第15話:思案
*****
「──…えーと つまり、ムーンは私にお礼がしたいなぁとか、もっと一緒に居たいなぁって思ってたら」
「こうなっていた」
らしい。どういうコトなんだ…。
なんだかんだあったあと、少し落ち着きを取り戻した私。あれからムーンには服を着てもらい…というか私の服では着られるものが無かったので、とりあえず家にある大きめの毛布に包まってもらうことにした。
けれどムーンからしてみれば
『おれのを見といて、なんでそんなに照れるんだ?』
と確認したときのことを恥ずかしげもなく言ってきたので、あのときはもう赤面通り越して物凄くヤバい顔になっていたと思う。で、無理やり、というか強引に毛布を投げつけた。
そして今はリビングで話を聞いている最中で──。
そもそも猫から人間になるって、ありえるのか?
でも現にそうなってるし……。
ソファーに座って悶々と考え込んでいると、何かを感じとったのか。隣にいたムーンは不安そうな顔をすると
「……やっぱり、迷惑だったか…?急に、こうなっちまって…」
と、私の様子を窺いながら、弱々しい声でそう言ってきた。
その声と表情に、胸がきゅうっと痛くなる。
「──…ぁ、っと……えっとね、」
まぁ実際、急に人間になって現れたことに戸惑いはあるんだけれど…。
ムーン本人だってどうしてこうなったのかをよく理解していないことを察すると、私だけが不安なわけじゃないんだよな、って思えて。
「───ん〜…」
当初言おうとしていた言葉は告げずに、かわりにこれからどうすれば良いものかと考えた。
……最初は驚いたし、訳分かんなくて怖いから『出て行け』って言おうとしたけど…なんだかそれだと、ムーンが可哀想だよなぁ…。仮に追い出したとしても、外に出て周りの人達がパニックになっても困るし。怪我だってまだ治ってないし…。それになにより──…
脳裏に浮かぶのは、昨夜のムーンのあの姿。
そこからいろいろなことを連想させて
……今よりももっと、ボロボロの姿になってしまうかもしれない。それ以上に、傷だらけの姿にでもなってしまったら…?ムーンを危険な目に遭わせてしまうかもしれないことのほうが……嫌だ──。
そうやって人差し指を顎に当てて黙々と考えていると数秒の間の後に
ひゅ。と震える音が聞こえて。
それに気づいて目をやると、暗く寂しそうな雰囲気を漂わせたムーンが俯いていた。
「………ムーン??」
どうしたのだろう?と、今度はこちらが窺うように
そっと顔を覗いてみると
「!」
眉間に皺を寄せて
端整な顔を、辛そうに歪めていた。
そして、消え入りそうな声で
「───おれってやっぱ…いらねぇコ?また、独りになるのか…?」




