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過保護な女神さまによる異世界転生  作者: 枡狐狸
第三章 歯車を回す少年
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49 汎用羽根

 着替えが終わると、ゼネガスト様は非常に機嫌が良さそうだった。


「嬉しそうですね、ゼネガスト様」

「アカリくんのお陰でね。それと、男らしい名前は嫌だからゼネ様とでも呼んでちょうだい」


 その後も暫く、上機嫌なゼネガスト様もといゼネ様の相手をした。

 それで、そろそろいい時間だし、家に帰ると伝える。


「そう、今日は楽しかったわ。アカリくんが今日着た服はプレゼントするわね、用意したけど私には入らないし」

「いいんですか?」


 着せ替えを何度もしたから今日着た服は結構な数がある。これ全部貰うとなると、俺の服が男物より女物の方が多くなってしまうな。


「趣味で買い揃えただけで、誰が着るものでもないからね。似合う人が居るならその人にあげるわ」

「そういうことなら。ありがとうございます」


 遠慮なく貰うことにして、持って帰る服を畳んで仕舞っていく。

 帰る準備が終わったし、ゼネ様の姿を元に戻すか。


「それじゃあゼネ様、姿を元に戻しますよ。一度着替えて来てください」

「……ねえアカリくん、別に姿を戻す必要は無いんじゃないかしら?」

「いや、それだとゼネ様が困るでしょう?」

「私、今の方が自然体なのよね。きっと今までの性別の方が間違ってたんだわ」

「えーっと?」

「つまり、私としてはこのままで問題ないわ」


 でも、ゼネ様がずっと女の姿だと仕事に支障が出ないだろうか。王子様としてやることもあるだろうし。

 どう言って説得しようかと悩んでいると、部屋をノックする音が響く。


 扉を開けて、部屋に入ってきたのは王さまだった。


「百歩譲って、一時的に城の中でだけ女の姿でいるならまだいいが、四六時中その姿は認めんぞ」


 話が聞こえていたらしい。


「くっ、国王とあろう者が盗み聞きだなんて」

「ちょうど様子を見に来たところだったのだ。お前に釘を刺す為にな」

「私は今、完璧に女性となったのよ! 生まれ変わったのだからもう戻る必要は無いわ!」

「お前には王族としての役目があるだろう! それに国民へどう説明するつもりだ!」

「ゼネガスト、彼は死んだわ。私は国王の隠し子」

「勝手に自分を殺すな」


 王さまは部屋に入るなりゼネ様と口論を始めた。

 だけど、お互いの言論は平行線を辿っている。


「もういい。アカリ君、取り敢えずこいつを元に戻してくれ」

「あ、はい」

「ちょっと!?」


 ゼネ様が裏切られたかのように驚きこっちを見る。ごめんね、俺は最初から王さま側だよ。

 じりじりとゼネ様との距離を詰める。ゼネ様はそれに合わせて少しずつ後ろに下がっていくが、やがて部屋の壁際に追い詰めた。はいタッチ。


――【状態魔法】拡張、状態変化。


 男に戻ったことで体格が変わり、着ている服と合わなくなる。ビリッという嫌な音がした。


「あああ! 体が!?」

「……服は後で直しますから」


 服より姿が変わったショックの方が大きそうだけど、一応破けたのは俺のせいだから直すと伝えておく。

 姿が変わったと言っても、元々高度な女装が出来ていただけあって多少身長が伸びたのと、胸が胸板と呼べるものに変化したくらいだ。


「全く、お遊び程度なら許容するが、今度抵抗したらアカリ君に禁止してもらうからな」

「そ、そんな……」


 酷くショックを受けているようだが、王さまの対応は結構寛大だと思う。そもそもで城の中限定でも女装を許している時点で懐が広い。


 さて、話も終わったみたいだし、俺も着替えて元の姿に戻るかな。



=====



「アカリくん、今日はありがとう。また私が居るときはいつでも来てくれていいからな。……というか、来てほしい。門番には言っておくから」


 お城ってそんな簡単に入れるところだっけ? 今更か。


「時間があるときなら」

「そうか! 待っているからな!」


 ゼネ様に見送られながら王城を出る。手にはたくさんの衣類が入った袋を持っている。

 もうすぐ夕方だ。まだ夕飯には少し早い時間。


 徒歩で家に帰宅。王城からの距離は学生寮と比べて近くなっている。

 リティはどうやら工房に居るようだ。俺が家を出るときも工房に居たから、今日はずっと籠っているのだろう。


 夕飯を食べに行くにはまだ早いし、俺も何かやるかな。

 荷物を置いてから、自室とは違う広い部屋に入る。元は貴族の館だっただけあって部屋数も多く、全体的に広い。その中でも、何に使われていたのか分からないけど他より広い部屋だ。


