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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第四章 神域開放
78/112

75 観光

「リティ……ウトレレの治安って……」

「悪く、なかったと思う」


 過去形&感覚的。

 そうなるのも無理はない。最初の店を出てから少し経ったけど、その間に道端で絡まれたのが3回、喧嘩に遭遇したのが2回、衛兵が出動するのを見かけたのが1回だ。この短時間でこれだけの出来事があったということから考えて、少なくともこの地域の治安は非常に荒れている。

 ちなみに絡まれたときは【結晶術】で羽の刃を作って脅すことで撃退した。脅すだけならリティも何か言ったりすることはない。


「ふむふむ、きっとこの町で何かが起こっているねっ!」

「つまり、私の出番ね?」

「いやいや、私の出番だよ」


 ユユとフィールが謎のやる気を見せている。

 神様たちは気まぐれだ。行動に一貫性が無いからいつも唐突に感じる。


「出番って、何するつもり?」

「もちろん、事件の闇を暴いて解決してみせるのっ!」

「あー、うん。言ってることは格好いいと思うよ」


 そして、格好いいことが言いたいだけというのも伝わってきた。


「アカリはどうするの?」

「今回は興味が湧かないなぁ」

「ええー……」


 今のところちょっと騒動が多いだけだからな。正直どうでもいい。


「そう言われると、私も興味が無くなってきたかも……」

「ふぅん? 私は一人でも遊んでくるね。さっきのお店で欲求不満になっちゃったから」


 フィールは一人でも騒動に首を突っ込むようだ。

 じゃあフィールとは別行動か。あんまりやらかさないように釘を刺しておこうかな。


「ふふっ、見ててねアカリくん。明日には街が平和になってるから」

「あ、待ってフィール! 私も格好いいとこ見せるんだからっ!」


 犬猿神様コンビは一緒に走り去ってしまった。もしかしてホントは仲良い?

 そして見ててとか見せるとか言われても、もう見えない……。


「……じゃあ、二人で観光しようか」

「うん」


 あの神様たちは心配するだけ無駄だな。きっと俺より強いだろうし。

 さて、リティに観光名所でも案内してもらおう。


 それからリティが最初に赴いたのはこちら。

 ……鍛冶屋。


 うん、老舗っぽくて趣がある。でもきっと観光名所じゃない。

 あ、でもリティは楽しそうだ。普段あまり表情に変化がないリティだけど、一緒に生活しているお陰である程度の感情の変化は読めるようになっている。


 俺は特に鍛えられた武器を見て面白いとは感じないけど、楽しんでいるリティと一緒にいるのは楽しい。

 けどリティ、集中してるときは殆ど口を開かないんだよな。リティは斧を手に取って眺めていて、俺は手持ち無沙汰だ。


 暇になると興味が無かったものでも意識が向いてくる。何となく視界に入った剣を手に取ってみた。

 ん……? 刃が無い? いや、一応付いているか。でもなんだか切れ味が悪そうな剣だな。


 その剣は銀色の剣身の割に光を一切反射しない、鋭利な切れ味が想像できない剣だった。

 だから軽い疑問と好奇心でその刃に指先を当ててみた。軽く当てても斬れないな……。安物なのか?


 そのまま指を動かし、剣の刃を撫でた俺は馬鹿だったんだろう。全く摩擦を感じない感触にしまったと感じたときにはもう、指からドロドロと血が流れていた。

 慌てて【状態魔法】を発動。状態復元で傷を修復。


「……アカリ」

「!? …………何もしてないよ?」

「血」


 足元を指で示されて地面を見ると、指から流れた血が残っていた。

 はい、ごめんなさい。馬鹿しました。【水魔法】で血の掃除をした後は、再び武器を眺める雰囲気ではなくなって店を出た。


 移動中、リティが物凄くこっちを見てくる。


「……悪かったって」

「アカリ、目を離すと怪我する」

「いや、さっきのはついうっかりしただけだから」

「なら、いつも、うっかりしてる」


 ぐぅ、ここへ来ていよいよ俺の信頼が地に落ちてしまった。前々から寝ぼけて2階から身投げとかしてたからなぁ。

 最近いろいろと気を付けていたのに。フィールのせいで感覚が狂った。


「ま、まあそれよりさ、この辺に観光名所とか無いの?」

「ん……ウトレレは、商業が盛ん。商業ギルドの本部があって、その建物が大きい」

「へえ、近いなら見に行こうか」

「歩いて行ける」


 リティの道案内で商業ギルドの本部へと向かう。

 おお、進めば進むほど辺りが賑わっていく。商業ギルドを中心に栄えているようだ。商業ギルドの本部を見学したらこの辺をぶらついても良さそうだな。


 程なくして商業ギルド本部へ到着。

 その建物は本当に大きい。これだけ大きいと威圧感が出そうなものだけど、多くの人が常に出入りしていて、開けられた複数ある入り口の付近では商品が売り出されているために庶民的な雰囲気がある。


