51 合同依頼
水属性の授業の単位を取得した。
その為、今後は時間に余裕が生まれるからまた冒険者活動を再開しようと思う。リティと共に。
早速放課後にリティと二人で冒険者ギルドに向かう。
んー、魔棲の森と迷路トンネルはそれなりに行ってるからなあ。折角だし新しい場所に行きたい。
ちなみにこの王都から東に行くと森、西に向かうとトンネルだ。トンネルっていうか大きな山があるんだけど。
北と南は普通に舗装された道が続いてるんだよね。流石に王都なのに他の町から孤立しているなんてことはない。
「森はこの間結構奥まで行ったし、洞窟は蟻ばっかだし……」
此処で出来る魔物討伐系は基本このどっちかだしなあ。
「別のにする?」
「そうだな、討伐系以外をやってみるのもいいかもね」
視点を変えて再び掲示板を見る。
討伐系を除くと、薬草や鉱石などの素材収集、特定のスキルが必要な作業、道中の護衛、ただの雑用など様々。
素材収集は討伐と行き先が同じだから今回はパスで……護衛はなんか冒険者の鉄板的なところあるよね。一度やってみたい。
「護衛任務はどうかな。隣町までなら一日で行けるでしょ」
早速リティに提案する。リティはそれに対してコクリと頷いた。
「じゃあ、どれにする」
言われて掲示板にある護衛依頼の詳細を見る。
一番多いのは迷路トンネルを通って西の国ウトレレへ向かう護衛。残りは北と南へ向かうものがチラホラ。
「ん? なんだこれ?」
一枚だけ行き先が違う護衛依頼を見付ける。なんで魔棲の森を突っ切るんだ?
あの森の向こうにも町はあるけど、普通に森を迂回して行くことができる。わざわざ護衛を付けて突っ切る必要な無い。
というか、あの森は中心、奥へ進むほど強い魔物が棲んでいる。突っ切って森を抜けるのはかなり厳しい。
でもこれ、相当報酬がいいな。依頼している護衛の人数も多い。
興味が出たので詳細を読む。
ああ、これ東にある町に行くのが目的ではなく、森を横断すること自体が目的なのか。
どうやら専門家の人が森の調査のために横断する際の護衛らしい。なんの専門家なのかは知らん。
「結局森だけど、これ気になったから受けてみたいな」
物事は好奇心優先で。それで困ることもないし。
「うん。でも、これ明後日」
「あ、ホントだ」
そもそも護衛依頼で即日って無いわ。
結局、この依頼は受けることにして今日は普通に迷路トンネルに向かった。リティ的には蟻の素材がおいしいらしい。
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護衛依頼当日。依頼者との待ち合わせは9時の鐘が鳴る時間だった。
本日学園は休日。というか休日じゃなかったらこの依頼は受けなかった。
うとうとしながらもリティに手を引かれてギルドまで向かう。
……午前から仕事はきちいっすよ。失敗だったかなあ。
頭が働かないので俺の行動は全てリティに委ねる。俺はただ、引かれるままに歩くだけだ。
気付いたときには既に冒険者ギルドの中に居た。サンキューリティ。
周りには俺達と同じくこの依頼を受けた冒険者が六人と依頼者であろう研究者然とした男が一人。九人で森へ向かうようだ。
依頼者が説明を始めたので流石にちゃんと聞く。
森は王都から近いところにあるから定期的に調査をしているらしい。とはいえ普段は冒険者に調査も頼んでいて、今回のは年数回の本格的な調査とのこと。
説明の次に、簡単に自己紹介をする。
……他の人は全員CかBランクらしい。俺たちがDだと言ったら訝し気な顔で見られた。いいじゃないか、この依頼Dでも受けれたんだから。
取り敢えず、全員が戦闘スタイルなんかを伝えて自己紹介を終える。
そして護衛中のポディションを決めて、いざ出発。
俺とリティは依頼者の傍で護衛をすることになった。これは信頼故に一番大切な役割を任された……わけではないだろう。「魔物とは俺らがやり合うから、お前らはそこの坊ちゃんの傍に引っ付いてな!」的なことを言われたし。
あいつぅ、俺がメイン武器レイピアですって言ったら笑いやがったやつだよ。レイピアなめんなよ! 蟻鋼製だぞ!
ふう、まあ、考えようによっては他の冒険者の戦闘を見るいい機会だと思う。相対的に自分の実力がどのくらいなのか知りたいし。
お、早速ゴブリンだ。数は4匹。
前方の三人が攻撃を始める。各々ショット系の属性魔法を放ち、一匹ずつ仕留める。残った一匹は一人が剣で攻撃を防いでいる隙にもう一人が魔法で仕留めた。
まあ、ゴブリンは雑魚だしな。
その後もゴブリンかウルフと遭遇しつつも奥へ進む。今のところ魔物は全て前衛の三人が片付けている。
前の三人と後ろの三人はそれぞれでパーティを組んでいるらしい。連携のこともあるからこういう布陣になっている。
にしても、暇だなあ。でもここでリティとお喋りしてたらますます舐められそうだ。ふわぁっ。
ちょっと眠気が出てきてあくびをする。
「アカリさーん? 護衛、よろしくお願いしますよ?」
護衛対象から注意を受けてしまった。これは少し反省。
だいぶ森の奥まで進み、今度は熊と遭遇した。エアークロウベアーだったかな。
「おい、助力は要るか?」
後方のパーティのリーダーが前方のパーティに声を掛ける。
「いや、一頭だけなら俺らで十分だ」
うん、まあ熊だったら俺一人でも倒せるし、三人パーティなら余裕だろう。
三人が熊に近づいたところで【風魔法】の爪撃が飛ばされる。三人はそれぞれ回避行動を取る。
爪撃は殆ど目に見えない為、確実に避けるには余裕を持って避ける必要がある。そのせいか、大げさなくらい横に跳んで回避した三人は態勢を崩して立ち止まってしまう。そこに【風魔法】の追撃が掛かって防戦一方になってしまった。
あれ? 三人で十分なんじゃないの?
そう思ったが、その後は隙を作って熊に魔法を放ち、それを起点に攻勢に出ることができた。
そして5分後、三人は熊の討伐に成功した。
「おう、無傷でエアークロウベアーを倒すとはBランクなだけあるな」
後方で俺らと同じく控えていたパーティのリーダーが戻ってきた三人に声を掛ける。これ、今の戦闘は評価高い感じなの?
ちなみに前方の三人はBランクパーティで、後方はCランクだ。
「あいつは爪撃が飛んできて厄介だが、全体的に大振りだから焦らなきゃ問題ねえよ」
「なるほどな、参考になるぜ」
「番になるとこうは行かないんだがよ」
あの熊、一般的には結構強い魔物みたいだな。この間瞬殺してたんだけど。
「今ので疲弊したようだし、一旦休憩がいいかな?」
「ああ、頼む」
「じゃあ解体は俺たちでやっておくぜ。今回は見てただけだしな」
「その前に調査のために死体を調べさせてもらうね」
依頼者の提案でこの場で休憩となった。
……あ、俺も解体手伝わないと。久々にナイフの出番だ。だいぶ前に研いだっきり使ってなかったんだよね。




