80 遊戯
フィールが拗ねた。
まあ、突然家に強制送還して、その後用事が終わっても帰らずに遊んでいたから無理もない。
ちなみに、その間フィールは不貞寝していたらしい。
「私が楽しくなることしましょ」
「んー、じゃあ、何すれば楽しい?」
「そうねぇ……ユユちゃんちょっと」
フィールは少し考えると、ユユと内緒話を始めた。
ユユはうんうんと頷きながら話を聞いた後、何かを召喚した。大きな紙を畳んだもの?
広げると、それは色の付いた丸が等間隔で配置された大きな水玉模様だった。
「ツイスターゲームやるんだってっ」
「へえ、初めてやるな」
ルールとかよく知らないけど、普通のパーティーゲームみたいだし変なものじゃなさそうでよかった。
これでフィールの機嫌が直るなら安いものだろう。
ルールを確認して、早速3人でやってみることになった。
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「アカリ、お客さん」
「うっす、帰ってきたぞ……って、アカリだよな。何やってんだ?」
3人でもつれ合っていたら、ダイキを連れたリティが部屋に入ってきた。
「見ての通りだけど」
「あ、アカリくん、今止めたら負けだからね」
「おっとと……。ダイキ、これ終わるまで待っててくれ」
ユユが【空間魔法】でルーレットを回し、ゲーム再開。
何度か順番が回り、結果、フィールの負け。これでフィールの7連敗となる。
「また負けた……」
「お待たせ」
「相変わらず変なことやってんな。今日はなんで子供姿なんだ?」
「ああ、身長差が悪いとか言われたからハンデでな……」
ツイスターゲームをやってみたはいいが、思いのほかフィールが弱かった。
ユユの体が柔らかかったのと、フィールがひらひらした動きづらい服を着ていたのが敗因だが、ご機嫌取りで始めたゲームで負け続けたフィールの機嫌は、当然ながら良くならなかった。
さらには負けず嫌いにも俺に負けたのは身長のせいだと言われ、【状態魔法】でフィールと同じ身長まで肉体年齢を下げることになったというわけだ。
それでも負けたフィール。
「なるほどな……。取り敢えず、ちょっとこっち来い」
何故かダイキに廊下まで連れ出された。
「何?」
「お前と一緒にいた2人、ステータス見えないんだけどどうなってんだ……!」
「あー」
これまでダイキのスキルでステータスが分からなかったのは、邪神とディーロ先輩のみ。
まあ、そりゃビビるよな。
「まさかとは思うが……」
「うん。神様」
「おおぉ……あっ、俺用事思い出したから今日はこの辺で」
「逃げるな逃げるな」
「神様2柱なんて手に負えん!」
「2人とも俺に加護くれた神様だから大丈夫だって。ダイキもあるでしょ?」
「お、おお。そういうことなら……お前の加護って『空間神』と『死神』だろ! 物騒過ぎんだろ!」
騒ぎ立てるダイキをどうにかして宥める。
にしても、ダイキでもこんな大騒ぎするのか。同じ神様のディーロ先輩も嫌がっていたし、あんまり人に言わない方がよさそうだな。
「いつの間にかお前の加護増えてるし、少し見ない間に何してんだよ……」
「ちょっと神域に行ってた。それより、俺が居なくなった後のことを聞きたいんだけど」
「ちょっとじゃ済まないよなそれ。ああ、俺もアカリに訊きたいことがある。……アカリ達が帰った後に原因不明の水災が発生したんだが……お前だろ」
「…………さぁ?」
「はぁ、やっぱお前か……」
「何故分かった」
エルフへの仕返しは誰にも言わずにバレないようにこっそりと、派手にやったのに。
「お前のスキルならできるし、やる動機もあったからな。【範囲魔法】は魔力量を無視して魔法を撃てるだろ。それに、リティちゃんが貶されたときのお前、結構顔に出てたぞ」
そこまで酷い顔はしていなかったと思うけど、それに気付ける程度にはダイキは俺のことを理解していたようだ。
結構、読まれてたんだな。考えもそうだけど、詳しく教えていないスキルもしっかり把握されている。
「まあ、ダイキならバレてもいいか。他の人には内緒にしといて」
「しょうがねえなぁ。でも、俺だって巻き込まれたんだから文句くらいは言わせてもらうぞ」
「う、それは悪かったよ」
あれくらいなら驚く程度だろうと思って。反省はしている。
