配下の行った非道への憤りを感じているのだろう。

そんなクローシェにイナが声をかける。


「お主の気持ちも分からんではないが・・・あまり気にするな。 お主が魔王になって、ミノルが神になればこんな事は起こらずに済む世界になるじゃろう。 それまでの辛抱じゃ。」


母親のように優しい声で宥めるイナ。

クローシェは少しだけ笑みを浮かべた。


「ありがとうございます、イナ様。 これも未来への教訓として心に刻んでいきますわ。」


そう言うとクローシェはイナ(実際はミノルにだが)に向けてお辞儀をする。

二人のやりとりを聞いていたミノルは複雑な気分になった。


二人の予想が正しければこの魔獣の大量発生は人為的に起きた事。

そしてその魔獣が暴走し、町へ向かってきたのもその者の仕業。

そしてそれは町の外に身を潜めている魔族。

・・・そして、本当に魔族であるのならば、この事態の首謀者はクローシェと同族という事。


「なんか・・・嫌な話だな。」

「・・・申し訳ありません、ミノル様、イナ様。 同族がこの世界に迷惑をかけてしまいまして。」


クローシェは先程よりも深く頭を下げて謝罪している。

そして頭を下げた先の床には水がポツポツと落ちている。


「じゃから気にする出ないと言うておるだろう。 今のところ犠牲も出なかったのじゃ。 後は首謀者を何とかすれば良いだけなのじゃ。」


そこでミノルは合点がいった。


「ああ!だから精霊を召喚するのか。」

「そうじゃ。 さすがに魔族を相手にするのは今のワシらではちと厳しいからのう。 じゃが、精霊なら話は別じゃ。 この地に縁のある精霊であればきっと対処も可能じゃろう。」


イナの提案にクローシェもミノルへお願いをする。


「ミノル様、これ以上同族による被害を出さない為に、私からもお願い致します。」

「クローシェちゃん・・・」


クローシェが頭を下げる。

きっと、自分を責めているのだろう。

そんな思いはしてほしくなかった。


「よし、やってみよう!」

「ミノル様!」


クローシェが嬉しそうに顔を上げる。

やはりその瞳は涙で濡れていた。

そんなクローシェをこれ以上悲しませないよう、ミノルは明るく務めた。


「よし! じゃあ早速呼び出すぞ!」

「待て待て待て!!! ここで呼び出すでない、馬鹿者が!!」


早速精霊を呼び出そうとしたミノルを慌ててイナが止める。


「こんなところで精霊を呼び出したら大騒ぎになるじゃyろうが。 町の外で呼び出すのじゃ。」

「それもそうだな、ゴメン。 じゃあ早速町の外へ行ってみよう!」

「はあ・・・全く、お主と言うやつは。 もう少し上手く出来ぬのか、不器用にも程があろう。」


ミノルの思惑を思ってイナがため息をつく。

どうやらミノルの考えている事は筒抜けらしい。


「ふふふ・・・ミノル様、ありがとうございます。 少し元気になりました。」


そしてそれはイナだけでなく、クローシェちゃんも同じだったようだ。


「ぅう・・・・・・ごめん。」


二人に見抜かれて情けないミノルは思わず謝ってしまった。

そんなミノルの様子にイナは苦笑した。


「謝るでない。 そんなところもお主の良い所じゃ。 良くも悪くも素直なところがの。 ワシはそんなお主の事を気に入っておるでな。 これからもそのままで良い。」

「はい、私もミノル様といると楽しいです。 これからも宜しくお願い致します。」


イナとクローシェに励まされたミノル。

クローシェを元気づけようと思ったのだが、逆に二人に励まされる形になって恥ずかしくなった。

そしてこの空気を変えようとミノルはイナに質問した。


「そういえばさっき精霊に関して”この地に縁のある精霊”って言ってたけど、どういう事なんだ?」


あからさまな話の切替に吹き出しそうなイナが答えた。


「ククッ・・・・・・まあ、良い。 縁のある精霊というのはじゃな。 精霊の生まれに関係があるのじゃ。」

「精霊の生まれ?」

「そうじゃ。 基本的に精霊は大精霊がその力を持って生み出すものなのじゃ。 いかな大精霊と言ってもこの世界の全てを見通す事などできないのでな。」


それはそうだろう。

神であるイナでさえきっとそんな事はできないだろう、とミノルはうなづいた。


「まあ、ワシなら出来ん事もないがの!」


・・・。

ミノルはツッコミたいのを我慢して先を促す。


「それでまあ、大精霊によって生まれる精霊じゃがの。 精霊を生成するには核を用意しなければならんのじゃ。」

「核?」

「そうじゃ。 その精霊の全てを決めるといっても過言ではない”精霊核”というものじゃ。 核となるのは何も物質だけではない。 道端の石ころから人々の噂話など、概念も核に出来るのじゃ。」


