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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第四章 神域開放
87/112

84 轢運

「ごめんねアカリー、いろいろバレちゃって」

「いいよ、そこまで必死に隠していたわけでもないしね」


 家に戻り、買ってきた夕食を皆で食べた後に一息ついていると、ユユがしょんぼりしながら謝ってきた。


「それに、話すことで得られたものがあった」

「ん? 信頼とか?」

「いや、そんな良いものじゃないさ」


 俺の秘密を話して、どういう反応をされるのか。受け入れてくれるのか。それを確かめることができた。

 過去に『転生者』が存在したというのも収穫だったな。


 最近、リティに俺の事情を話すかどうか考えていた。しかし、どう反応されるのか分からなくて尻込みしていた。

 今回、なし崩し的に秘密を話すことになったけど、反応を試してみるにはちょうどよかった。


 驚いていたようだけど、それだけだったな。


「それにしても今日は疲れたな。俺はもう部屋に戻ることにするよ」

「おつかれー」


 ユユに見送られて部屋に戻る。ああ、フィールは風呂に行ったよ。


 自室のベッドで横になる。

 まだ寝るには早いから、最近サボっていたいつものをやろうと思う。スキルの熟練度上げ。



=====



名前 アカリ・ユミツキ

LV 19

種族 人族

年齢 0

性別 男

【スキル】

状態魔法4

空間魔法4

範囲魔法3

瞳の魔眼4

火魔法2

水魔法2

結晶術2

【加護】

死神の誘い

空間神の加護

空間神の寵愛

死神の加護

【称号】

転生者

祝福されし者

死を招く者



 【瞳の魔眼】のレベルが上がった。

 相変わらず特殊ユニークスキルのレベル上がるの早いよな。


 というわけで、新能力。

 視線支配。他者の視界を視ているときに視線を俺の意思で動かせるようになった。前まではその人の眼の動きで視ていた。視界を盗み見ることを視界ジャックとか呼んだりもしていたが、これで本格的に乗っ取りだな。


 視界強奪なんかと比べると地味に見えるが、視線支配の条件は対象の視界と同調していること。視界を盗み見ることは対象を見るだけで発動できる。つまり、視線支配も見るだけで発動できる。視界強奪と違って目を合わせる必要がないわけだ。


 これ、遠距離でも簡単に発動できるんだよな。


 スキルの熟練度上げでいつもやっている視界を転々と飛ばす行為だけど、スキルレベルが上がることでだいぶ進化した。

 人から人へ覗く視界を移すだけでなく、壁に視界設置をして、固定した場所から観察したり、視界支配を眼のピントをズラす程度に発動して一部を注視したりできるようになった。


