第16話:咄嗟に。
小さく。本当に小さな音で、紡がれた言葉。
それを聞いた瞬間、気づいたら身体が勝手に動いていて。座ったままのムーンを包み込むように抱き締めていた。
「……っ違う、違うよ。そんなわけない。それに、ムーンはいらないコなんかじゃないよ」
「──…ッ!!」
咄嗟に口から出た言葉。この言葉に嘘はない。
けど、それ以上に
ムーンのしょんぼりと項垂れたその姿は、その声は。
すぐにでも消えてしまいそうで。
放っておけなかった。
ぴくりと震えて、少し強張るムーンの身体。
大丈夫、大丈夫だよって
落ち着かせるように。優しく 優しく、背中を叩いては語りかけた。
「大丈夫、私がいる。私がずっと、ずっとムーンの傍にいるから。だから…そんなこと 言わないで──…」
だって、だって そうだよ。
細いカラダで、泥だらけになって、弱ってて。
前足には怪我もあって…。
「───…。」
今はまだ、詳しいことは分からないけれど。きっと。
色々と、大変な思いをしてきたんだろう……。だから
───『私がいる。』
今の私にできること。どうにかしてあげたい一心で。こんな私なんかでも、守ってあげられたらと思って。
ムーンの心が、少しでも和らぐように。
助けになれたらって、優しく語りかけた、のだが…。
「………。」
「………、、」
「………………。」
「………………っっ、」
───どう…なんだろうか。返事ない。……というか私、でしゃばり過ぎた?咄嗟に出ちゃった言葉だったけど……もしかして、ムーンもムーンなりに不審がってるとか!?え、どうしよう。怪しかったかな。えっ、えッ!?どうしよ。どうしよう!不審(?)がってないよね?怖がってないよね??大丈夫なんだよね!??
内心、自分の言動に動揺しながらも
あやす手は休めずに、ムーンの返事を待った。




