第3話「だれだ?」
〇明日・大学の廊下
ゼミ前の廊下を歩く秀我&洋太。
洋太「改めて思うのだけど、どのような人間をデータ化して、どのような人間を現実世界に残すべきだろうか。考えないとだね」
秀我「悪人・危険人物。社会に適応できない人間……。だが、管理者には相当の責任を背負うぜ?」
洋太「それでも僕はやるさ。僕は上手い事管理してみせる」
秀我「おっ? 電脳世界に行きたいんじゃなかったのか?」
洋太「気が変わった。確かにデータになれば、この辛い現実社会から解放される」
洋太「(真剣な面持ち)だけど、現実世界の人間に好き勝手されるデメリットもある」
洋太「(冷徹な瞳で)僕は管理される側より管理する側になりたい……」
秀我「(軽く鼻息吹いて)へへ。そう来たか」
洋太「(両眼を閉じ、悟ったように)選ばれる側より、選ぶ側の方が優位だからね……。上の立場になれることに越したことはないよ」
洋太、獣の様に荒れる。
洋太「(激昂)僕はもううんざりなんだ! 他人の評価に怯えるのが! 選ばれない・選ばれるで一喜一憂しなくちゃいけない立場が!」
〇洋太のイメージ
暗黒の空間に舞い散る(破られた)履歴書の数々。
洋太(声)「数年後の就活なんて、想像するだけで胃痛になるよ」
複数の会社ビルから弾き飛ばされるスーツ姿の洋太。
洋太(声)「一体何枚もの履歴書を無駄にするのだろう? 僕は何社の企業に否定されるのだろう? とね」
〇ゼミ枚の廊下
洋太、顔を上げ、凛とした表情に。
洋太「(真摯な顔)今まではそうせざるを得なかった。でも、今は違う。そうだろう?」
秀我「へへ。そこに気付くとは賢いじゃねぇか」
秀我、洋太の肩に手をガシッと置く。
秀我「やろうぜ。俺様たちが未来の。いや、真の支配者で管理者だ」
その時、ちょっとギャル風の女子大生・鳥居菜々美が走って来て、秀我たちの前に顔を出す。
菜々美「あのー。ちょーっといいッスかー?」
2人は菜々美の方に反応。見やる。
秀我「ん? 誰だ?」
洋太「昨日のヤリサーの奴ではないみたいだけど……」
菜々美「昨日あたしさぁ、見ちゃったんだよね~。あんたらがテニスサークルの奴らを召喚したところ」
秀我と洋太、身構える。
秀我「(不敵に笑んで)けっ。見られていたか……」
洋太「(渋い顔)参ったなぁ。誰もいないと思ったのだけど」
秀我「(気丈に)へっ。見たからって何だって言うんだ?」
菜々美、人差し指を自分の顎に当て、小悪魔めいた笑みを浮かべ、
菜々美「……おもしろい。そう思ったんッスよねぇ~」
身構えたままの秀我たち。
秀我・洋太「?」