 たまに怪しげな人物を見かけて、そいつに視界を移して様子を見ることがある。そいつが犯罪とかした場合、今までは、まあいいかとスルーすることが多かった。

 だけど視界支配があれば簡単に妨害ができる。


 都合よく、今日も犯罪者を見つけた。

 早速犯罪者目線になる。


 残念ながら、この人は既に犯罪を犯し終わった後だ。高い建物に設置した視界で少女を切り刻んだ殺人現場を目撃して、逃走中の殺人犯に視界を移した。

 殺人犯は走って逃走中だ。……走ると危ないですよっと。


――【瞳の魔眼】視界支配。


 曲がり角を曲がる直前に視線を下へ向けさせる。人間、急な視界の変化に対応できないものだ。前を向いていたのに、眼が勝手に真下を向いて、戻らない。そりゃあコケる。

 転倒して勢い良く飛び出した犯罪者は、馬車の通り道に転がってしまった。そして目の前には運悪く馬車が来ておりグシャリ。


 俺がやったという証拠は何一つ残らない。これぞ完全犯罪だろう。

 ……いや、わざとじゃないんだ。別に殺すつもりはなかった。というか、視界を乗っ取るだけで死ぬとは思ってなかった。


 あー、いや、まだ死んだと決まったわけではない。車輪で視界がいっぱいになって、同調が途切れただけだ。

 何カ所かに設置してある視界のうち、高い場所で先ほどの現場が見える媒体に視界を移す。


 ……即死のようですね。

 馬車って重いし、馬の引く力は強い。しかも車輪は硬い。頭轢かれたら、普通に死ぬよな。

 それにしても、死ぬ瞬間の視界なんて、嫌なもの見てしまった。妙に見慣れた感じがするのが悲しいところだ。轢かれた経験の多いこと多いこと。


 『死を招く者』ってのは、間違っていないのかもな。馬車に乗っていた人、本当にごめんなさい。



=====



「アカリ、今朝は早い」

「あー、今日は、用事があって……」

「用事?」

「んん……あれ? なんだっけ……?」

「お見合いよ」


 寝ぼけていると、フィールから答えが返ってきた。


「そうだ、そう、それ」


 今日はお見合い当日。

 王さまに任せっきりにしていたら開始が午前中になってしまっていた。眠いからというだけで断るわけにもいかず、頑張って起きた。いや、フィールに起こしてもらった。

 ちなみに、お見合いの話を聞いてからあまり日は経っていない。いつでもいいと言ったらすぐにやることになった。


 もそもそと朝食を食べる。

 朝食はリティ担当だ。俺は朝ぎりぎりまで寝ているからね。


「え、お見合い……? 誰と?」

「えっと、この国の公爵」

「アカリ、結婚、するの?」

「いや、断るよ?」


 相手、男だし。


「そう……ごちそうさま」


 断ると聞いて興味を失ったのか、リティは朝食を食べ終わると、さっさと食器を片付けて部屋に戻っていった。

 俺も急いで食べないと、時間が怪しくなってきたな。


 俺とフィールも朝食を食べ終わったら、食器を片付けて部屋に戻る。

 そして【状態魔法】で性別を女に変える。


「服は私が選んであげる」


 お見合いに適した服装なんて分からないから、正直助かる。

 俺のクローゼットには結構な数の女物が入っている。以前、ゼネ様に貰ったものだ。お陰様で女物の所持数が男物より多い。

 フィールが選んだ服を着て、準備ができたら家を出る。目的地は貴族街にある旅館。


「そのペースだと、遅刻するわよ?」

「やばい、眠い……」


 夏休みは長い。それももうすぐ終わるけど、まだ夏休みは続いている。

 夏休み中、俺は午前中を寝て過ごしていた。別に昼夜逆転していたわけではない。寝る時間が倍近くになっていたのだ。半日を寝て過ごしている。

 まあ、普段から午前中は起きてるのか寝ているのか分からないような状態だったから仕方がない。


 そんな生活をしていたせいで、久しぶりの午前中からの活動は辛い。

 トロトロ歩く俺を、フィールが後ろからぐいぐい押してくる。


「馬車、馬車に乗ろう」

「もう少し歩かないと無いわよ」

「……そういえば、なんでフィールも来てるわけ?」

「親族役は必要でしょ?」


 そういえばそうか。

 流石にそんなこと王さまに頼むわけにもいかないし、ユユは寝ている。となるとフィールが妥当か。


「あ、ユミちゃん見つけた!」

「ん? あーフェルクかー……」


 目の前に、フェルクディが現れた。どうやら俺を探していたようだ。


「あれ、なんでそんなにトロンとしちゃってるんですか? ちょっと興奮します」

「アカリの朝はこんな感じよ」

「へぇ、それは良いことを聞いたです」

「それで、フェルクはどうかしたの?」

「ユミちゃんに縁談を持ち掛けるヤローをとっちめ……るのはアレですけど、せめて様子くらいは見ておきたいと思ったんです」


 フェルクも付いて来るってことか。まあ、特に問題もないし、別にいいかな。

 それはそうと、懐中時計を確認すると、いよいよ走らないと間に合わなくなってきた。


「もしかして、時間ヤバかったりしますか?」

「走らないと、遅刻かなぁ?」

「それならわたくしめに任せちゃってください。影を渡ればすぐですよ」


 おお、馬車より便利な救世主だったか。

 早速お願いすると、フェルクの影に飲み込まれ、フェルク自身も建物の影に潜った。


「あっ、行き先ってどこです?」


 フェルクはひょこっと影から顔を出して訊いてくる。影の中は不思議な感覚で、息ができるし辺りを見ることもできるけど、喋ることができなかった。

 俺も顔だけ出して、行き先を告げる。……生首二つが話しているみたいで、なかなかシュールな光景だと思う。

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