 取り敢えずユユに呼び掛ける。


「夕飯の時間まで【結晶術】を試そうと思います」

《そう言えばまだ使ってなかったね》

「どんなスキルかよく分からなかったから、ダイキ達と狩りに行ったときも使わなかったんだよね」

《あんまり持ってる人を見たことないけど、使い勝手のいい便利なスキルだった筈だよっ》

「へー、それならだいぶ期待できそうだな」


 早速使ってみる。

 【結晶術】の使用を意識して、右手から魔力を放出する。すると、掌から白い羽根が幾つも出てきて辺りへ舞った。

 魔力を体の外へ出す行為はそれ自体にスキルの発動や魔道具が必要になる。今まで魔力結晶の羽根が出るときは他のスキルを使っているときだけだったけど、この【結晶術】は魔力結晶そのものを扱うスキルだ。


「まあ、発動は普通にできるな。新鮮味の無い光景だけど」

《アカリはいっつも結晶の羽根をたくさん出してるもんね》


 そうなんだよな。

 俺は結構魔力結晶が出やすい体質のようだった。普通に軽い魔法を使っても羽根を見ることがある。お陰で魔法実技の授業のとき俺だけ他と違うことをしているみたいな光景になっていた。


「あ、というかこれのせいで俺がユミツキだとばれるかも」

《……確かに》


 完全に失念してた。

 魔力が結晶化する人は少ないし、結晶の形も人それぞれだ。王城襲撃のときにも結構羽根を振り撒いてたし、白い羽根なんて特徴的な結晶を見ればすぐに同一人物だと分かるだろう。


 いや、分からないか? 顔を隠したりしてたわけじゃないし、多少面影はあっても外見も性別も違う。何らかの関係があると思われても同一人物だという結論にはならないかもしれない。


「まあ、考えても仕方ない。最悪血の繋がりとかで誤魔化そう」


 兄弟や親子で同じ結晶になるという話は聞かないが、同じ形が存在しないわけでもないし、そう説明されれば納得するかもしれない。これで行こう。


 気を取り直して検証再開。


 今度は生み出した羽根を操る。

 割と思い通りに動かすことができたが、操作できる距離が非常に短い。体から30センチくらいか。


 暫く試していると、羽根を束ねて繋げると30センチを超えた場所の羽根も操作できた。間接的にでも羽根の一部が俺の近くにあればいいんだろう。


 という訳で、取り敢えず背中に羽根を束ねて作った翼を一対広げてみた。


「どう?」

《天使の翼みたいだよっ。頭の上に輪っかも付けてみようよっ》

「なら、【範囲魔法】のリングを使うか」


 頭の上に範囲の輪っかを引く。【範囲魔法】のラインは青いが、光っているのでだいぶそれっぽくなった。これは空中に描いてるから、俺が動いても付いてこないけど。


《おー、かっこいいよアカリ!》

「格好いいのか?」


 天使フォルムだけど、天使って言うと女の姿のイメージが強いから格好いいのか疑問だ。

 まあいいや。遊んでないで他のことも試そう。


 いろいろ試した結果、この羽根は意識すればサイズや硬度、形状をある程度変えることができた。硬い羽根で体を覆えば即席の鎧になるし、最大サイズは20センチあるか無いかくらいだから、最大サイズの平らで硬質な羽根は武器としても扱える。なるべくナイフに近い形状にしたら結構な切れ味が出た。


「確かにユユの言う通り、使い道の広い便利なスキルだな。これだけでもかなりのレパートリーがある」

《そうでしょー》


 しかも、これでまだレベル1。これは伸ばしていきたいスキルだ。


 おっと、そろそろいい時間だからリティを呼びに行かないと。放っておくとずっと工房にいるからな。ちゃんとご飯は食べないと。

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