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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第三章 歯車を回す少年
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57 目には目を

 倒したダークエルフを転送し終わったら移動を再開する。


 森を駆けること数分、進んだ先には再び結界が張られていた。ここら一帯を囲んでいたのと同じもので、あれよりも一回り小さい。


「さっきの奴等はこれを張る時間稼ぎだったのかもな」

「また俺が先に転移して魔法陣を引いてくるよ」

「いや、ちょっと待て。結界のすぐ向こうに敵が潜んでいる」


 言われて結界の向こうを探すが、俺では見つけられない。

 【瞳の魔眼】でダイキの視界を勝手に共有させてもらって、ようやく俺も潜んだ敵を認識できた。


「これだと、俺一人で行ったら集中砲火を喰らうな」


 それでやられるつもりも無いけど、魔法陣を描くことはできないか。


「一緒に俺も連れて行くことはできないのか?」

「それだと使う魔力量が桁違いに増えるんだよ。転移先に範囲を引かないと二人以上の転移はキツイ」


 でもそうだな、ダイキなら一人でも時間稼ぎはできるだろうし、俺が向こうに転移してすぐにダイキを呼ぶ方法なら行けるか。


 作戦を皆に伝えると、ダイキの他にフェルクとリティも参加すると告げてきた。確かに二人は多対一でも戦える力を持ってる。

 またリティのことが心配になったけど、それも今更か。此処は既に敵地、これ以上は俺の我儘で迷惑を掛けることにも繋がる。


「それじゃあ三人とも、この輪の中に入って」


 三人が入れるサイズの範囲を用意して、三人に入ってもらう。


「う、勇者さん。も、もう少しそっち、行ってほしいです」

「いや、無茶言うなよ……」

「でも、これ以上はちょっと……」


 入ってもらおうとしたが、フェルクがダイキと密着するのを嫌がった。

 結局フェルクを説得するより範囲を引き直した方が早いと思ったけど、どうせ後で他の人も転送するんだし魔法陣を描くことにした。


「なんか、すいませんです……」

「いや、別にいいよ。どっちにしろ魔法陣は描いた方がよかったし」


 よし、さっきより広い範囲を指定したから、これならフェルクも大丈夫だろう。


「じゃあ、行ってくる」


 まずは俺が空間転移で結界を越える。

 そして、攻撃が飛んでくる前に範囲を引いてダイキ達を召喚。それとほぼ同時にダークエルフも魔法を放ってきた。


「うおっ……と!」


 転移を終えたダイキがすぐに雷で迎撃する。


「俺はこれから魔法陣を描くから、あとは頼んだよ」

「ああ、任せろ!」


 心強い返事を聞いたら、細剣の剣先でガリガリと地面に魔法陣を描いていく。

 すぐ目の前から戦闘音が響くが、こっちに意識を集中。――できた。


「終わったよ!」

「よし! なら次の攻撃の後に転移させてくれ!」


 次の攻撃、広範囲への電撃をダイキが放ったら魔法陣へ結界の外に居るの仲間を召喚する。彼らには先程ダイキ達が入った魔法陣に入ってもらっていた。

 範囲のサイズ的に一度に6、7人が限界なので、魔法陣に魔力を込め直して数回に分けて全員を結界の中に入れる。


 全員が結界に入ったところで、ダークエルフ達は退却していった。


「この結界、また進んだ先にあるのかな?」

「どうだろうな。恐らく特殊ユニークスキルによるものだろうけど、結界を張るのが術者にどれくらい負担があるのか分からないしな」

「今ので結界の抜け方を知られたし、まだ結界を張れるなら対策されてるかもしれないけど」

「つっても、それしか結界を抜ける方法が無いからなあ」


 まあ、そうなんだけどさ。


 そして、不安は的中して進んだ先に三枚目の結界が見えた。

 さらには結界のすぐ向こうに待ち伏せも居るな。


「――隠れろ! あいつ、例の魔眼使いだ!」

「な!?」


 ダイキの掛け声で一斉に木の陰へ隠れる。


「此処で出てきたか」

「うわぁ、結界越しに魔眼とか、最悪の組み合わせだな」

「どうするです?」


 それぞれ魔眼使いの死角に逃れたはいいけど、これでは近づけない。


「俺の瞬間移動なら魔眼を喰らわずに結界の前まで行けるが、結局その向こうへ行けないからなあ。……結界の前まで俺が行って、そこからこの懐中時計を経由してアカリが転移するのはどうだ?」


