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第1話:出逢い
各話ごとが短いので、さくさく読めると思います。
満月の夜、9時頃。仕事からの帰り道。
最寄り駅から数分歩いた道ばたに、1匹の猫がいた。
ふらふらとどこか覚束無い足どりに、心配になって声をかける。
「おーい、ねこ〜。こんばんはー…って」
薄暗い街灯のなか、くるりと振り返った猫の姿を見てみると、泥だらけで前足を怪我しているようだった。
「ちょ、大丈夫!?」
心做しか弱々しく震える細いカラダに、汚れと傷とが相まって、ひどく痛々しくみえて──。
「ど、どうしよう……でもッ」
初めての出来事にあたふたする。
けど、このままこのコを放っておくわけにもいかず…
なんとかしなければ、と
慣れない手つきで猫を抱えると
そのまま家へと走りだした。