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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第四章 神域開放
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69 跳躍

 『勇者』の召喚陣には夜に行こうと考えていたが、場所の確認もしていないし、余裕を持って日にちは明日にしようと考えていた。少し前までは。


 ……眠れない。

 時間に余裕を与えると、今度は心に余裕がなくなってくる。何か行動していないとモヤモヤする。


「あー、もういいや。予定変更」


 服を着替え直し、忍び足でリティの家から出る。……人の家でコソコソしてると悪いことをしている気分になるな。

 深夜の町を歩く。この辺りは日中に営業する店ばかりだから、今は閑散としている。暗いけど、それは魔眼の視力補正で問題ない。


 目がいいお陰で、割と遠くまで見えるものだから、町の外壁の門が閉じていることにも早めに気が付いた。

 門限あったのか……。完全に失念していた。


「見張りはちゃんと居るし……」


 門は駄目だ。別の手段を考えよう。


「といっても、やることと言ったら空間転移くらいなんだけどね」


 なんとなく、人に聞かせるような独り言。

 ……いつもユユが聞いてたからなぁ。


 外壁の近くまで来た。見張りの兵も、流石に町を囲う外壁全体を見張っているわけではない。門以外はせいぜい見回り程度だろう。

 俺は、鞄からある物を取り出した。最近新しく用意した小道具、転移の魔法陣を描いた円盤だ。

 これをフリスビーのようにして投げれば、簡単に転移先を用意できる。


「しかしこうして見ると、外壁って結構高いのね。届くかな?」


 試しに円盤を上に投げてみる。

 ……あ、駄目だこれ。フリスビーの飛距離じゃ全然届かない。


 新兵器、役に立たず。


 外壁越えるのって難しいんだな。町を守っているだけのことはある。

 外壁をどうにかするより、見張りをどうにかする方が簡単そうだ。門へと戻る。


 見張りの兵の視線の先に、視界設置。媒体の眼球と目が合ったら視界干渉。俺のことを視認できなくする。

 眼球とはばっちり目が合ったわけだが、まあ、一瞬だったし見間違いってことで勝手に納得するだろう。実際、見張りの兵もきょろきょろしたり目を擦るだけで、人を呼ぶことはなかった。


 さてと、この閉じた門をどうするか。


 取り敢えず近づいてみると、門の扉に小さな扉があることに気が付いた。ここからなら出られそうだ。

 鍵が掛かっていたので、見張りの兵の腰からくすねる。更に視界干渉で門の異常も視認できないようにした。


 鍵を開けて、鍵を元の場所に返して、町を出た。


 ……あれ? なんでこんなことまでしてるんだ?

 普通に犯罪じゃね? 明日出直せばいい話だったのに。


 はぁ、冷静じゃないのかな。

 まあいいや。無事成功したことだし、今更気にしても仕方ない。


 えっと……ここから西へまっすぐ行けば着くかな? 取り敢えず、平原にたどり着けば大丈夫だろう。

 ここまで来て行き当たりばったりになってきたが、それでもここまでは来たんだ。行けるとこまで行こう。



=====



「着いた……?」


 辺りが平原になってから更に暫く歩いて、それらしい遺跡にたどり着いた。

 あちこち崩れているが、不思議とボロい印象は感じない。明かりのあるときなら神秘的に思えたかもしれない。

 適当な場所から中に入る。


 ……召喚陣、どこだ?


「――『ランプ』」


 ここへ来て初めて明かりを用意。この暗さなら流石に誰も居ないだろう。

 掌の上に火の玉を浮かせて奥へと進む。


 遺跡は思ったほど大きくなかった。

 崩れている場所が多く、実際に中へ入ると空間が少ない。そんなわけで魔法陣はすぐに見つかった。


「よし、やるか」


 まずは魔法陣の把握。

 資料(ディーロ先輩作)を見ながら、魔法陣の内容を頭に入れる。


 ……問題なく使えそうだな。


 次に、良い感じの杖で魔法陣を書き足していく。杖は店で買った高級品で、魔力の伝導効率が違うらしい。

 リティの細剣で十分だと思っていたけど、大きな魔法陣を剣先で描くのは結構大変だった。ペンの一番後ろを持って字を書く感じ。空中に範囲を引く分にはそれで十分なんだけどね。


 あ、その辺にある柱も魔法陣に組み込まれているのか……。これは時間掛かるな。



=====



 一度気分転換に外へ出たら、ちょうど朝日が射し込み始めたところだった。

 う、眩しい……。


「朝食は無しか……」


 持ってきてないし。転移で帰るのも魔力が勿体ない。

 でもまあ、何とか完成した。休憩を終えたら早速、神域への扉を開く。


 それにしても久し振りにユユに会えるな。毎日顔を合わせていたのに、この世界へ来てからは声だけだった。そう考えると段々楽しみになってきた。

 よし、気分も盛り上がってきたし、そろそろ戻ろう。


 召喚陣のある部屋に戻り、点検を済ませたら起動準備に取りかかる。取り敢えず、魔法陣に少しでも接するために靴を脱いでおく。

 既に魔力は流してある。これから行うのは【結晶術】だ。


 魔力結晶にはその人の性質が現れる。例えば、カルテは雪の結晶で、氷系統に特化した性質が形となっている。

 俺の魔力結晶は、白い羽根。それを穴の開いた羽毛布団のように普段からバサバサ振りまいている。


 羽根ってどんな性質なのか前から疑問に思っていたけど、最近になって分かったことがある。

 俺の魔力は、ユユの影響を強く受けている。加護を二つも貰っているのは、結構異常なことらしいというのも最近知った。


 俺と羽根の関係性から考えると分からなかったが、ユユと羽根の組み合わせなら幾つか思い当たるものがある。

 空間を司る、世界すらも越える力。この羽根は俺にとって、空間を渡るためのものなのかもしれない。


「――『コネクト』」


 神域との空間を接続。

 羽根は意識すると、魔法陣から溢れ出し、辺りを覆い尽くして真っ白な道を作り出した。


 ……世界を羽ばたくイメージだったのにこれだよ。なんか違くね? それ、羽根の役割じゃないだろ。


 でも、一応成功している。ちゃんと空間が繋がった。

 この羽根の先には、別の空間が続いている。


「今から会いに行くよ、ユユ」


 羽根を踏んで、羽根のトンネルの中に入る。

 奥へ進み……長いな、この道。

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