 ダイキの持つ魔法陣付き懐中時計を使って一度結界の前に転移した後、再度結界の向こうに転移するのか。

 それなら魔眼を喰らわずに結界の中まで行けそうだけど……。


「結界に入ったところを狙われそうだな」


 結界を越えたすぐそこには魔眼使いが待っている。まず間違いなく喰らう。


「これだとアカリが危険か。でも、今のところアカリの転移しか結界を越えれないからなあ」

「最後に転移して向こうに行くことを考えると、転移する前にあれを無力化しちゃわないといけないですね」

「結界越しにあいつを倒すのか。俺は無理だぞ。物理攻撃しかできないからな」

「わたくしめもちょっと……。あの結界、わたくしめの影も通さないので」

「わたしも、無理」

「となると俺か……」


 自分のスキルの中から物理攻撃を除くと、【状態魔法】【範囲魔法】【空間魔法】【瞳の魔眼】と初期スキルが残る。

 【状態魔法】と【範囲魔法】は意味なくて、【空間魔法】は【範囲魔法】の補助無しだと短距離空間転移が精一杯。

 消去法で残ったのは、俺の奥の手【瞳の魔眼】だ。まあ、魔眼には魔眼をってのは考えていたことでもある。


 他に方法も無いみたいだし……いや、【状態魔法】で魔眼を喰らうたびに治癒して進むゾンビアタックならできなくもないけど、それはもう奥の手より奥の封じ手だろう。やる前に止められるだろうし。


 魔眼なぁ……せっかく人に見せないようにして奥の手にしてたのに。でもその割に王さまとかに普通に教えてたけど。

 考え方を変えるか。奥の手はここぞという時に使う。今がその時なんだ。そういうことにしよう。

 一応仲間に見られにくい方法も思い付いたしね。


「よし、決めた。誰か少しの間魔眼使いの目くらましをしてくれない?」

「お、アカリ、何とかなるのか?」

「まあね」


 目くらましはダイキが結界に絶えず電撃を当てることで行った。これでバチバチしていて向こうからはこっちが見えない筈だ。


 それを確認したら木の陰から出る。

 左目を手で覆い、指の隙間から周囲を視る。視界媒体設置。


 設置。設置。設置。設置。設置。設置。設置。設置。設置…………。


 設置しただけでまだ起動はしていない。その為まだ何も変化は無い。

 設置が終わったら木の陰に戻る。


「ダイキー。もういいよー」


 いまだバチバチしているダイキを止めさせる。


「何をしたんだ?」

「見てれば分かるよ」

「いや、魔眼使いが居るから見れないんだが」

「まあ、俺としては見ない方がいいと思うね」

「どっちなんだよ」


 隣の木の陰に居るダイキと話してると、同じ木の陰に隠れたリティが首を傾げていた。


「うん、リティは見ない方がいいよ」

「何のこと?」

「まあまあ」


 こっちを見ているリティに後ろを向かせ、後ろからリティの目を手で隠した。同時に、俺の左目の色が変わる。


――【瞳の魔眼】視界設置、媒体一斉起動。


 俺の視界となる媒体、眼球型のそれが一斉に目を開く。

 俺たちの隠れている場所より先、魔眼使いの視界に入っているであろう場所のあちこちに設置した眼球が起動した。


 いきなり大量の眼球が視界に現れるんだ。それを見てしまうのも仕方がないだろう。


――【瞳の魔眼】視界強奪。


 媒体の眼球越しに魔眼使いと目が合い、視界強奪を発動する。

 これで魔眼使いはもう何も見えない。これぞ魔眼封じ。

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