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異世界転生は神様として!?  作者: あるとせるく
11/23

ベントの戦い

町へと魔獣達が迫ってくる中、ミノルは魔獣退治の為に町の外へ出て行った。

そして町の中では商人たちが集まって武具の解放について話し合っていたが・・・

もう日が落ちているという時間に、町は大騒ぎになっていた。


「たっ、助けてくれーーー!」

「ウチの子だけでも・・・どうか、どうか!」


ギルドホールの前は助けを求める住人達でいっぱいになっていた。


「落ち着いてください! 地下はもういっぱいなので、ギルド本部へ避難してください!」


叫ぶギルド役員。

しかし、住民達の助けを求める声の前ではもろくも消え去ってしまう。


(まずい・・・このままでは避難が・・・・・・・)


焦る役員をあざ笑うかのように時間だけが過ぎていくのだった。




「よし、・・・やっと外へ出たな。」


その頃、ミノル達は逃げ惑う人達に押し流されそうになるも、町の外へ出る事に成功した。


「凄い人でしたわね・・・私、あのままミノル様とはぐれてしまうかと思いましたわ。」

「うむ・・・魔中の群れより厄介だったかもしれんのう。」

「ははは・・・。 さて、魔獣は・・・・・・あっちか。」


ミノルは千里眼を発動し、魔獣の群れの場所を確認した。


「・・・さっきより大分近くに来ているな。」

「そうじゃのう・・・奴ら、迷いなく向かってきておる。 こんな事は珍しいのじゃが。」

「早く、退治してしまいましょう! 町に被害が出る前に!」


クローシェの言葉にミノル達は強く頷く。

その時、イナが少し緊張した声で言った。


「ミノルよ。 お主が昼頃に戦ったのは小規模な群れじゃ。 しかも奇襲に近い形での戦闘じゃった。 しかし今度のヤツらは完全に戦闘モードに入っておる魔獣の群れ。 戦闘力は桁外れじゃ。 くれぐれも気を付けるのじゃぞ。」


珍しく硬い口調のイナにミノルは礼を言う。


「分かった。 ありがとう、イナ。 油断しないで、気を付けて戦うよ。」

「うむ、ならば良い! さ、行くぞ!」


いつものイナの掛け声を号令に、俺たちは魔獣の群れが居る方へ向かっていった。




その頃、町では・・・


「なんて事をしてくれているんだ、ベントさん!!」

「落ち着いてください、町の危機なんですよ?」


ベントの号令により、町中の武具店が冒険者達に武器や防具を無償提供していた。


「むしろこんな状態だからこそ稼ぎ時じゃないのか! アンタ、俺たちの稼ぎをどうしてくれるんだ!」


ひときわ声を荒げているのはこの町でベントに次ぐ権力を持っている大商人ググルだ。


「落ち着いて下さい、ググルさん。 町が無くなったらそれこそ稼げなくなるでしょう?」


デュークがググルを宥めようとするが、よそ者は黙ってろと火に油を注いでしまう。


「大体、なんでこんなよそ者がこの場にいるんだ! 関係ないヤツはさっさと消えてくれ! これは俺たちの町の問題なんだ!」


デュークに向かって烈火の如く怒鳴りつけるググル。

そんなググルの両脇には子分のような商人立ちがニヤニヤと笑みを浮かべている。


「大方、この町の商人まとめ役を奪い取ったのも、何か裏で取引していたんだろう。 今回だって、儂らをダシにして自分一人で設けようって算段に違いない! なんて汚い男だ。」


ググルは悪意と侮蔑に満ちた言葉をベントに浴びせる。

それを聞いてもベントは何も言い返さなかった。


「そうですよ、ググルさん! そうじゃなきゃググルさんがベントなんかにゃ負けやしませんぜ! きっと裏取引をしてるんですよ!」


それまで二ヤついているだけだった子分達も何も言い返さないベントの様子に騒ぎ始めた。


「いっそ、この件でベントさんからまとめ役を渡してもらったらどうです? ググルさんの方が良いまとめ役になりやすぜ!」

「そうですぜ! あっしらもそっちの方が儲かる! どうせ冒険者達はたんまり金をため込んでるんでしょうよ! こういう時くらい還元してくれないと、ははっ。」


ググル派の商人たちが騒ぎ始める。

デュークはその言い分に腸が煮えくり返る思いだった。


「なあ、ベントや。 いっその事、こんな町滅んでしまえば良いとは思わんか。 大して特徴もない町だ。 滅んでしまって、生き残りは奴隷として富豪達に売れば儲かるぞ! 特に若い女は高値で売れる。 お前もその方が良いだろう?」


「なっ、アンタ! いい加減に・・・」


あまりのググルの言いぐさにデュークがたしなめようとした瞬間、バンッと机が大きな音共にひっくり返った。

テーブルの上にあったグラスは割れ、水と共に床に飛び散った。

皆が呆然としている中、一人だけ肩を震わせて鼻息を荒くしている男が居た。

ベントだ。


「・・・・・・」


「べ、ベント・・・いきなりどうした?」


あまりの出来事に驚きを隠せないググルがベントに話しかける。


「・・・い」


「い?」


「いい加減にせんかぁぁぁあああーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!」


ベントは今まで誰も聞いたことのない怒声を上げ、ググルを睨みつけた。


「ひいいいぃい!!」


いきなりの怒声にググルが縮みあがる。


「お主ら! 人を馬鹿にするのもいい加減にせんか!! ワシの事ならまだ我慢できるが、町が滅んでしまえばいい!? 町の人々を奴隷とする?! よくもそんな下劣な事を思いつくものだ!」