それは凄い。

それが本当ならどんな物でも核に出来るし、それを元にすればそれを基にした精霊を生成出来るということだ。


「ふむ、分かったようじゃのう。 精霊も多種多様に存在しておるのじゃ。 であるならば、この地に縁の深い精霊を呼び出す方が理に適って居る。 精霊が発揮する力は召喚者との結びつきの他にその環境や条件等も関係するしのう。」

「だからこの土地と結びつきが深い精霊ならより強力に力を発揮できる。」

「そうじゃ。 まずは町の外に行き、精霊の声に耳を傾けてみる事じゃ。 今のミノルなら精霊の声が聞こえるじゃろうしの。」


イナは説明は終わりだと言わんばかりに大きく息を吐き出し、ミノルとクローシェに外支度を促した。

町は静けさを取り戻してはいるが、冒険者たちが森を監視している。

ミノル達は見つからないよう、監視塔から最も遠い西の外れまで歩いて行った。

そして南の塀の前までくると


「神の力!」


ミノルはスキル「神の力」を発動した。


この瞬間、ミノルの千里眼が町全体を捉えた。

巡回している冒険者達の位置や目線、監視塔の者たちの意識。

それに塀を超えたその先で巡回している冒険者たちの存在。

今、この塀を飛び越えても誰にも見つからないと分かったミノルはクローシェを抱きかかえ、大きな壁を一足で飛び越えた。

飛び越えたミノルはそのまま風のような早さで森の中へ駆け込んだ。

もちろん、監視塔だけでなく外で巡回している冒険者達には気づかれずに。


「うむ、上出来じゃの。 スキルも大分体に馴染んだようじゃの。」


イナも満足気だ。


「うん、なんか魔獣たちと戦ったときより使いやすいっていうか・・・簡単になった気がする。」


ミノルもスキルの単独発動はもちろん、多重発動に関しても違和感なく行えた事を感じていた。

このままレベルアップしていけばより自然に使えるようになっていくのだろう。

頑張らなくては、とミノルは改めてそう思い直した。


「さて、次は魔族の検知じゃが・・・できるか?」


イナがミノルに尋ねる。


「やってみる。」


ミノルも自信は無いが精一杯やってみようと集中した。


「神の力!」


ミノルは改めてスキル「神の力」を発動する。


(意識を広く、万遍に・・・水のように広く、柔らかく・・・・・・・)


スキル「神の力」によって強化された千里眼を更に意識して広げていく。

範囲を広げる分、入ってくる情報の質は落ちるが魔族の存在を掴むだけなら問題ない。

そうして広げていくと遠く離れた場所で強烈な嫌悪感を感じた。


「居た!!」


ミノルが声を上げる。


「おお、でかした!! ヤツはどこじゃ!?」


イナは自分の事のように喜びつつ場所を尋ねる。

ミノルは先程感じた嫌な気配の場所を思い出す。


「ここから更に西南西へ10キロ程行ったところ。 そこに物凄い嫌な気配の存在が居た。」


ミノルが告げるとイナが大きく頷く。

クローシェも小さく拳を握り気合を入れる。


「・・・覚悟は良いか?」


イナの声にミノルとクローシェが頷く。


「では行くぞ!」


そんなイナの強い意気込みと共に号令を発する。

ミノルとクローシェは静かに、しかし強く頷きを返すと森の奥へと入っていった。


仕事が落ち着いたので書いてみました。

相変わらず書くときにその世界観とか登場人物達の様子が頭に浮かんで楽しいです。

あとは文章力をもっとつけないと・・・・・・


お暇な方はお付き合いいただけると嬉しいです。

宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