表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

インベストゲイトサポートシステム(Investigation Support Systems)

 署に残った藤田は、捜査支援のためのアプリケーションソフトを構築する作業を始めた。機捜の報告書は状況証拠から早急な結論を仄めかしているが、無いよりはましなのでそれをもとに捜査のフローチャートを作る。できるだけ状況の変化に対応できなくてはならないから、みるみる複雑な樹状構造物が出来上がった。最後にそれぞれの結論を評価したものを加える。グェンがひと作業終えてキーを叩くと、端末の画面に彼の作ったシステムを図示したものが表示された。


 表面上は性格診断なとで使うチャートにも似ている。最初の設問が書き込まれたボックスから出発してイエス/ノーで別のボックスへ分岐していき、ボックスを最後まで辿ると自分の性格やら恋人との相性がわかるというアレだ。ただし、ここでの設問は捜査上のチェック項目である。あとはそれをプリントアウトしてみんなに配ればいいのだが、これはあくまで概念図であって、藤田の作った複雑なシステムそのものではない。

 実体はSM(サブモジュール)の集合体であり、生きている。つまり、チャート図上のボックスはそれぞれ独立したプログラムなのである。新しい情報が加われば、SM群体は自己を再構築して、評価変数を更新する。それに伴いチャート図もダイナミックに変化する。ボックスの順序が変わり、ボックスが表す設問自体も変化する。しかも現場の捜査員が入力する情報以外にも、プログラム自身がネットワークを通じて収集する情報も加わるので、チャート図は常に変化し続けている。与えられた情報が結論群すべてを駆逐するようなものなら、それを評価するサブシステムがあるルーチン(計算過程)に引数を渡して眠っていたモジュール群を呼び出し、ある程度「革新的なチャート」を自分で考えだすから高位のAI(人工知能)といえなくないこともない。


 県警は高い金を出してこのソフトウェアを購入し、本部のメインフレーム(中央計算機)に組み込んだが、ネットのシステム管理者がマイナーチェンジを怠ったために、しばらくは藤田のようなユーザーには扱いが難しすぎて手が届かず、警察内のコンピュータ貴族、ウィザード達だけのおもちゃだった。ま、人的資源は無駄遣いしていないとしても、予算はあまり効率よく使ってないかもしれない。




 午前中いっぱいかかって、藤田はシステムを組み上げた。マニュアルは頭に入っているから、システムを組むこと自体は単純なキーパンチでしかない。プロパティ(特性定義域)に必要な情報を入力していくだけだ。ただ、こいつは組んだ後の運用にやたら気をつかう。テクは繊細だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