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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第四章 神域開放
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82 縁談

 王さまへの報告から数日。

 再び王城に呼び出された。


「ん? 俺は呼ばれてないぞ。お前個人に話があるんじゃないか?」


 当然のように館で寛いでいたダイキに訊いても、何の用事か知らないようだった。

 手紙には一人で来いとも書かれていないけど、用件が分からないからな……。


「またお城行くの? 今準備するねっ」

「私はいつでも平気よ」


 ああ、そう。付いてくるのね。


「俺も暇だし付いて行くかな」

「結局皆で行くのか。それならリティも誘おうかな」


 リティは最近工房に籠もっている。最近っていうかいつもだけど。

 早速工房に向かい、声を掛ける。


「今、手、離せない」


 鉄を熱しているところだった。

 まあ、皆行くから誘っただけで、リティも来ないといけないわけではないから仕方ないか。


「準備できたよー!」

「それじゃあリティ、行ってくるね」

「うん」


 ユユに呼ばれて、工房を出た。

 ……最近、リティと距離を感じる。いや、ユユ達がいつも居るから話す機会が減っただけかな? どちらにしろ、リティが以前より無口になった。

 リティは二人のときは普通に話すけど、人数が増えると口数が減るんだよな。最低限しか喋らないから、周りが喋ってるときは全然喋らなくなる。


 このまま距離が離れてしまうのはキツイ。何とかしないと。


 まあ、今は王さまの呼び出しだ。

 四人で家を出て、王城に向かう。フィールが歩いて向かうのを嫌ったため、街道用の馬車に乗って行く。


 何事もなく王城に到着して、応対室に案内された。


「何の用事だろうねー」

「予め教えないってことは、厄介事かもしれないわ。アカリくん、私が睨みを利かせておくわね」

「フィールが睨んでも怖くないし」


 そんな会話をしていると、王さまが部屋に入ってきた。今回はゼネガスト王子(女装)と姫さまも同行している。

 扉が開くと同時にフィールが後ろから抱きつくように、俺の首に腕を回してきた。俺はソファに座っていたから、背もたれ越しに。

 これが睨みを利かせていることになるのだろうか? 挨拶をするために立とうとしていたのに、出鼻を挫かれてしまった。


「アカリ君、よく来てくれた」

「……座ったままですいません」

「なに、そのくらい気にしなくてもいい」


 寛大な精神で許してもらった。

 全員が腰掛けてお茶が配られたところで、本題に入る。


「実は、ユミツキ名誉伯爵に対して幾つか話が来ていてな」


 ユミツキ名誉伯爵……俺の女バージョンの肩書きだ。

 アカリ・ユミツキ名誉伯爵。強力な治癒の特殊ユニークスキルで王城が襲撃された際に多くの貴族を癒やしたことや王さまの呪いを解いたことなどが功績として認められて貰った称号だ。

 名誉貴族は、一代限りの貴族。この世界では、強力な特殊ユニークスキル使いは一騎当千の力を持っているから、そういった人物を囲い込むために用意されている爵位だ。特殊ユニークスキルは遺伝しないからね。


 それでも伯爵は高い位なんだけど、治癒で多くの貴族に恩を売ったから批判はそんなにないらしい。

 そんな名誉伯爵様に話とは。


「あ、治癒の依頼ですか?」


 そういえば自称治癒士もここ最近活動していないな。


「それもあるのだがな……今回は、これだ」


 テーブルの上に幾つかの冊子が置かれる。

 促されて中身を見ると、男性の写真が。


「えっ……と?」

「ユミツキ名誉伯爵に縁談の申し入れが来ている。宛先が分からないからと私のもとにな……」

「あの、王さま……? 俺一応男なんですけど……」

「……最初は断っていたのだ。しかし、上位貴族から、王族が独占しようとしているのではと勘ぐられてな……」

「断っていいですか?」

「ああ、アカリ君は名誉とはいえ伯爵だからな。殆どは一方的に断ってくれて問題ない。ただ、これだけは話だけでも聞いてほしい」


 そう言って、王さまはお見合い写真のうちの一つを手に取った。

 わぁ、イケメン。……で?


