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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第四章 神域開放
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65 代替わりの話

「ディーロ先輩の力って、時間を戻したりできるんですか?」


 今日はディーロ先輩がお料理教室ではなく、単純に遊びに家に来ていた。

 折角だからと思い、考えていたことを訊いてみる。


「そうだねぇ、それに期待しても良いこと無いから言っておくけど、僕にそんな力は無いよ」

「じゃあ、どこまでのことが出来るんですか?」

「どこまでって言うか、僕が神として行使できる力は一つしかないね」


 一つ?

 一つの分野、概念を司る神なのに?


「それは、時間を司るとか、幅広い一つで?」

「そんな偏屈なことは言わないって。僕の使える力はただ一つ、『時を動かす能力』さ」

「……早く動かすとか?」

「いや、ただ動かすだけ」

「どういうこと?」


 それ能力ですら無くね?

 もともと動いてるんだけど。


「凄い能力があると考えるからそうなるんだよ。こう考えてみて。神は何かしら、世界を運営する為の役割を持っているんだと」

「先輩の場合だと、時を動かす役割って、ああ!」


 『時を動かす能力』って言うより、『時を動かすのが仕事』な神様なのか。


「そう考えると凄いですね。今時間が動いているのはディーロ先輩のお陰だと」

「この世界に限るけどね。まあ別に、僕がちょっとくらいサボっても大丈夫なんだよね」

「多少は自動で動くんですか?」

「いや、止まるね。だけど、全部止まってるから問題は無い。一度に止まるから歯車のずれも無いし、異常を知る観測者も居ないからね。あ、余所の神は別ね」

「先輩が仕事をサボると、その間はずっと時間が止まっていると。でも誰もそのことを知らないし知れない。……あ、もしかして、邪神を串刺しにしたときもそれで」

「そう。本当は、神の能力を使って倒したんじゃなくて、能力の行使を止めることで倒したんだ」


 なにそれ強くね?

 いや、神なんだし強くて当たり前なのか。そりゃ邪神勝てないわ。


「『邪神』はまだこの世界の時に縛られていたからね。これが本当に神になっていたら僕じゃ勝てなかったと思うよ」

「そう言えば、『邪神』は神のなり損ないって聞きましたけど」

「それで合ってるよ。半端にレベルばっかり上がったんだろうねぇ。そう考えると彼は運が無かったんだ」

「レベル? ……そもそも神になる方法とか条件って、あるんですか?」


 なり損ないってことは、ある程度その近くまで足を踏み入れたってことだ。

 何をして、『邪神』へと至ったのか。


「この世界の人は全員、神になれる可能性はあるんだよ。単純にレベルを上げて魂を純化させていけばいい」

「え、レベルってその為のものだったの?」


 てっきり、全体的な強さとか魔力量の基準だと思ってた。


「まあ、レベルが上がるにつれて魔力量も増えるから、世間的な考えも間違いではないよ。それに、その人に必要なレベルもまばらだしね」


 あ、なんだ、固定じゃないんだ。

 レベル100で神様に進化できるとかだと分かりやすかったのに。


「でもレベルを上げるだけじゃ可能性は高くないね。具体的に神になるには、二つの方法がある。一つはレベルを上げたうえで自分が管理、支配する概念を用意する方法。そうすることで、それを司る神になれる。この間の邪神はこれの後半ができてなかったね。ただ周囲の魔力を支配できる程度だったし」

「それでも十分脅威でしたけどね。先輩以外には」

「人の中にある魔力を支配したりはできないようだったから、頑張れば君達でも勝てたんじゃない?」

「確かに俺も、邪魔が無ければ行けたと思った場面がありましたけど。あと、邪神の言霊はダイキにも効いてましたよ。『動くな』って」

「それはたぶん、彼の周りの魔力を操って拘束してたんじゃないかな。まあ『邪神』も結局は人から抜け出せていないから、超高レベルな特殊ユニークスキル持ちとそう大差ないんだよね」


 逆に言うと、超高レベルな特殊ユニークスキル持ちでは神の足元にも及ばないと言うことになる。


「もう一つの方法は、神の代替わりの後継者に選ばれること。器としての十分なレベルは必要だけど、担当する概念は既に用意されているし、先代の神から力を受け取るだけだから一つ目の方法より確実で簡単な方法だね」

「へえ。選ぶ基準とかあるんですか?」

「好みじゃない? 僕ならそうするよ」


 急にざっくり適当。

 要は、神に好かれるかどうか。なるほど、運だ。あの邪神には運が足りていなかったのか。


「でも、僕は暫く後継者を用意するつもりはないけどね。まだ死ぬ予定ないし」

「ああ、そっか。後を継がせるってことはそういうことですよね」

「神が死ぬのは精神的な衰えからだからね。そういう神はゆっくり後継者を探して、その人に後を任せて消えるんだ」

「じゃあ、この方法で神になるのも難しいんじゃないですか? そもそも死にたいと思ってる神が居ないと成り立たないわけですよね」

「確かにそんなにしょっちゅう代替わりするわけでもないけど、そこはあんまり問題ではないかな。神は皆、自分には不必要なくらい長く存在してるからね。後を任せたい好みな人が現れたら、あっさり力を渡して消えるものだよ。僕の先代もそうだったんだ」

「なら、ディーロ先輩は、どれくらい存在してるんですか」

「神になってから、かれこれ10年くらいかな」

「みじかっ!?」


 散々神は長く存在するとか説明しときながら、自分はそこまででもなかった。

 長生きの貫禄が、とか思ったけど気のせいだったわ。


「そうだよ。だからまだ代替わりする気は全く無し」

「そりゃまだ人の一生も越えてないですものね」

「うん、それにね、彼女から唯一貰ったものだから。押し売りみたいだったけれど」


 彼女……先代の話かな。

 まあ、神になった経緯なんだ。きっといろいろあったんだろう。


「僕が神になったときは結構な騒ぎ起こしちゃってねぇ。今じゃ教科書にまで載ってるよ」


 教科書なら読んだことあるやつかも。

 …………あっ。


「……10年前、神にちょっかい出した国が滅んだって話がありましたね」

「それそれ。あれ、返り討ちにあったみたいな話だけど、本当はちょっとだけ違うんだよね。実際は、神殺しを成功させたんだ。そしてその後、代替わりした神に滅ぼされた」

「……それ、先輩が滅ぼしたってことじゃないですか」

「神を殺した代償としてはそんなとこじゃないかな。まあ彼女も、後継者を見つけたからタイミングを計ってたところがあったんだと思うけれどね」


 タイミングって、死ぬタイミング?

 わざと殺されて、その仕返しに滅ぼされたのか。哀れ。


「神についてはこんなところかな? 僕もあんまり他の神とか知らないから、自分の事ばっかりになったけれど」

「いや、結構いろいろ知ることができました。ありがとうございます」

「それじゃあ今日はもう帰るとするよ。また何か知りたいことがあったら言ってね。可能な限り答えるよ」

「はい。あ、近いうちに魔法陣について教えてください。今日は自分で試したいので、また今度にでも」

「魔法陣の研究は趣味でやってるからね。その話だったら喜んでさせてもらうよ。じゃあ、君の悩みがいち早く解決するのを祈ってるよ」

「今日はありがとうございました」


 神に関する話ができたのは有難かった。

 結構気になる話も出てきたし。


 ――エルフの森から帰ってきて4日が経った。

 あれ以来、一度もユユの声を聞いていない。

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