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2合目、約1秒から2秒の間のことだ。
イクスは剣を左にやや傾け相手へ間合いを詰め始めた。ウインデも間合いを詰める。
ウインデは放つ瞬間、気がついた。
内心、しまったと思っていた。
がら空きの胴、身構えた瞬間に誘われたのだ。
ウインデの腕が上がり、イクスは素早く身を屈んで走り抜き、胴当てにかかる。
ギリギリのタイミングでウインデは身をよじり、
野球打ちより打ち上げる態勢で無理やり当てる。
ウインデはなんとか耐えきり、火花が飛ぶ。
イクスは横から抜けて走り抜けずに、半身でウインデの背中から胴を払う"失礼剣"を放つ。その時の所作は半身で相手に背中を向け、相手を見ない。まさに失礼。
ウインデは背中に切っ先を出す。
マサカリを振り上げたようなポーズ、五十肩の年齢ではできないだろう。
失礼剣は力がかかりにくいため、なんとか受けきれた。
すでにイクスは押している。
手数が多いのは剣士と剣聖の経験差ではあるが、
剣士の感は強い。
これで3合目。
2人は振り返りながら距離をあける。