 本当にいろいろ売っている。何か役に立つものや面白いものでも売ってないかな。


「お、リティ見て見て。魚が生きたまま売ってる。こんなのまで扱ってるんだね」

「売りに来る人、ばらばらだから」

「なるほど。あ、魔道具のアクセサリーだって。何か良い物あるかな」


 なになに? 少しだけ魔力を流すと針が出る指輪。毒が仕込める。……いきなり物騒だな。

 温度によって七色に変化するブレスレット。……これ、魔道具じゃなくても見たことあるな。前世で。

 耐毒効果のあるピアス。おお、有用。このピアスでどれくらい耐えられるか分からないし、そもそも俺に毒は効かないけど。


 ふむ、取り敢えず針が出る指輪を購入。


「それ、どうするの?」

「普通に着けるけど? 血で魔法陣描くとき使えそうだし」


 本来は暗器として他者に使うんだろうけど、ちょっと血を出したいときに便利そうなんだよね。魔法陣を描くときに血を使うと魔力を流す行程を省くことができる。血液は体の一部として同じ魔力を含んでいるためだ。暫くすると消えるけど。


「アカリ……怪我しないようにして」

「でもこれ、いざというときにはあった方がいいと思うし」

「……うっかり、しないでよ」


 俺が誤って怪我するのを心配してるのか。そこまで心配してたら俺、帯剣すらできなくなるんだけど。

 その後も露天形式の店を冷やかして楽しむ。商業ギルドの中では流石に暴力沙汰に遭遇することもなく、穏やかに時間が進む。


 おっと、ユユから【空間魔法】の念話が送られてきた。


『アカリアカリっ、悪の組織、制圧完了だよっ』

「もう潰したのか。ていうか本当にそんな組織あったんだな」

『それがね、別の町から流れてきたのと元から居たのが争ってピリピリしてたみたい。それならいっそ、両方懲らしめようってフィールと別々の組織を手分けしたの』


 え、結局フィールと別行動したのか。フィールのやつ、変に騒ぎを大きくしてなきゃいいけど。


『あれ……? フィールが相手してる筈のがこっちに来た。それもいっぱい。……あれ? あれ、あっフィール! 裏切られた!?』


 ……。

 ユユが制圧したのが組織A、フィールが制圧担当したのが組織Bとしよう。

 ユユが組織Aを制圧してるときにフィールは組織Bを配下に置き、それを引き連れてユユを襲いに来た。

 大人数を巻き込んで、神様同士が争おうとしているわけだ。


 ……大事だな。


「ユユ、今から向かうから。場所はどこ?」

『えーとね……』


 あっちとかそっちとか曖昧な説明を受けてから『コネクト』を切った。

 ……ユユには悪いけど、土地勘のない場所でそんな説明じゃさっぱり分からなかった。ユユも初めての場所だからしょうがないんだろうけど。


「アカリ、どうしたの?」

「ははは、ちょっとフィールを叱らなくちゃいけなくてね……」


 【瞳の魔眼】を発動して視界を転々と飛ばし、ユユを探す。……見つけた。

 今回、同じ方角に視界を移していき、見つからなかったら他の方角へと繰り返すことで大まかな道のりを把握した。適当に探したら見つけても結局道のりが分からなくなるからな。


 フィールを見つけたらまず叱ろう。どういうつもりか知らないけど、ユユを襲うなんて。

 気合いを入れて拳を握ると、握力だけでなく魔力まで篭もったのか魔力結晶の羽根が生まれた。白と黒の両方だ。

 それと同時に指輪に魔力が流れ、針が飛び出てきた。手の外側だけに飛び出るから刺さることはなかったけど、それを見たリティにやっぱり危ないからと指輪を没収されてしまった。うっかり誤作動させた俺に、拒否権は無かった。

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