ベントはそういうと一歩、また一歩とググルの方へ歩を進める。

ググルはそんなベントの迫力に負け、椅子から転がり落ちると床を這いずってベントから遠ざかろうとする。


「愚劣極まりない! 貴様のような人間が商人を語るなど、断じて許せん!! 商人とは確かに儲けを求めるのが仕事じゃが、その心根は人の役に立つ存在でなければならん!」


「ひいっ?!」


ググルはもう壁まで追いつめられ、近づいてくるベントにガタガタ震えている。


「それなのに貴様は・・・奴隷?高値?。 儂とお主を一緒にされるなど・・・これ以上の侮蔑があろうか! いや、ない!! 貴様は商人である前に人として最低な存在なのだ!」


そしてベントは壁に追い込まれたググルの前にたどり着いた。


「・・・出ていけ。」

「・・・へ? 今なんて?」


ググルは恐怖のあまり、言葉の意味が分からず聞き返してしまった。

それが余計にベントを怒らせる結果とも知らずに。


「・・・出て行けといったのだ。 二度とこの町に入るな。」


「・・・は? いや、それは・・・・・・困る! ゆ、許してくれ! この通り、悪かった!!」


ググルはベントに土下座をする。

この町を出るという事は商会からも抜けてしまうという事。

それは即ち仕入などの商会の権限がなくなり、今までと同じ商売が出来なくなってしまうという事だ。


「なんども言わせるな・・・出ていけ。」


しかし、ググルの土下座はベントには効果がないようだった。


「そこをなんとか・・・俺たちの仲じゃないか?」


最後の希望にすがろうと情に訴えようと顔を上げ泣きそうな笑顔を向けた。

人に甘いベントだ、こうして泣きそうな顔をすれば排斥なんてされないと踏んでいた。

・・・甘かった。

ベントの怒りはとっくに臨界を超えていたのだ。


「さっさと出ていけっ!!!!!!!!」


「ひい!?」


先程よりも大きな怒声に、今更ながらググルはベントが完全に、これ以上なく怒っている事を理解した。


「べ、ベント・・・さん?」


「儂の名を呼ぶな、名が汚れる。 今すぐ町を出ていけ。 出ていかないのであれば儂自ら貴様を魔獣の餌にしてやるが・・・どうする?」


「ひ、ひいいいいぃいいいいいいいいい!!!」


ベントの殺気の籠った表情を見て完全に怯え切ったググルは逃げるように商館から出て行った。


「貴様らもだ。 二度と儂の前へ顔を出すな。」


ベントはググルに参道していた商人達をにらみつけると、その者達も慌てて逃げ出していった。


後に残されたのは呆然とする町の承認達とデュークだった。


「・・・・・・・・・・・・。」


重い沈黙が続く。

そんな時、突然ベントが床に倒れた。


「ベントさん!!」

デュークが近寄る。

デュークに抱きかかえられたベントは真っ青な顔をしていた。


「大丈夫か、ベントさん!」


他の商人たちも駆け寄ってベントの顔を覗き込む。


「は、ははは・・・少し、眩暈がしまして。 大丈夫です。 今更、足が震えちゃいまして、いやはや情けない。」


ベントはいつもの穏やかな笑顔を浮かべる。

そんなベントの様子にその場に居たものは全員吹き出してしまった。


「そりゃこっちのセリフだよ、ベントさん! あんたが怖すぎて俺まで足が震えて居たんだからな!」

「違いねぇ。 あんなベントさん初めて見たもんな!」

「いや~、しかしスッキリしたねぇ! よく言ってくれたベントさん!!」

「おう! やっぱり、町の商人の代表はアンタしか務まらんね!」

「俺は一生アンタに付いていくぜ、ベントさん!」


町の商人達は口々にベントの行動を褒め称えた。

そしてそれはデュークも同じ気持ちだったらしい。


「俺もそう思うぜ、ベントさん。 俺はアンタがこの町の商人代表で本当に嬉しく思う。 アンタは誰よりも立派な商人だ。 心から尊敬すると共に、アンタみたいな商人が居る事を同じ承認として誇りに思う。」

「ははは・・・皆さん、そんな恥ずかしいですよ。 皆さんには恥ずかしいところを見せてしまい申し訳ない。」


そんなベントの返答に一同は更に笑いあうのだった。


こうして町の武具店は冒険者達だけでなく、衛兵等も含め一斉に無償提供を行い、ググル一派は町から出ていく事になったのだった。

また、商館の会議室を避難先として解放する事になり、町の人々の避難が大きく進む事になった。


投稿が遅くなってしまいました。

ですが、必ず次の話も投稿するので気長にお待ちください。

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