それから、いつまでも2人きりで話し続けるわけにもいかないため、一旦話を区切って部屋に戻ることにした。ダイキはまだ嫌そうな顔をしていたが、部屋に入ったときにはもう表情には出ていなかった。
部屋の中では、リティ、ユユ、フィールの3人がテーブルを囲む椅子に座って待機していた。
リティはただ座っている。ユユはこっちを見て、待たされたことに少し不満そうな顔をした。フィールはまだいじけているのかテーブルに突っ伏している。
……この3人、同居しているのに全く話さないよな。もしかして仲悪い? フィールはまあ、あれだけど。
何となく、居心地が悪そうな空間だった。
ダイキと初対面のユユとフィールは簡単に名乗り、ダイキがエルフの森での出来事を話し始めた。
ダークエルフの反乱の事後処理は、イトラースと魔族の国ハルジバルの上層部の意見も伺わないといけないため、多くのことはまだ保留になっているようだ。
しかし、主犯格であり拘束してもなお危険だと認定された者は既に処刑されたらしい。結界使いと【代償魔法】の呪術師は死んだ。
「俺らはあくまで調査隊だからな。ある程度落ち着いたから情報を持ち帰ってきたというわけだ。それと、事後処理の話し合いのために何人か、エルフの森のエルフも連れてきている。お偉いさんだし、アカリは特に気を付けろよ?」
「なるべく会わないようにするよ」
会うとイラッとするかもしれないからな。
「その方がいいだろうな。あと、アカリも後で呼ばれるから。お前まだ報告してないだろ?」
「あー、ダイキが来る前に報告していいのか分からなかったから」
半端な情報では変に混乱させてしまうかもしれないし。
「俺はさっき報告を済ませてきた。アカリ達のことは、話さないわけにもいかなかったからな」
「まあ、隠してもいないし、大勢に見られているからなぁ」
「マズそうな部分は、今のうちに言い訳考えておけよ」
「……結構、マズいことしてたかな」
エルフの森での行動を一度、振り返ってみることにした。
まず、ダイキの懐中時計を使っての【空間魔法】による転移。
転移はその後何度も人前で使っている。でも、転移自体は以前から隠していなかったし、別にいいか。
よって、転移での結界渡りも問題なし。
次に【裂離の魔眼】を破った視界媒体の眼球設置。
これはあまり人には見られていないはずだ。しかし、邪神相手に使ったときには人の目を気にする余裕はなかった。何人かは見ていただろう。
「ああ、それなら俺も見たし、他にも見ていたやつがいたから報告されているぞ」
「俺のスキルだってことは?」
「あの目玉、俺の懐中時計にも付けてただろ? それも見ていた人がいるからまずバレてるだろうな」
これは……やってしまったな。眼球設置は一番隠したかったかもしれない。隠し玉である【瞳の魔眼】によるものだし、俺が設置した眼球を見られたら、それが俺のものだと分かってしまう。
まあ、眼球設置は使っている間何故か目が赤くなるし、バレやすいものだったから仕方ないか。
あとは、【範囲魔法】はメインで使ってるから隠していないし、【結晶術】はレアスキルだけど特殊スキルじゃないから隠す必要もないな。
「こんなとこかな」
「俺が気になったことはまだあるぞ。森ごと結界を切り裂いたあの攻撃はなんだ」
空間切断か。
人前でも使ってるけど、思えば範囲指定無しで使ったのは初めてだった。というか、使うと魔力切れになるから普段は使えない。
「【空間魔法】だよ。使い勝手はあんまり良くないけど、威力はある」
「空間……なるほど、だからあの結界も斬れたのか」
同じ空間系だからな。いや、系統とか知らないけど。
「効果は単純な威力特化だし、隠さなくても大丈夫かな」
「俺の雷撃でも壊れなかった結界を破ったんだ。相当だぞ……。まあいい、後はアレだ。邪神の攻撃を凌ぎきった青い帯」
ユユが助けてくれたあれか。
「あれも【空間魔法】だな」
「【空間魔法】ってそんなにヤバいスキルだったのか……」
「いや、あれはユユが助けてくれたからだから俺じゃできないよ」
「それ、なんて説明すればいいんだろうな」
「……しら、切らない?」
「もうそれでいいか……お前、特殊スキル多いからどれがどのスキルによるものか分かり難いし」
単純に戦闘で使用したスキルを細かく訊いてきたりはしないと思う。スキル構成は個人情報。エルフの森にどうやって行き来したかだけ説明できればどうとでもなるだろ。




