81 それぞれの処遇
ダイキがイトラースに帰ってきてから程なくして、王さまから呼び出しを受けた。
俺は当然王城に向かうけど、ユユとフィールはどうするか。ちなみにリティは当事者だから同行決定。
「もちろん一緒に行くよっ」
「私も」
「4人で行ってもいいのかなあ?」
「大丈夫よ。もし駄目なら暴れるから」
フィールが物騒なことを言っている。それ、国が滅ぶからやめてくれ。
置いていってまた機嫌悪くされても面倒だな。
「付いて来てもいいけど、大人しくしててね」
というわけで、皆で王城に出発。
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あ、エルフ。
王城に入り、案内を受けていると嫌な姿が目に入った。
金髪に翠玉の瞳、細身の長身。そして長耳。どこからどう見ても典型的なエルフの男性だ。
状態維持、状態維持。
関わらないようにしたいと思っていたが、向こうも俺達に気付き、どうやらエルフの森で会ったことがあるようで声を掛けてきた。
「やあこれはこれは、アカリ殿にリティ殿じゃないですか。先日はお世話になりました。あ、俺のこと分からないですよね、失礼しました。俺は勇者様方とダークエルフとの戦闘にご一緒した一人で、ハーメック・ルーンと言います。どうぞよろしく」
「あ、ああ。よろしく」
思った以上に気さくだった。
その後、一言二言交わして彼とは別れた。あまりにもあっさりしていて、ちょっと拍子抜けした。リティのことで警戒した俺が馬鹿みたいに感じてしまう。
まあ、あれがエルフの森から出向してきたエルフだというならいざこざも無く済みそうだ。
案内された応対室では、王さま、宰相、ダイキ、フェルクディが待っていた。他にも何人か知らない人も居る。
王さまを待たせていても良かったのかな……。
それからはエルフの森調査の報告が始まった。ちなみに、ユユとフィールのことは俺が面倒見ている子だと言ったらお守りをしているとでも思ってくれたのかスルーしてくれた。
「まさか、アカリ君までエルフの森に行っていたとは思わなかったぞ」
「ダイキが呼ぶと転移できるようにしていたので」
「なるほど、転移か……。アカリ君、もしかしてとは思っていたが【空間魔法】を持っているのか?」
【空間魔法】は存在は知られているが取得出来た人が居ない伝説レベルのスキルだ。恐らく、遠い過去に持っていた人が居た程度で、通常取得できない特殊スキルなのだろう。もしかしたら『空間神』の加護を持っていないと使えないスキルなのかもしれない。
【空間魔法】を隠すつもりはない。
今はユユが居るから、そのうち隠しきれなくなるだろうしね。
「持ってますよ」
だから王さまの質問に肯定すると、周りから動揺のようなうなり声が聞こえてきた。まあ、そりゃ驚くか。
あんまりそれで期待されても困るし、ちょっと控え目にしておこうかな。
「と言っても、俺ではそんなに扱えないですよ。魔力消費がかなり激しくて、結構使い勝手悪いんです」
これを十全に扱える神様が、俺の隣に居るけどね。
王さまは取り敢えず納得してくれて、それ以上俺へ突っ込んだ質問をしてくることはなかった。
調査隊の隊長だったらしき人が報告して、気になったところや意見を聞きたいときにダイキや俺達に質問をする。
調査隊の当初の目的は、エルフの敵対意思の確認とダークエルフの調査、場合によってはその対処だった。
エルフはダークエルフの行動とは無関係で、ダークエルフの結界攻略にも協力してくれた。彼らにイトラースと敵対する意思は全くないらしい。
ダークエルフは種族全体が敵だ。種族のトップが国を攻める意思があり、それに周りも賛同していた。
しかし、ダークエルフという種族全体を裁くには、今回の騒動には厄介な存在が絡んでいる。
『邪神』
神に片足を踏み入れた存在。
国では、神を裁くことはできない。たとえそれが半端者だったとしてもだ。
そして神に従っただけとも言えるダークエルフ達も、有罪だと裁くのは所々問題が出てしまう。
「魔族のときは、世界に与えた被害も大きくなっちゃってましたから、『邪神』だった魔王が倒れたとしても魔族の印象は最悪で、爪弾きにされて種族ごと島流しになりました。けれど今回は、イトラースとエルフの里に被害を与えたけど、すぐに対処できたお陰で種族を排斥するほどの悪行と言えるかは微妙ですねぇ」
フェルクディによると、『邪神』騒動の過去の事例である悪しき魔王と比べても、今回のダークエルフはそこまでのことはしていないようだ。
「ふむ、かと言ってお咎め無しというわけにも行かないだろう。そこはエルフの里の者と話し合って決める必要がありそうだな」
この場にはエルフの里の人は居ない。エルフの森調査隊の報告には、ダークエルフだけでなくエルフに対する報告も含まれているのだから当然だ。
まあ、エルフには敵対意思はなく、友好的だったと報告するだけだったけど。
ダークエルフの処遇の次に問題となったのは、『邪神』を打ち倒した他の神様の存在だ。……要はディーロ先輩のことなんだけど。
神様がイトラースに滞在していることが判明した。これは、国の上層部が大いに頭を悩ませる問題だった。
過去に、神様を怒らせて滅んだ国が存在する。そりゃあビビるだろうな。
「アカリ君、どうやら君には交流があるようだが……」
「はい、ディーロ先輩とは仲良くさせてもらっています」
「その、ディーロという神は、学園に通っているのだったな……どのような人物なのだ?」
ディーロ先輩が学園に居るというのは俺が教えたことではない。ダイキ達が帰還したときに先に行った簡易的な報告を受けて、調査した結果だ。それが第1回目だとして、今しているのは第2回目の報告会となる。主観が混じらないように複数人交えるため、俺とかの意見も聞くため、王さまが直接聞くため。報告を数回行う理由はいろいろある。国にはめんどくさい仕組みがいっぱいだ。
「普通に、いろいろ相談に乗ってくれる優しい先輩ですよ」
「国に危害を加える可能性は考えられるだろうか?」
「こっちから何かしなければ大丈夫だと思います。まあ、あの人一回国を滅ぼしてるんで、危害を加えてどうなるかは知りませんけど」
「――は?」
呆けたような声は、誰のものだっただろうか。
「いやいやいや! おいアカリ! あの神様そんなにヤバいやつだったのか!?」
「うーん、でも、滅んだと言っても施政者が全員殺されて国が成り立たなくなったって話だし、被害は控え目な方だったんじゃないかな?」
「それだと、私達は死んでいるな……」
あ、王さま……。
見れば、ここに居る人族の殆どが冷や汗を掻いている。皆施政者だからか。
でも、俺は何もただ恐がらせたくてディーロ先輩の武勇伝を伝えたわけではない。王さまが何かやらかすとは思えないけど、きちんと釘を打っておこうと思ったからだ。それに、ちゃんと伝えておかないと、手を出してからそんなこと知りませんでしたでは遅いからね。
「普段は穏和な性格ですので、何もしなければ大丈夫ですよ」
「……どの道、我々には神をどうすることもできん。その言葉を信じるしかないか……」
イトラースは、国としてはディーロ先輩を放っておくことになりそうだ。俺が何か言わなくてもそうなりそうではあったけどね。




