52 混成パーティ
休憩が終わり歩みを再開する。
少しするとサンドウルフが出てきた。6匹で地味に数も多い。
「一人一匹だ」
ああ、俺とリティを除いてね。
サンドウルフは土を纏う為、防御力が高くて全て倒すのに時間が掛かっていた。あと、二人が軽い怪我をした。
何というか、そろそろ何もしないのが申し訳なくなってきたな。
「今度から俺も戦おうか?」
「はあ?」
声を掛けると、こいつ何言ってんだこいつ? と言うような顔で見られた。まあ、分かってたけどね。だから敬語使ってないし。
「あれくらいなら俺たちでも対処できるよ」
「お前と、あの嬢ちゃんがか?」
「そう」
まるで鍛えた様子が無い子供と、実年齢(13)より小さく見えるぱっと見非力な少女。この世界だと魔法があるから見た目だけじゃ強さを計れないんだけど、冒険者ならそれなりに筋肉は付くんだよね。でもそんなに疑わなくてもいいじゃないか。
リティもそんな疑いの目で見られた訳だが、リティは話す必要が無いときは完全に無言になる。二人きりだとそれなりに喋るんだけど、集団になると何も言わなくても話が進むからか全然口を開かないことも多い。
しょうがない、ここは俺がこのおっさんを納得させてみせるか。
「まあ、見てみるのが早いよ。次は俺たちでやってみるから。リティもいいよね?」
「うん」
「それもそうだな。駄目だと思ったら手を出させてもらうぜ」
あ、危なかったら助けてくれるんだ。意外と優しい対応。
次もサンドウルフが出てきたので、宣言通り俺とリティが前に出る。数は3匹。
さて、と。何を使おうかな?
普通に属性魔法だけだと、まだ俺のスキルレベルが低いこともあって手こずるだろう。
取り敢えず魔眼は温存。【空間魔法】の攻撃は空間切断があるけど、騒がれるかもしれないからあまり使いたくはない。【空間魔法】は実際に習得できた人が居ないことで有名だし。
となると、見せてもいいのは【範囲魔法】と【結晶術】に属性魔法か。この程度なら範囲引いて属性魔法で行けるな。
「ふぁいあ」
硬質な土を鎧のように纏ったウルフが迫ってくる。俺はそれに細剣の剣先を向け、剣先で指定した範囲から【火魔法】を放つ。これだとどんな魔法でも圧縮して放つから、使うのは呪文も何もない、ただ魔力を変化させただけの魔法だ。掛け声も適当。
魔法はサンドウルフの胴体に命中。超高温に一部を焼かれたサンドウルフは倒れ、即死はしなかったが虫の息だ。
接近した残りの2匹のうち、1匹はリティが槌で吹っ飛ばし、直後にもう1匹の攻撃を柄で受け止めた。そこへ俺が圧縮【水魔法】(手加減)でサポートしたところに、槌で頭を叩いて仕留めた。
最後に虫の息だったサンドウルフにナイフで止めを刺して戦闘終了。
「終わったよ」
集団に戻り声を掛ける。
「……人は見掛けに寄らねえなぁ」
皆は茫然としていたが、前方配置のBランクパーティリーダーがガックシ肩を落としてそう言った。
「実力を見誤って悪かった。次からも戦闘に混じってもらうぜ」
お、正直謝罪までされるのは意外だったな。このBリーダーのおっさん、口が悪いだけで結構ちゃんとした人だったと評価を改める。
その後は、俺とリティも加わって配置を変えながら戦闘をこなすようになった。熊なんかも二人の高火力持ちが加わったことで安定して倒せた。
魔物の相手をしながら森の奥へと進んで行くと、だんだんと周囲の気配が強まってきた。
俺は前回の狩りを思い出して木の上を探る。――発見。
「クライミングウルフが集まってきてるよ」
「なに?」
他の人は気付いていないようだったから報告。狼たちはまだ前回ほど多くは集まってないし、叩くなら早い方がいいだろう。
というか、こいつらはいつの間にか群れで囲ってくるからもっと警戒しとくべき魔物じゃないのか? 俺はうっかりしてたけど。リティはどうなんだろ?
