あるーひ、もりのなかー
数日後、菜々美と洋太の2人は万全の準備で出向いた。
中枢ユニットが発見されたとある森へと。
秀我が示した発見場所へとまずは足を運んでみる2人。
「こーんな偏狭な場所で見つけるなんて信じらんないッスねぇ」
「そうだね」
洋太は菜々美の顔も見ず、淡泊にそう応答した。
「にしても、なーんで秀我さんはこんな所に足を運んだのだろう?」
「それについては、この前聞いたんだけど、このあたりに失踪事件があったからなんだって」
「失踪事件? そういやあったっけ。4~5人の青年が消えたままっていう……」
「そう。未だに発見されていない失踪事件さ。これについて、秀我くんはある推論を立てた。一つは集団自殺。しかし、死体が発見されていない以上、自殺とは断言出来ない。だとしたら、もう2つの可能性が高いと踏んだ」
「2つ?」
長い髪を揺らし、菜々美は登山しながら首をかしげる。
「1つは拉致・監禁。もう一つは別世界のゲートが発生し、その別世界へと移動した」
「別世界って……。いやいや、そんな深夜アニメみたいな展開」
菜々美は苦笑するが、洋太は真剣な面持ちで話を続ける。
「そう痛くもなるだろうね。でも、拉致説だとしたら、ないんだ。さらった人間を閉じ込める車の痕跡がね。警察も不可解に思ったそうだよ」
「あ! そりゃあ確かに変ッスね」
「そう。つまりは特定の場所で脈絡もなく消えた。だから、別世界へと転移した説があながちでっち上げでもないってことになるんだ」
「なるへそー」
「だから、秀我くんは別世界へと移動する技術。すなわち、オーバーテクノロジーのヒントがあると睨んでここへと足を運んだそうだよ」
「はぁ。そーいうことだったんッスねぇ~」
「彼は突飛だけど、根拠ゼロなことはしないってことだろうさ……」
洋太、地図を見て、次に真正面を見る。
「……そろそろ目的地のようだ」
果たして、目指す先には何があるのか? それとも、何もないのか?




