表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第五章 問題児達の王国祭
98/112

95 編入初日 side-フェルクディ

「本当に、勇者さんも付いてくるんです?」

「ええ、貴女が他の生徒に怪我でも負わせたら洒落にならないでしょう? 貴女の父君にも頼まれましたし」

「うっ、それは……そうですね……」


 今日はイトラース王立学園の始業日。

 わたくしめ、フェルクディ・ハルジバルの編入初日でもあります。


「でも、大丈夫なんですかねえ。生徒の半分は男ですよ?」

「仕方ないですよ、父より申し付けられた大事な任務ですから。わたくしめがお淑やかに学園に通うことで魔族のイメージアップを図るのです」

「俺からしたら人選ミスにしか見えないですけどね――ほらっ、また殺気放った……!」

「……すいません、会話が続いたものですから」

「限界早くないですか!?」

「やっぱり、いけないですよね。かしこまりました、勇者さんとの会話、頑張って続けてみます」

「なんか、俺のメンタルにダメージ来る物言いですよね」


 知らず知らず勇者さんを傷つけてしまっていたみたいですね。

 これは駄目な感じです。こんなでは、他の生徒の方々と接するのも至難といえるでしょう。

 これは多国間交流のための留学。お互いの理解を深めるためのものなのです。先日の『邪神』討伐で魔族への悪感情が緩和されているであろう今こそ必要なことだったりするわけです。


「じゃあ、まず手始めに勇者さん、タメ口でいいですよ。これからは同級生になっちゃうわけですから、呼び方も自由にどうぞ」

「あ、そうです――そうだな。周りにも、それなりに親しく見せる必要があるし」

「ですです」


 ふぅ、結構話しました。

 そのせいでわなわなと良くないものがこみ上げてくるような気持ち悪い感覚が。

 癒やしが欲しいですね。


「ユミちゃんに会いに行っちゃいますか」

「アカリなら一般校舎の方に居るはずだぞ。こっちは貴族校舎だから」

「なるほど。面倒ですし、影を使って行くとしましょう」


 特殊ユニークスキル【暗影操奏】で影に潜り、スイスイっと移動する。

 校舎の何処に居るのか分からずに多少彷徨っちゃいましたが、ようやくユミちゃんを発見しました。


 机にうつ伏せになって、完全に眠ってますね。

 あの体勢ではお顔が見えないので残念です。


「あいつすげーな。よくあんな堂々と眠りこけるわ」

「隙だらけなのもまた愛らしいです」

「フェルクディってやっぱアカリ狙いなのか?」

「おっと、呼び捨てですか」

「嫌ならやめるけど」

「いえ、自由にと言っちゃったのはわたくしめですし、構いませんが。急に呼ばれるとビビりますね」


 ユミちゃんで和んでいなければ危ないところでした。


「それで、ユミちゃん狙いと言うのは……その通りですかね、はい」

「ふぅん、あいつモテんのなー」

「なんでかユミちゃんからは男が放つ邪気を感じないんです。見た目もそうですけど、心も中性的なんですよきっと」

「なんか分かるわ。精神年齢低いからかな?」

「そうなんです?」

「ああ、馬鹿とかそういうんじゃないんだけどな」


 それはちょっと意外です。わたくしめはユミちゃんを子供っぽく感じたりしてなかったので。


「ところで、モテるということは、他にも?」

「あー、そうなぁ……」


 勇者さんは言葉を濁したけど、これは何人かライバルが居る感じですね。

 例えば、寝てるユミちゃんの様子をちょくちょく見ている隣の席の赤髪の子。可愛らしい子ですね。結構好みですよ。是非とも仲良くなっちゃいたいです。

 何度か会ったことがあるけど、話したことはほぼ無いんですよね。どうやらユミちゃんと同居してるらしいです。でも、お見合いしたことから分かるとおり、ユミちゃんに恋人は居ないからデキてるわけではないはずです。


「うっ……」

「どうした?」

「男性と接しすぎて眩暈が……」

「いろんな意味で重症だな。そろそろ授業が始まるし戻るとするか」



=====



 授業と言っても、今日は始業式があった後に二学期の予定の説明などで、教科書を開いてのお勉強は明日からのようです。

 編入生のわたくしめと勇者さんは簡単に挨拶をしたあと普通に席に着き、他の生徒と混じって教師の話を聞く。


 そして休み時間に入ると、勇者さんは生徒に囲まれた。

 わたくしめは遠巻きに見られるだけ。……男に近寄られないのは助かりますが、これはちょっと先が遠そうです。今まで魔族は島に篭もってたから、仕方ないんですけどね。


「同じクラスなのね」


 そんな異端のわたくしめに声を掛けてきたのは……おお、この国のお姫様じゃないですか。

 スーロメルトちゃんですね。グッドな女の子ですから、ばっちり把握済みですよ。


「スーロちゃんって呼んでもいいです?」

「ええ、構わないわよ」

「ふっふふー、スーロちゃんとクラスメイトなんて光栄ですっ。お近づきのしるしに耳触ってもいいです? 獣人族の毛並みは素晴らしいと聞いたことがあり、気になってたんですよね」

「結構ぐいぐい来るのね……。少しなら触ってもいいけど、敏感だからあまり弄らないでね」


 やった。ブロンドお姫様獣人耳のお触り許可!

 気が変わらないうちに早速、指先に全神経を集中させてタッチ。


 ――さわっ、ふにっ。


「ん……」


 ピクッとして声を出さないように堪えたスーロちゃんのキュートさにクラッときそうです。

 鼻血、出てないですよね? 流石に初日から流血沙汰は勘弁です。


 獣人耳を堪能した後お礼を言っていると、スーロちゃんとの会話で警戒が薄れたのか、他の生徒もちらほらと声を掛けてくるようになりました。男女共々。

 打ち解けるきっかけをくれたスーロちゃんには感謝ですが、これはなかなかしんどい。


「あ、そういえば知っていますか? うちの学園の問題児の話」

「フェルクディさんは今日初めて登校したのに知ってるわけないでしょ。あれでしょ? 授業中いつも居眠りしてて欠席も多い一般生」

「そうそう。でも凄いんですよ彼。あんな受講態度なのに学年トップの成績で、魔法実技ではいつも魔力結晶を大量に出しているんですって」

「魔力結晶なんて学園でも数人しか出せないのに」


 ふむふむ、そんなスーパーマンが居るのですか。

 でも、居眠りばっかりなんてユミちゃんみたいです。


「私、実技で何度か見かけたことがあるのですけど、彼の結晶、とても綺麗な羽根の形をしているんですよ」


 あ、それユミちゃんです。

 そうですか……ユミちゃん、問題児扱いされちゃってるんですね。


 と、そろそろ休み時間が終わるようです。

 一人が席に戻ったのを皮切りに、皆さんも席に戻っていきます。集団心理ってやつなんですかね、これ。


 授業より疲れる休み時間という社交場を乗り越えたわたくしめは、ひと息ついて疲労感を取り払い、真面目に授業に取り組みます。といっても、やっぱり予定を聞かせる程度のものでしたが。

 明日は実力テストで、もう暫くしたら王国祭準備……。お祭りですか、結構、面白そうなこともありそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