警戒すると言えば、この森にはカメレオンも居たな。前回はダイキが見付けていたけど、ちゃんと気を付けないと。
「うおっ、マジだ。お前ら構えろ!」
全員で依頼者を囲むようにして備える。クライミングウルフも気付かれたことで隠れるのをやめて、木から飛び降りる勢いで襲い掛かってきた。
俺は自分のところに向かってきた狼を【範囲魔法】で威力を上げた【水魔法】ではたき落としていく。
襲い来る狼を迎撃していると、だんだんと狼の数が増えてきた。俺やリティはともかく他の冒険者は一撃では仕留めるのは難しいようで、一匹を倒すのに時間を掛けるほどに敵が増している状況だ。
「なんでこんなに湧きやがるんだ!」
「ベルナンさん! 俺もう魔力が尽きそうだ!」
「ちぃっ、一旦下がれ! その分は俺が埋める!」
Bランクリーダーが隣に居た仲間を下がらせ、そのカバーをする。このおっさんも狼を一撃で仕留めているようで、リーダーだけあって他よりも実力が高い。
Bリーダーはまだ余力があったみたいだし二人分でも大丈夫そうだけど、他の冒険者は辛くなってきたみたいで軽傷が目立ってきた。……あ、やばい。
俺の二つ隣の冒険者が狼の一匹を正面から剣で受け、大きな隙を作ってしまう。他の狼がそれを見逃す筈もなく、3匹が一斉に牙を剥く。
あれはキツイか。【結晶術】を発動。腕に纏わりつかせるように羽根のナイフを展開し、腕の振りに合わせて一気に飛ばす。取り敢えず、30本。
羽根の刃はピンチだった冒険者の正面にいた狼たちに突き刺さる。あと、外れた羽根も別の狼に命中した。
「た、助かったぜ!」
何とか危機は脱したみたいだけど、ナイフサイズじゃ殆ど仕留められなかったな。急所に当てるか数を当てるかしないと。
その後も羽根の刃を展開して射出を繰り返して他の冒険者のサポートしていく。仕留めることができなくても、体に何本もナイフを刺されたら戦闘力を失う。後続の狼にも当たってダメージを負わせることもできる。
周りを補助した甲斐もあってクライミングウルフはだんだんと数を減らし、残り少なくなったところで狼たちは一斉に逃げ出した。
「はあっ、はあっ、助かったぁ」
「もう駄目かと思ったぜ……」
みんなしてその場に崩れ落ちるようにして座った。俺も息を整えていると、反対側で迎撃してたリティが近づいてくる。ちなみにリティはさっきの戦闘中、間合いに入った狼を一振りで仕留めるを繰り返していた。
狼って一番前に頭があるよな。四足獣はみんなそうだけど。つまり、狼たちはリティに近づいたそばから速攻で頭を潰されるわけだ。一定以上近づかせないから返り血も付いていない。パネェ。
「アカリ、怪我してない?」
「俺は平気だよ」
サポートに回る余裕もあったし。
「治癒、してない?」
「ん? いや、一回も怪我してないよ」
ああ、今怪我してないかじゃなく、怪我をすること自体を心配してるのか。俺としては治せるなら気にすることもないと思うけど……それで以前心配かけたんだよなあ。
「あ、そうだ。今はこれもあるし、こうすれば怪我もしにくくなる筈!」
言って、【結晶術】の硬質な羽根で腕を覆う。腕が翼になったみたいだ。
「どう? 羽根の鎧」
腕をリティに差し出す。リティはそれをペタペタと触り、首を傾げた。
「……飛ぶ?」
「いや、飛べない」
見た目に反して。
あれ、でも羽根は繋げれば体から離れていても操作できるし、翼状にして羽ばたかせればいけるか? ……後で試してみよう。




