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ニゲタイ

空気が変わった。


広場を抜けて木々に囲まれた狭い道路に足を踏み入れた瞬間、すぐに気づいた。

街灯が一つもない暗闇が眼前に広がり、まるでぽっかりと口を開けて新たちを待ち構えているかのようだった。

本来昼間は散歩スポットとなっているこの道路は、奥まで行くと道が開け、小さな遊具や休憩できるガゼボが一つあり、その奥にはひっそりと寂れた公衆電話が鎮座している。


子どもの時に一度だけ来たことがあるが、母親と一緒だったのでその時は特に何も思うことはなかったのだが、今夜は違った。


(ヤバイ)


今すぐ回れ右で帰りたい。

濃密な夜闇の空気の中、身体中をナニカの視線がねっとりと這っているのがわかる。


「零、怖ぁい」


無邪気に零の腕に絡み付いている島中の能天気さが羨ましい。

いや、視えない無知故か。


「結構雰囲気あるね」

「うん、さすがに怖い。というか不気味」


携帯の明かりを頼りに、石田と中村が進みながらそう言うと、後ろで村田が大きな声で笑った。


「いや、なんもねぇじゃん! ただ暗いだけ、怖くもねぇしつまんねぇわ!」

「まあ、怖くはないけどさ、なんか寒くねぇか?」


土と木の匂いと共に、ヒンヤリとした空気が混ざる。

先程まで汗をかいていた箱爪も、鳥肌を立てていた。


それでも皆、この異様な雰囲気をさほど気にしてはいないようだった。


「ねぇ、関原くん」

「えっ!」


いつの間にか後ろに移動してきた中村に声をかけられ、思わず驚く。

なるべく目立たぬように息も気配も消すようにしていたので、突然の声がけに敏感に反応してしまった。

前にいた村田がその反応を揶揄してきたが、中村に早く行ってと追い払われていた。


近くに寄ってきた中村が、新の耳元に唇を寄せる。


「さっきはありがとね」

「え?」

「禎丞のこと。庇ってくれたでしょ」


顔を覗きこむようにして言われ、そんな場合ではないのにドキドキとしてしまう。シャンプーの香りがほんのり鼻先を擽り、思わず目を泳がせてしまった。


「関原くんがあんなにハッキリ否定するなんて初めてみた。……カッコよかったよ」


悪戯っこのように微笑まれ、新は誤魔化すように苦笑いを浮かべながら頬を掻いた。


(ホント良いコだよな。よし、なんかあったら中村さんだけは守ろう)


ほんの少しだけ和やかな雰囲気に包まれたが、暫くして島中の顔色が悪くなる。


「ねぇ、この道ってこんな長かった?」

「確かに、変だな」


少しだけ強張った表情で石田が呟く。

その一言で皆の空気が固くなる。

少しずつ、皆がこの異常な雰囲気に呑まれつつあった。


「禎丞、大丈夫?」


ふと、岡崎の様子に気づいた中村がその腕に触れた。

先程から一度も発言していない岡崎が、その瞬間初めて口を開いた。


「鈴の音がした」

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