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プロローグ

 この世界は、人が思うよりも多くの不思議で満ちている。


 例えば都市伝説。例えば怪談。例えば昔話や口伝。


 それらの中には根も葉もない事実無根なものも多いが、中には真実だって混ざっている。


 ただ、これら不思議の多くは、噂として語られることもなく、ひっそりと人々の生活の中に溶け込んでいる。不思議を体現する者たちの多くは、人間社会との和を何よりも尊ぶからだ。いたずらに人心を乱さないよう、自らの存在や正体を隠しながら日々の生活を営んでいるのだ。


 そして、ここ九重町(ここのえちょう)にも一つの不思議がある。


 町の中心、ここのえ商店街から細い路地に入り、迷路のような小路を抜けた先に、その店はひっそりと建っている。『神田堂(かんだどう)』という、何の変哲もない屋号を抱えて……。


 立地からか、はたまた不思議な力が働いているのか、その店を訪れる人はいない。訪れるのは、店と同じく不思議を体現する者たちのみ。


 おかげで店を外から眺めれば、まるで時の流れから取り残されたかのよう、という印象を受けるだろう。


 だが、ひとたびその扉を開けば、待っているのは何とも賑やかな連中だ。


 猿の坊さんが「よう、久しぶりじゃねえか」と気さくに出迎え、ぬいぐるみのような猫が「な~お」と足にじゃれつく。

 その間に、文学青年風の優男が「菜乃華(なのか)さーん、お客さんですよーっ!」と奥に向かって呼びかける。


 すると、店の奥から中学生くらいに見える可愛らしい少女と、眉目秀麗な神主風の青年が顔を出すのだ。

 青年と連れ立って現れた少女は、お客を目にするなり、満面の笑顔でこう言うだろう。


「ようこそ、神田堂へ! 今日はどうされましたか?」


 これは、本の付喪神を癒す力を持った少女と付喪神たちが織り成す、『神田堂』という名の絆の物語――。


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