「この人物は公爵家の息子でな。アカリ君より上位の貴族からの申し入れになる」

「会わずに断るのは難しいってことですか……」

「私もまさか、公爵家が名誉貴族に縁談を持ちかけるとは思わなくてな……」


 まあでも、逆に言えばこの人以外は会わずに断ってもいいわけだ。それならそこまで対処してくれた王さまに感謝するべきだよな。


「……ところで、ゼネ様と姫さまはどうして此処に?」

「それは勿論、アカリ君がお見合いするって聞いてね」

「その、気になって……」


 ただの野次馬だった。


「相手が男じゃ話にならないって」

「それなら、もし女からだったらどうするの?」

「ん……? どうしようか?」

「私に訊かれても」


 まあ、相手によるんじゃないかな?


「ダメ! アカリにはまだ早いのっ!」


 俺が女とお見合いすることは、ユユに却下された。

 そうか、まだ早いのか……そうなのか?


「でも、アカリ君くらいの年頃なら相手を探し始めてもいい頃じゃない?」

「んー……まだ百年は早い」

「それだとアカリが死んじゃうわよ!?」


 ……死なないんだなぁ。

 思わず、そっと目を逸らした。ユユも価値観の違いでも思い出したのか、ちょっと気まずそうに目を泳がせている。

 背後から、くすりと笑う声が聞こえた。


「あれ……?」


 俺達の反応に違和感を覚えたのか、姫さまが不安そうにこっちを見てくる。

 ……これって、隠した方がいいのかな? でも、不老なのはいつかバレるし、隠す必要性もあまり感じない。それに最近は、秘密主義なのもどうかと考えていた。


 ――いや、待て。最近は精神制御をしているせいで判断ミスが多い。普通の人とは違う。これだけで人間は疎遠になってしまうものだ。


「アカリくんはぁ、あなた達とは違うの。そっちの尺度で考えないでね」


 フィール!? お前は何でそう、俺が考えていることと真逆のことをするんだ!

 それに言い方が嫌みったらしい。これを肯定するのは、俺の交友関係を傷付けることになる。


「こいつのことは気にしなくて良いですから」

「えー」


 フィールは文句を付けるように俺に体重を掛けてきた。顔が近いけど、ここは無視。

 ユユがムスッとした顔でこっちを見ている。この場でフィールとやり合うつもりはないようで、見ているだけだ。


「……その子とアカリって、どういう関係?」

「あ、私も気になっていたのよね。似ているところがあるから、もしかして兄妹とかかしら?」

「だってよ、おにいちゃん」

「違うから……」


 ……あ、否定しないでそれで通せばよかった。わざとらしく呼んでくるから、反射的に否定してしまった。


「アカリはフィールより、私とお似合いだからっ!」


 ユユ……それだと、ちょっと意味が違うかな。

 というか、全員の相手をしていたら骨が折れる。ダイキ、多少は事情を知ってるんだからフォロー頼む!

 アイコンタクトを送ると、ちょっと無関係を装っていたダイキは面倒くさそうな顔をした。


「四面楚歌ってやつだな」


 こいつ、他人事だと思って……!

 それでも必死にアイコンタクトを送り続けると、ダイキは何かを言おうとして、口を閉じた。そのとき、ダイキがちらりと王さまを見た。


 ……あ、【真贋鑑定】。王さまは宝剣の能力で嘘を見抜けるから、下手なことが言えないのか。


「……フィールとは、ちょっと複雑な関係なんだ」


 はぐらかすことにした。


「そうよ。一緒にお風呂に入ったりするくらいね」

「「「――っ!?」」」


 余計なこと言うなよ!

 否定しようにも、一応は事実だから嘘はつけない。


「ア、アカリ!? 本当にゃ――なの!?」

「…………一回だけ」

「お前ら本当にどういう関係なんだよ!?」


 不干渉だったダイキまで向こう側に行ってしまった。味方だと思っていたのに。

 ああもう、収集付かなくなってきた。

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